
こんにちは
どうなさいましたか?

手足の冷えにお悩みの方から
質問をいただきましたよ
現代社会では、手足の冷えやのぼせ、胃腸の不調など、検査では異常が見つからないけれど日常生活に支障をきたす不調を抱える方が増えています。特に若い世代でも、このような症状に悩まされることが少なくありません。
今回は、29歳の男性の方から寄せられた体験談をもとに、東洋医学的な視点からこれらの症状の原因と自然療法によるアプローチについて解説します。
なぜ医療機関での検査で異常がないのに不調が続くのでしょうか?それは現代医学と東洋医学では、体の見方が根本的に異なるからです。東洋医学では、体全体のバランスや気・血・水の流れに注目し、その乱れが様々な症状を引き起こすと考えます。
外見的な特徴とお悩みの症状
まずは、今回ご相談いただいた方の特徴と症状をご紹介します。
- 年齢:29歳(男性)
- 身長:175cm
- 体重:52kg
- BMI:16.98
主な症状:
- 手先や足先の冷え
- 胃腸の不調
- 冷えのぼせ
- 薄毛と髪の乾燥
- たまに動悸がある
- 硬いコロコロ便になることがある
- 寝起きに動悸や腹痛が起こることがある
自己観察による特徴:
- 顔色が白っぽい
- 舌の色も白っぽく、薄い形状
- 舌に溝や割れ目があり、表面が水っぽい
- 舌苔は白くて少ないが、べたっとしている
- 皮膚や髪の毛が乾燥している
- 髪が細く、薄い
これらの症状に対して、胃カメラや大腸検査、心臓の検査などを受けたものの異常は見つからず、鍼灸院では自律神経の乱れを指摘されているとのことです。
現在は週に4~5日の軽い運動を行っており、運動後は頭がスッキリするそうです。
体の熱バランスから見る冷えとのぼせの謎
手足の冷えや顔色が白いことから、一見すると体の熱が不足しているように思えます。しかし、冷えのぼせになりやすい、イライラしやすい、熱っぽく感じる、喉が渇くなどの症状があることから、単純に熱不足と判断するのは難しいようです。
東洋医学では、顔色や舌の色が白っぽくなる原因として、熱の不足だけでなく、血の不足も関係していると考えます。
この方の場合、BMIの低さや皮膚・髪の乾燥、舌の形が薄いこと、不眠傾向や不安感の強さなどは、血の不足による症状と考えられます。
血が不足すると、皮膚や髪の毛を作る材料が足りなくなり、乾燥や薄毛が進みます。さらに、脳の活動を穏やかにする血の働きが不足すると、不眠や不安感、物忘れなどの症状も出てきます。
なぜ血の不足があると手足が冷えるのか?
体が温かくなるのは、血管内を温かい血液が流れることだけが理由ではありません。実は、血液によって細胞に運ばれた燃料が、細胞の活動によって熱を生み出しているのです。
血が不足していると、手足の末端まで十分な燃料が届けられず、細胞の活動が低下して冷えを感じるようになります。このメカニズムが、手足の冷えの原因と考えられます。
胃腸の不調と気の滞りの関係
しかし、血の不足だけでは説明できない症状もあります。冷えのぼせ、喉の渇き、熱っぽさなどです。
ここで注目したいのが気の巡りです。イライラしやすい、食後に腹部膨満感がある、運動後に頭がスッキリするといった症状から、気の巡りが滞っている可能性が高いと考えられます。
この方の胃腸の不調について考えてみましょう。検査で異常がなく、食欲もあり、コロコロ便ということは、食べ物の吸収自体には問題がないようです。むしろ、気の滞りによって腸管の動きが乱れ、便秘やガスの滞留、食後の腹部膨満感などの症状が出ていると考えられます。
東洋医学では、気には下向きの流れがあり、これが腸管の動きを促進します。気が滞ると、この流れが乱れて便秘傾向になります。また、停滞した便から水分が吸収されすぎると、コロコロ便になってしまいます。
水分代謝の乱れと症状の関連性
舌の状態(べたっとした苔、水っぽい表面)や、汗のかき方などから、水分代謝の乱れも見られます。動きの悪い水分が体内に充満することで、胃腸の働きにさらに負担をかけている可能性があります。
