
こんにちは
どうなさいましたか?

舌の溝に対して
質問をいただきましたよ
皆さんは自分の舌をじっくり観察したことがありますか?毎日使っている舌ですが、その構造についてはあまり知られていないかもしれません。
舌は口の中にある筋肉の塊で、主に横紋筋からなる舌筋で構成されています。この筋肉は非常に柔軟性があり、自在に動かすことができるため、食べ物を飲み込む際や言葉を話す際に重要な役割を担っています。
舌の構造とは?
舌の表面には、舌乳頭と呼ばれる小さな突起が無数に存在しています。この舌乳頭には4種類あり、その中でも糸状乳頭が最も多く存在しています。
糸状乳頭は先のとがった小さな円錐形をしており、表面が角化することで乳白色に見えます。この角化して硬くなっている糸状乳頭の根元に、食べ物のカスや脱落した細胞、粘液、老廃物、細菌などが積み重なっていくことで「舌苔」となります。健康な人でも舌はうっすらと白く見えるのが正常な状態なのです。
また、茸状乳頭も糸状乳頭に比べると数は少ないものの、舌の表面に広く分布しています。茸状乳頭はその構造から内部の毛細血管が透けて見えるため、それぞれの人の体調によって舌の色が決まると考えられています。
その他、有郭乳頭や葉状乳頭が舌の後方に存在し、これらと茸状乳頭には味蕾があるため、味覚の受容を担っています。
では、これを踏まえて、どうして舌に溝ができてしまうのか考えていきましょう。
舌に溝ができる3つの原因
東洋医学では、舌にできる溝のことを「裂紋(れつもん)」と呼びます。舌を構成している筋肉の周囲は、舌乳頭を持つ粘膜によって覆われていますが、この粘膜も体の一部ですので、栄養不足になると維持できずに萎縮していきます。
舌に裂紋ができてしまう原因は、主に以下の3つに分けられます。
1. 熱の過剰
身体全体の熱が過剰になり過ぎると、その熱が体に必要な栄養分を含んだ潤いも蒸発させるように消耗してしまうため、舌の粘膜で栄養不足に陥ります。
熱の過剰は以下のような原因で起こります:
- 辛い物や脂っこい物、味の濃厚な物の食べ過ぎによる体内の熱の発生
- 細菌感染などの病気による発熱
- 冷却水(腎陰)の不足による相対的な熱の過剰
人間は、熱源である「腎陽」と、潤いの基である「腎陰」の2つがバランスを取れていると健康な状態を保つことができます。これを自動車に例えると、正常なエンジンの働きと、エンジンを冷ます冷却水がバランス良く機能している状態です。
冷却水(腎陰)が少なくなると、冷やすことができないのでエンジンの熱だけが高まってしまい、オーバーヒートします。それと同じことが人間の身体でも起こるのです。
熱の過剰による裂紋舌の特徴:
- 舌の色が鮮やかな赤から紅色に変化
- 舌苔がほとんど見えなくなる
- 割れている部分で痛みや味覚異常を感じることがある
2. お腹の働きの弱さ
食べたものは消化器官で処理され、体に必要な材料が吸収されて、東洋医学でいう「気」や「血」に作り変えられてから全身へと配られます。ところが、お腹の働きが弱っていると、舌を維持するためのエネルギー源となる気や、材料となる血が作られなくなってしまいます。
これは家の補修に例えると、気は職人さん、血は建材ということになります。家が壊れても、職人さんも建材も不足していると、補修することができず、家はだんだん壊れていきます。同じことが舌でも起き、舌の粘膜は萎縮して裂紋舌となるのです。
お腹の働きが弱い場合の裂紋舌の特徴:
- 血の不足が顕著な場合:舌の色が白っぽく、舌が痩せて小さく、苔も少ない
- 気の不足が顕著な場合:舌が大きくなりがち、舌の色が白くなったり暗い赤色になる
3. 運搬の不具合
お腹で作られた気や血は、腎陽によって温められたところで、お腹の働きを調整する脾気と、配る働きを調整する肝気によって、全身へと届けられています。これは工場で作られた商品が、運送業者によって世界中に届けられているようなものです。
ところが、この運搬システムに不具合が生じると、気や血が滞ったり、必要な場所に届かなくなったりします。また、気はエネルギーですので、それが滞って集中してしまうと、体にとっては役に立たない熱が生じてしまいます。
