私たちの食卓に親しみ深いアサリ。味噌汁やパスタの具材として美味しくいただくだけでなく、実は東洋医学においては立派な薬膳でもあるのをご存じでしょうか?
日本の海岸線で育まれるアサリには、現代科学では説明しきれない奥深い効能があります。鉄分やビタミンB12などの栄養素が豊富なことは広く知られていますが、東洋医学的な視点から見ると、さらに多くの健康効果が期待できるのです。
今回は、アサリの東洋医学的な効能から、家庭での活用法、そして意外と知られていない注意点まで、Q&A形式でわかりやすく解説していきます。日常に取り入れやすいアサリの魅力を再発見してみましょう。
アサリとは何ですか?
アサリ(浅蜊)は、砂浜や干潟に生息する二枚貝の一種で、日本の食文化に欠かせない存在です。和名のアサリは「浅い水に住む貝」という意味から来ていると言われています。
特に味噌汁や酒蒸し、炊き込みご飯など、多様な料理に使われる身だけでなく、殻も「蛤利粉(ごうりふん)」という生薬として利用されてきた歴史があります。
アサリは以下のような特徴を持っています:
- 貝殻は直径2~5cm程度
- 産地によって色や模様が異なる
- 浅い海域の砂地や干潟に生息
- 繊細な旨味と柔らかな食感が特徴
ハマグリと比較すると、アサリは一般的に小ぶりで手頃な価格であり、家庭料理で広く利用されています。
アサリの東洋医学的な性質はどのようなものですか?
東洋医学におけるアサリの性質は以下の通りです:
性味/帰経
- 性味:寒、甘、鹹(かん:塩辛い味)
- 帰経:肝、腎、脾、胃
「性質が寒」とは、体を冷やす作用があることを意味します。甘味と鹹味を持ち、特に肝、腎、脾、胃に作用すると考えられてきました。
このような性質から、特に「熱証」(体に余分な熱がこもっている状態)の症状を緩和するのに適した食材とされています。火照りを感じる方には、特におすすめの食材と言えるでしょう。
アサリにはどのような薬効がありますか?
東洋医学的に見たアサリの主な薬効は次の2つです:
1. 清熱化痰(せいねつけたん)
体内の余分な熱を取り除き、粘り気のある痰を改善する効果があります。特に次のような症状に効果的です:
- 黄色い痰が出る症状
- 粘り気のある痰
- 痰熱による咳(熱が原因で痰を伴う咳)
2. 潤燥止渇(じゅんそうしかつ)
体の乾燥を潤し、のどの渇きを止める効果があります。主に次のような症状に効果的です:
- のどの乾燥
- 煩熱(体の熱によるいらいら感)
- 口渇(口の渇き)
- 肺虚による咳(肺の機能が弱っていることによる咳)
その他、現代医学的な観点からも、アサリには以下のような効果が期待できます:
- 貧血予防(鉄分が豊富)
- 疲労回復(ビタミンB12などの栄養素)
- 胃酸の中和(胸やけや胃の痛みの軽減)
- イライラの解消(精神を安定させる効果)
アサリはどのように活用すればよいですか?
アサリの薬効を活かした東洋医学的な活用法をいくつかご紹介します:
黄痰(おうたん)への応用
黄色い痰が気になる方は、アサリと切り昆布でスープを作り、日常的に摂取するとよいでしょう。昆布との相乗効果で痰を取り除く効果が期待できます。
咳や口渇への応用
咳や口の渇きが気になる方は、アサリと米、杏仁(あんにん)を一緒に炊いたご飯がおすすめです。肺を潤し、咳を鎮める効果が期待できます。
日常の料理への取り入れ方
- アサリの酒蒸し:シンプルにアサリを酒で蒸すだけで、旨味を堪能できます。
- アサリの炊き込みご飯:アサリの出汁と旨味がご飯に染み込み、栄養満点の一品になります。
- アサリの味噌汁:日本の伝統的な食べ方で、手軽に薬効を取り入れられます。
殻の活用
中国では殻を「蛤利粉(ごうりふん)」という生薬として使用し、次のような効果があるとされています:
- 清熱作用
- 痰湿の解消
- 塊の軟化
- 陰を補う作用
- 保湿作用
- 腫れの軽減
アサリを使用する際の注意点はありますか?
アサリを使用する際には、以下の注意点に気をつけましょう:
調理上の注意点
- 必ず加熱して食べる:生のアサリにはビタミンB1を破壊する酵素「アノイリナーゼ」を含んでいます。必ず加熱してから食べましょう。
- 砂抜きは必須:アサリは砂を含んでいることが多いため、調理前の砂抜きが重要です。砂抜きが不十分だと食感や味が損なわれます。
砂抜きの方法
- アサリの殻の表面を水で洗い、汚れを落とす
- 水200mlに対して塩6~7g(小さじ1程度)を加え、3%の塩水を作る
- 塩水にアサリを入れ、容器に蓋をして冷蔵庫で2~3時間置く
- アサリの口が開き、砂が抜けていれば完了
東洋医学的な注意点
- 体質による相性:アサリは「寒」性の食材なので、体が冷えやすい方(虚寒体質の方)は摂りすぎないように注意しましょう。
- 食べ合わせ:体を温める食材(生姜やネギなど)と組み合わせることで、寒性を緩和できます。
保存方法
- 生の状態:新聞紙やキッチンペーパーで包み、湿らせた状態で冷蔵庫の野菜室で保存します。
- 調理後:冷蔵庫で2~3日、冷凍庫で1か月程度保存可能です。
まとめ:アサリの恵みを日常に取り入れよう
アサリ(浅蜊)は、私たちの食卓に馴染み深い食材でありながら、東洋医学的にも優れた効能を持つ薬膳ともなります。清熱化痰や潤燥止渇の働きがあり、特に体に余分な熱がこもった状態や、のどの乾燥、粘り気のある痰を伴う咳などに効果的です。
日常的な料理に取り入れることで、自然と健康維持につながる優れた食材と言えるでしょう。
手頃な価格で入手しやすく、様々な料理に活用できるアサリの恵みを、ぜひ日常生活に取り入れてみましょう。
東洋医学の知恵と現代の栄養学を組み合わせることで、アサリの持つ本来の力をより効果的に活用できるはずです。
参考文献

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