私たちが毎日食べているお米。実はこの「うるち米」は東洋医学では「粳米(こうべい)」という生薬としても重要な位置を占めています。毎日口にしているものが実は体に様々な効能をもたらしているとしたら、驚きではないでしょうか?
特に玄米の状態では、消化吸収を助け、体のエネルギーとなる「気」を補ってくれる貴重な食材です。今回は普段何気なく食べているお米の漢方的な側面に焦点を当て、その効能と活用法について詳しく見ていきましょう。
Q. 粳米(うるち米)とは何ですか?
粳米(こうべい)とは、私たちが普段食べている「うるち米」のことで、漢方では玄米の状態で薬として用います。日本人の主食として古くから親しまれてきたこのお米は、単なる炭水化物源ではなく、東洋医学的には重要な薬効を持つ食材として認識されています。
精白米と玄米では含まれる栄養素や効能に違いがありますが、どちらも基本的に体に優しい性質を持っています。特に玄米はビタミンB1や食物繊維が豊富で、疲労回復や便秘予防にも役立ちます。
性味/帰経(せいみ/きけい)
- 性質:平(へい)- 体を温めも冷やしもしない穏やかな性質
- 味:甘(かん)- 穏やかな甘みを持つ
- 帰経:脾(ひ)、胃(い)- 特に脾臓と胃の機能に作用する
粳米(うるち米)にはどのような効能がありますか?
うるち米には、主に「補中益気(ほちゅうえっき)」「健脾和胃(けんぴわい)」「除煩止渇(じょはんしかつ)」という三つの主要な効能があります。これらは日常の健康維持に欠かせない働きです。
主な効能
- 補中益気(ほちゅうえっき)
- お腹の働きを高めて気を補充する効果
- 疲労感の改善や体力回復に役立つ
- 健脾和胃(けんぴわい)
- 脾臓の機能を健やかにし、胃腸の働きを整える
- 消化吸収を助け、胃腸の不調を改善する
- 除煩止渇(じょはんしかつ)
- 精神的な不安やイライラを和らげる
- 喉の渇きを癒す効果がある
期待できる効果
- 脾気虚(ひききょ)による疲れの改善
- 食欲不振の解消
- 嘔吐や胃腹部の張りの緩和
- むくみや下痢の改善
- 精神不安やイライラの軽減
- 喉の渇きの緩和
これらの効能から、うるち米は単なるエネルギー源としてだけでなく、体調を整える「食薬」としての側面も持っているのです。毎日の食事で意識的に取り入れることで、健康維持に役立てることができますね。
粳米(うるち米)はどのように活用すればよいですか?
うるち米は日常的に食べるものなので、意識的に取り入れることで様々な不調の改善に役立てることができます。特に以下のような症状がある場合は、うるち米を中心とした食事が効果的です。
実践的な活用法
- 疲れや食欲不振がある場合:粳米(うるち米)に椎茸や生姜を加えて調理すると効果的です
- 胃腸の調子が悪い時:お粥にして食べると消化に負担がかかりません
- 精神的に不安定な時:ゆっくりと噛んで食べることで、落ち着きを取り戻せます
ただし玄米は栄養価が高いですが、消化に負担がかかることもあります。胃腸が弱っている方は、最初は白米から始めて徐々に玄米を取り入れていくといいでしょう。
粳米(うるち米)を活かした薬膳レシピ
以下のレシピは、粳米(うるち米)の漢方的効能を最大限に引き出すための簡単な調理法です。体調やお好み、目的に合わせてお試しください。
1. 元気回復!椎茸と生姜の炊き込みご飯
効能: 補中益気(気を補い体力を回復)、健脾和胃(脾と胃の機能を高める)
材料 (4人分):
- うるち米 2合
- 乾燥椎茸 4-5枚
- 生姜 1かけ(みじん切り)
- 醤油 大さじ1
- 酒 大さじ1
- 塩 小さじ1/2
作り方:
- 乾燥椎茸はぬるま湯で戻し、石づきを取り除いて薄切りにします(戻し汁は捨てずに取っておきます)
- 米を研ぎ、通常の水加減より少し少なめにし、椎茸の戻し汁を加えます
- みじん切りにした生姜、椎茸、調味料を加えて炊きます
- 炊き上がったら軽く混ぜて10分ほど蒸らし、器に盛ります
2. 胃腸を優しく整える七草粥
効能: 健脾和胃(脾と胃を整える)、除煩止渇(イライラを鎮め喉の渇きを癒す)
材料 (2人分):
- うるち米 1合
- 春の七草(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ)各適量 ※季節外れの場合は、小松菜、水菜、大根の葉などで代用可
- 塩 小さじ1/4
作り方:
- 米は洗って30分ほど水に浸しておきます
- 七草(または代用の野菜)はきれいに洗い、細かく刻んでおきます
- 鍋に米と水(米の5-6倍量)を入れ、弱火〜中火で40分ほど煮ます
- 米が柔らかくなったら七草を加え、さらに5分ほど煮ます
- 塩で味を調え、器に盛ります
3. 精神安定!黒豆入り玄米ごはん
効能: 補中益気、除煩止渇(精神不安やイライラを和らげる)
材料 (4人分):
- 玄米(うるち米の玄米) 2合
- 黒豆 1/4カップ
- 塩 少々
作り方:
- 黒豆は前日から水に浸しておきます
- 玄米はよく研いで30分ほど水に浸しておきます
- 玄米と黒豆を炊飯器に入れ、玄米モードで炊きます
- 炊き上がったら軽く混ぜて10分ほど蒸らし、器に盛ります
※いずれのレシピも体調に合わせて調整してお召し上がりください。食材の相性や自分の体質に合わせて、アレンジしてみるのも良いでしょう。
粳米(うるち米)を食べる際の注意点はありますか?
うるち米は基本的に安全な食材ですが、その特性ゆえに注意すべき点もあります。特に「補中益気」の効能があるため、食べ過ぎには注意が必要です。
注意すべきポイント
- 食べ過ぎに注意: 美味しいからといって食べ過ぎると、脾胃の機能が高まりすぎて肥満の原因になることがあります
- 体質に合わせた摂取: 元気が有り余っていて太りやすく、むくみやすい方は適量を心がけましょう
- 玄米の摂取量: 玄米は消化吸収に負担がかかるため、胃腸が弱い方は毎食の摂取は控えましょう
- 調理法の工夫: 消化に不安がある場合は、お粥にするなど消化しやすい調理法を選びましょう
胃腸の機能が低下すると、気や血を十分に作ることができなくなり、皮膚トラブルなど様々な不調につながることもあります。自分の体調に合わせた適切な摂り方を心がけることが大切です。
まとめ:私たちの身近にある「粳米(うるち米)」の素晴らしさ
私たちが毎日食べているうるち米は、東洋医学的には「粳米」という名前で呼ばれる立派な生薬です。その穏やかな性質と脾胃を整える効能は、日本人の健康を何世紀にもわたって支えてきました。
うるち米の主な効能である「補中益気」「健脾和胃」「除煩止渇」は、現代社会で生きる私たちにとって特に重要です。疲れやすさ、胃腸の不調、精神的なイライラなど、現代人に多い症状の改善に役立ちます。
ただし、その効能を最大限に活かすためには、自分の体質や体調に合わせた適切な摂取が大切です。食べ過ぎには注意し、必要に応じて調理法を工夫することで、うるち米の恵みを十分に受け取ることができるでしょう。
毎日の食事に「食薬」としてのうるち米の視点を加えることで、より健康的な食生活へとつながっていきます。東洋医学の知恵を取り入れた食養生を、ぜひ日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献

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