
こんにちは
どうなさいましたか?

咳にお悩みの方から
質問をいただきましたよ
咳が中々良くならない、粘っこい痰が絡んで苦しい、胸が痛む…そんな症状にお悩みではありませんか?
風邪をひいてから咳が長引いている方、痰が切れにくくて困っている方は多いですね。中医学では、こうした症状は「気の不足」が原因で起こると考えます。
体を守るパワーである「気」が不足すると、外からの邪気(病気の原因)を追い払う力が弱くなります。その結果、邪気が体の奥深くまで入り込んでしまい、激しい咳や粘っこい痰、胸の痛みとなって現れるのです。
今回は、このような症状を解消する漢方薬「柴陥湯(さいかんとう)」をご紹介します。柴陥湯は気を補いながら邪気を追い払い、体を守る力を取り戻してくれる処方です。
柴陥湯はどんな漢方薬ですか?
柴陥湯は9種類の生薬から構成されている漢方薬です。それぞれの生薬が協力し合って、気を補い、熱を冷まし、粘っこい痰を取り除いてくれます。
柴陥湯に含まれる生薬
- 柴胡(さいこ): 停滞した気を発散する
- 黄芩(おうごん): こもった熱を冷ます
- 黄連(おうれん): 熱を冷まし菌を抑える
- 半夏(はんげ): ドロドロしたものを溶かす
- 生姜(しょうきょう): 水分の巡りを良くする
- 栝楼(かろ): 熱を冷まし潤いを与える
- 甘草(かんぞう): 気を補い調和させる
- 大棗(たいそう): 気を補い体を養う
- 人参(にんじん): 気を補い力を与える
これらの生薬が組み合わさることで、気を補いながら邪気を追い払い、余分な熱や粘っこい痰を解消する働きをしてくれます。
どうして気が不足すると咳や痰が出るのですか?
中医学では、呼吸によって取り込まれた酸素が体の中で「気」となり、全身を巡ると考えます。この気には大切な役割が2つあります。
体の内側では内臓に潤いや栄養を与え、外側では外からの邪気と戦うパワーになるのです。
気が十分にあれば、内臓の働きも体の防御も充実して健康を保てます。しかし、気が不足すると体は大切な内臓を守ることを優先するため、外側の防御が手薄になってしまいます。
そこへ邪気が侵入しようとすると、体は内側から気を総動員して応戦します。でも、もともと気が不足しているので、邪気を完全に追い払うことができず、体の奥深くまで侵入を許してしまうのです。
気の不足が引き起こす症状
気が邪気を押し返そうと激しく戦うと、その場所に熱が生じます。また、気が滞ると血液や水分の巡りも悪くなります。
停滞した水分が熱によって煮詰められると、粘っこい切れにくい痰になります。この痰と熱が、肺に入ってきた酸素の動きを邪魔すると咳が出るのです。
さらに、気が滞り水分がドロドロになると、お腹の中の気の流れが阻害されて胸やみぞおちの部分で痛みが生じることもあります。
柴陥湯はどのように働くのですか?
柴陥湯は、それぞれの生薬が協力し合って症状を解消していきます。その働きを見てみましょう。
1. 停滞した気を解放する
柴胡が、停滞してこもっている気を外側へと発散して熱を解放します。
2. 余分な熱を冷まし邪気を追い払う
黄芩と黄連が、気の滞りによって生じたこもっている熱を冷まします。同時に余分な水分を排除し、抗菌作用によって侵入してきた邪気をやっつけてくれます。
3. 粘っこい痰を取り除く
生姜が停滞している水分の動きを軽やかにし、半夏がドロドロした状態のものを溶かして動きやすくします。
栝楼は熱を冷ましながら潤いを補充し、気を下向きに引き降ろしてくれます。これが粘っこいモノを取り除くのにとても役立つのです。
なぜでしょうか? 熱で煮詰まってドロドロした粘り気の強い状態を、そのまま乾燥させるだけでは取り除けません。かえって固まって取れなくなることもあります。
熱を冷ましながら少し潤いを足すと、粘り気が緩んでとろけやすくなります。だから栝楼の働きが大きな助けになるのです。
4. 気を補って追い払う力を与える
邪気の侵入を許してしまうのは、追い払いきるだけのパワーが足りないことが原因です。
人参、甘草、大棗で気を補充することで、追い払いきることのできるパワーを得られます。これにより、深く侵入を許していた状態から、しっかりと追い払えるようになります。
柴陥湯の働きをまとめると
- 柴胡で気を解放する
- 黄芩・黄連で余分な熱を冷まし、水も排除しながら侵入者をやっつける
- 半夏・生姜・栝楼でドロドロしたモノを冷ましながら適度に水を足し、粘り気を緩めて取り除く
- 人参・甘草・大棗で気を補充して、追い払えるだけのパワーを与える
こうして様々な症状を解消していくのです。
どんなタイプの人に向いている?体質別おすすめコメント
柴陥湯は次のような症状や体質の方におすすめです。
気が不足しているために邪気の侵入を許してしまい、以下のような症状が出ている方に向いています。
こんな症状がある方に
- 激しい咳が出る
- 粘っこい切れにくい痰が絡む
- 胸やみぞおちに痛みがある
- 寒気と熱感を繰り返す
- 体を守る力が弱っていると感じる
邪気をやっつけるだけでは気の不足が悪化してしまい、逆に気を補うだけでは闘いが激しくなりすぎてしまいます。柴陥湯なら、邪気を追い払う応援をしながら気を補うので、体の消耗を少なく健康な状態に戻れます。
使う際の注意点
症状が複雑な場合や、他の体質的な問題が絡んでいる場合には、柴陥湯単独では効果が十分でないこともあります。
当店では一人ひとりの体質や症状に合わせた漢方相談を行っております。お気軽にご相談ください。
まとめ
今回は、激しい咳が出て胸が痛み、粘っこい切れにくい痰を解消する漢方薬として、柴陥湯をご紹介しました。
外部からの邪気の侵入を深くまで許してしまい、それを追い払うことができずにいる状態。寒気が出たり、熱が出たり、咳や胸の痛み、切れにくい粘っこい痰などの症状が現れます。
このような時、邪気をやっつけるだけの応援をすると気の不足がさらに悪化します。逆に気を補うだけでは闘いが激しくなりすぎて体が消耗してしまいます。
柴陥湯は邪気を追い払う応援をしながら気の不足も補うため、体の消耗も少なく健康な状態に戻ることができるのです。
長引く咳や粘っこい痰、胸の痛みにお悩みの方は、ぜひ柴陥湯を試してみてはいかがでしょうか。
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