秋の味覚として親しまれる銀杏(ぎんなん)。茶碗蒸しや炊き込みご飯に入っているあの独特の風味と食感の種子です。しかし、銀杏は単なる食材としてだけでなく、漢方医学では古くから重要な生薬として用いられてきました。
「生きた化石」とも呼ばれるイチョウの種子である銀杏は、2億年以上前から地球上に存在していると考えられています。その長い歴史の中で培われた薬効は、現代の私たちの健康維持にも役立つものばかりです。
今回は、漢方医学における銀杏の基本情報から効能、使用上の注意点まで、詳しくご紹介していきましょう。日常生活に取り入れやすい食材だからこそ、正しい知識を身につけて安全に活用したいものですね。
銀杏(ぎんなん)とは何ですか?
銀杏はイチョウの木になる種子で、秋になると熟して黄色く色づきます。独特の匂いを持つ外皮の中に、私たちが食用にする淡緑色の仁(中身)があります。
日本では食用として広く親しまれていますが、漢方医学では「白果(はくか)」とも呼ばれ、重要な生薬として扱われてきました。
漢方での基本情報は以下の通りです:
- 性味/帰経
- 性質:平(へい)
- 味:甘、苦、渋(小毒)
- 帰経:肺
- 常用量
- 3~10g(5~10個程度)
この「性味」というのは、その生薬がどのような性質や味を持ち、体内でどのように作用するかを表す漢方独特の考え方です。銀杏は「平」という性質を持ち、体を温めも冷やしもしない中庸の性質を持っています。
銀杏にはどのような効能がありますか?
銀杏には主に以下のような効能があります。
1. 咳や喘息を鎮める働き(斂肺化痰定喘)
銀杏は肺の機能を助け、特に慢性的な呼吸器系の問題に効果を発揮します。
- 慢性の咳を鎮める
- 喘息の症状を和らげる
- 痰を減らす
特に肺の陰を補う働きがあるため、長期間続く咳や喘息の症状改善に役立ちます。
2. 体液の漏れを防ぐ働き(収渋止帯縮尿)
銀杏には体からの余分な分泌物や排泄を抑える効果もあります。
- おりもの(帯下)の過剰分泌を抑える
- 小便の白濁を改善する
- 遺精(夢精)を防ぐ
- 頻尿を改善する
- 尿失禁を抑える
特にじっくり炒った銀杏を噛んで食べると、頻尿の改善に効果があるとされています。
3. その他の効果
近年の研究では、銀杏やイチョウの葉に含まれる成分が以下のような効果を持つことも報告されています。
- 免疫機能を調節する働き
- 抗炎症作用
- 抗結核作用(試験管内での実験で結核菌の増殖を抑制)
また、イチョウの葉には血清コレステロール値を低下させる作用や、冠状動脈を拡張させる作用もあることがわかっています。
銀杏を使用する際の注意点は何ですか?
銀杏は薬効の高い食材ですが、同時に注意すべき点もあります。
1. 毒性について
- 軽度の毒性があり、過量に摂取してはいけません
- 長期間の連続摂取は避けましょう
- 特に小児は大量に摂取すると中毒を起こしやすいため、与える量に注意が必要です
- 中毒症状としてひきつけ、発熱、不安、嘔吐などが現れることがあります
銀杏に含まれる「メチルピリドキシン」という物質が中毒症状の原因とされています。もし中毒症状が出た場合は、胃洗浄して鎮静剤を投与するなどの治療が必要になります。
2. 使用に適さない状態
- 外感初期の咳(風邪の初期段階での咳)には使用しない
- 粘稠で出しにくい痰がある場合には使用しない
銀杏には収斂して気の流れを滞らせるという性質があるため、上記のような状態では症状を悪化させる可能性があります。
銀杏の栄養価値と現代での評価は?
銀杏は漢方的な効能だけでなく、現代栄養学的にも価値の高い食材です。
- ビタミン類を豊富に含む
- カリウムが含まれている
- たんぱく質、脂質、糖質をバランスよく含む
これらの栄養素により、高血圧の予防や美肌効果なども期待されています。
また、イチョウ葉から抽出されたエキスは、現代医学でも認知症の補助治療や末梢循環障害の改善に用いられることがあります。特にヨーロッパでは医薬品として広く使用されています。
銀杏の簡単な食べ方・活用法は?
銀杏は食材としても手軽に楽しむことができます。
- 電子レンジ調理法:殻付きのまま封筒に入れ、電子レンジで加熱する方法が簡単です
- 料理への活用:
- 茶碗蒸しの具材として
- 炊き込みご飯に加える
- 煮物の彩りとして
- 銀杏ご飯(銀杏と米を一緒に炊く)
まとめ – 銀杏を安全に活用するには?
秋の味覚として親しまれる銀杏は、2億年以上の歴史を持つイチョウの種子で、漢方医学では重要な生薬として用いられてきました。
咳や喘息を鎮める効果、体液の過剰分泌を抑える働きなど、多くの薬効を持ちながらも、適切な量と使い方を守ることが重要です。特に小さなお子さんへの与え方には十分な注意が必要ですね。
銀杏の性質を理解し、その効能を活かした料理や漢方的な活用法を取り入れることで、季節の恵みを健康維持に役立てることができます。身近な食材の中に、先人たちの知恵が詰まっていることを実感できる、そんな存在が銀杏なのかもしれません。
日常生活の中に漢方の知恵を取り入れながら、銀杏の持つ恵みを安全に楽しんでいきましょう。
参考文献

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