体温が高くないのに熱っぽく感じるのは、体を冷却する潤いの不足が原因かもしれません。血の不足による潤いの欠乏と、気の滞りによる熱の偏りが重なると、このような症状が現れやすくなります。
この方の体質と症状のメカニズム
これらの観察から、以下のような体質と症状のメカニズムが考えられます。
- 血の不足があり、それが原因で皮膚・髪の乾燥、不眠、不安感などが生じている
- 気の滞りによって、体の中心部に熱が集まり、のぼせや喉の渇きが起こる
- 気の滞りが腸管の動きを妨げ、胃腸の不調を引き起こしている
- 摂取した水分がうまく代謝されず停滞し、頭重感や汗の異常などの症状を生じる
- 血の不足と気の滞りの悪循環により、倦怠感や息切れの原因となっている
- 頭部に集まった余分な熱や水分が脳の活動を乱し、イライラや目の充血、不眠を引き起こしている
- 睡眠不足によってさらに血の不足が進み、腎気への負担も増加している
ではこの方に、おススメの自然療法を教えて下さい
現在行われている週4~5日の軽い運動は、とても良い取り組みです。運動後に頭がスッキリするのは、気の滞りが改善されるためです。運動によって体の中心部に集まっていた気や血が手足の末端へと広がり、頭部の気・熱・水分が正常な巡りに戻るからです。
食事と水分の摂り方
食欲があり吸収も問題ないようですが、食事内容や水分摂取の方法に注意が必要かもしれません。
甘いものや脂っこいもの、冷たい飲食物は、気の滞りをさらに悪化させる可能性があります。特に水分摂取については、喉が渇いたときにがぶ飲みせず、少量をこまめに摂ることをお勧めします。
質の良い睡眠のために
血液や潤いを作り、腎気を補充するためには、質の良い睡眠が不可欠です。寝つきが悪く不眠になりやすいとのことですが、以下のアプローチが効果的かもしれません:
- 眠れなくても早めに布団に入る
- 深い呼吸を心がけ、意識を呼吸に集中させる
- 手足の先から体が外の空間に溶けていくようなイメージを持ちながら呼吸する
たとえ脳が眠れなくても、体を横たえてリラックスした状態を保つことで、体の回復は進みます。
体質改善に効果が期待できる漢方薬
この方の症状である血の不足と気の滞りに対して、以下のような漢方薬が一般的に効果が期待できます。ただし、これはあくまで一般的な情報であり、個人の症状に合わせた処方が必要です。
- 四物湯(しもつとう) – 血の不足を改善する基本的な漢方薬。血を補い、めぐりを良くします。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん) – 血の不足と気の滞りの両方に働きかけ、イライラや不眠、のぼせなどの症状を和らげます。
- 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) – 気の滞りを改善し、胃腸の不調や喉のつかえ感を和らげます。
症状が複雑な場合には、単独の漢方薬では効果が限定的なこともあります。ピヨの漢方では、個人の体質や症状に合わせた漢方相談を行っていますので、ぜひご相談ください。
まとめ:冷えとのぼせの本質的な原因と対処法
手足の冷えとのぼせが同時に起こる症状は、一見矛盾しているように思えますが、東洋医学の観点からは、血の不足と気の滞りという二つの要素が複雑に絡み合っていることが原因と考えられます。
この場合、単に体を温めるだけでは根本的な解決にはなりません。血を補い、気の巡りを改善することで、体全体のバランスを整えることが大切です。
日常生活では、適度な運動、バランスの良い食事、質の良い睡眠を心がけましょう。特に、睡眠の質を高めることは、血の不足を改善する上で非常に重要です。
症状が続く場合は、漢方専門家に相談し、体質に合った漢方薬や生活アドバイスを受けることをお勧めします。
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