さらに、腎陽が不足していたり、お腹の働きが弱っていると、栄養素を体の上の方へと持ち上げることができなくなるので、舌において栄養不足になります。お風呂の水が適量でも火力が弱いと上下で温度差ができるように、体が冷えると栄養が上まで届かなくなるのです。
舌の溝を改善する3つの方法
それでは、舌の溝(裂紋)を改善するための方法を、原因別に見ていきましょう。
1. 熱の過剰への対策
熱の過剰による裂紋舌の場合は、まず感染症の可能性もありますので、病院で検査と治療を受けることをおすすめします。
体質的に熱が過剰になりやすい方は、余分な熱を生み出す飲食物を控えることが大切です:
- 辛い物、香辛料を減らす
- カロリーの高い物、濃厚な味付けを避ける
- アルコール類を控える
- 油で揚げた食品(ポテトチップスやドーナツなど)に注意する
また、過労や夜更かしによって体の潤い(腎陰)が消耗している場合は、早めの睡眠を心がけることも重要です。
熱の過剰な体質の方は喉の渇きを感じることが多いですが、水分を摂り過ぎると別の症状の原因となることがあります。代わりに、新鮮な果物を適量取ることで、乾きを癒すように心がけましょう。
2. お腹の働きを強化する方法
お腹(消化器官)の働きが弱ってしまう原因にはさまざまなものがあります:
- 食べ過ぎや飲み過ぎ
- 冷たいものの摂り過ぎ
- 甘いものや脂っこい物、濃厚な味のもの
- 水分の摂り過ぎ
改善のためには:
- 食欲がない時には無理に食べず、食欲がわくまで待つ
- 水分摂取は喉の渇きに応じて飲むようにする
- 食べる場合は腹八分目を心がけ、よく噛んで食べる
- 体力の状態に合わせて適度に運動する
これらを実践することで、気の滞りやストレスが解消され、体の活動レベルが上がっていきます。自然に、体がエネルギー摂取を要求してくる、お腹の働きの高まった状態に変わっていくでしょう。
3. 運搬システムの改善
気や血の運搬に不具合がある場合は:
- ストレスをため込まないようにする
- 体が軽く汗ばむくらいの適度な運動をする
- 広い場所で体をのびのびと動かす
- リラックスするための呼吸法を実践する
特に呼吸法では、吐く息を長めにして、臍の下の丹田(たんでん)や、足の裏に意識をかけながら行うのがおすすめです。足の裏の「湧泉(ゆうせん)」というツボには、頭に上がった熱を引き降ろしてくれる働きがありますので、ここに意識を集中するとリラックス効果が高まります。
この方におすすめの自然療法を教えてください
裂紋舌の改善には、上記の生活習慣の見直しに加えて、漢方薬による内側からのアプローチも効果的です。以下は一般的な裂紋舌の改善に効果が期待できる漢方薬の例です。
裂紋舌の改善に効果が期待できる漢方薬:
- 六味丸(ろくみがん):腎陰虚(じんいんきょ)による熱の過剰に効果的で、潤いを補う働きがあります
- 八味地黄丸(はちみじおうがん):腎陽虚(じんようきょ)による冷えや運搬の不具合に効果的です
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):脾胃の働きが弱く、気虚(ききょ)の状態に効果的です
ただし、これらはあくまで一般的な体質改善のための漢方薬であり、個人の症状や体質によって適切な漢方薬は異なります。症状が複雑な場合には単独では効果がないこともありますので、ピヨの漢方での漢方相談をご利用ください。
まとめ
舌に溝(裂紋)ができる主な原因は、「熱の過剰」「お腹の働きの弱さ」「運搬の不具合」の3つです。それぞれの原因に合わせた対策を取ることで、舌の状態を改善することができます。
- 熱の過剰には、辛いものや脂っこいものを避け、早めの睡眠を心がける
- お腹の働きの弱さには、無理な食事を避け、適度な運動を取り入れる
- 運搬の不具合には、ストレス解消と呼吸法でリラックスする
舌の状態は内臓の状態を映す「体の鏡」とも言われています。舌に現れる変化に注目することで、体の不調にいち早く気づき、改善することができるでしょう。
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