皆さんは普段からクルミを食べていますか?スーパーのナッツコーナーでよく見かけるこの食材、実は漢方の世界では古くから重要な「食薬」として珍重されてきました。
東洋医学では食べ物は単なる栄養源ではなく、体調を整え、病気を予防する「薬」としての側面も持っていると考えられています。特にクルミは「胡桃肉(ことうにく)」として、その特性が細かく研究されてきました。
今回は漢方的視点から見たクルミの素晴らしい効能と、日常生活での活用法をQ&A形式でご紹介します。健康維持や体質改善にお役立てください。
クルミの基本情報を教えてください
クルミは漢方では「胡桃肉(ことうにく)」と呼ばれ、以下のような性質を持っています。
【性味/帰経】
- 性質:温性(体を温める)
- 味:甘味(種皮は渋味)
- 作用する臓腑:腎、肺、大腸
クルミの形が脳に似ていることから、西洋でも脳に良い食べ物として知られていますが、東洋医学でも体を温め、潤いを補充してくれる優れた食材として重宝されてきました。
特筆すべきは、クルミに含まれる不飽和脂肪酸の豊富さです。これが血管の弾力性を回復させる効果をもたらします。また、タンパク質や各種ビタミン、ミネラルも豊富に含まれているため、少量でも栄養価の高い食品といえるでしょう。
クルミにはどのような薬効がありますか?
クルミには主に3つの重要な薬効があります。
1. 補腎助陽(ほじんじょよう)
- 腎の機能を高め、陽気(体を温める気)を助ける効果
- 腎虚(じんきょ)による腰痛の緩和
- 四肢の無力感の改善
- むくみの解消
- 冷えの改善
2. 温肺定喘(うんはいていぜん)
- 肺を温め、喘息を鎮める効果
- 肺腎不足による呼吸困難の改善
- 慢性的な咳の緩和
- 喘息症状の軽減
3. 潤腸通便(じゅんちょうつうべん)
- 腸を潤して便通を良くする効果
- 特に老人、虚弱者、病後の方の腸の乾燥による便秘の改善
クルミの素晴らしいところは、単に材料(栄養素)を補充するだけでなく、それを身体が活用するためのエネルギーも同時に補給してくれる点です。これは特に年齢を重ねた方にとって重要な特性です。
例えば、骨粗しょう症の改善のためにカルシウムを多く含む牛乳を摂取しても、高齢者の場合は体内でそれを骨に変換するエネルギーが不足していることがあります。クルミは材料とエネルギーの両方を補充してくれるため、効率的に体の機能を高められるのです。
クルミはどのように活用すればよいですか?
クルミは目的に応じて様々な方法で活用できます。
【応用例】
- 腎を補うには:塩で炒めるか、蜂蜜で調味して食べる
- 腰痛、四肢無力には:クルミと杜仲(とちゅう)、肉桂(にっけい)を組み合わせる
- 喘息、咳には:クルミと吉林人参(きつりんにんじん)、銀杏(ぎんなん)、生姜をともに刻んで食べる
- 老人の便秘には:生のクルミに少量の蜂蜜を加えて食べる
日常的な食べ方としては、以下のような方法がおすすめです:
- そのまま食べる
- 味噌やみりんと一緒に炒めてクルミ味噌にする
- パンや柚餅子(ゆべし)に入れる
- ニラと一緒に炒め物にする(体を温め、血流を改善する効果が高まります)
特に西太后が愛したというスイーツレシピもご紹介します。クルミに豆乳、白玉団子、ココナッツミルク、蜂蜜、黒糖、塩などを混ぜて汁粉風にしたものです。ここにクコの実を加えると、寝不足の方の高血圧にも効果的なスイーツになりますので、ぜひお試しください。
クルミを食べる際の注意点はありますか?
クルミは非常に優れた食材ですが、いくつか注意点もあります。
【注意点】
- 油分が多いため消化しにくく、下痢気味の方は控えめにする
- 脾胃(ひい:消化器系)が弱い方は食べる量に注意する
- 食べ過ぎは良くないので、1日に数粒程度を目安にする
- 他の漢方的な食材(黒ゴマ、クコの実など)とバランス良く摂取する
また、クルミは油分が多いため酸化しやすい性質があります。購入後は冷蔵庫で保存し、なるべく早めに食べきることをおすすめします。
クルミはどのような方におすすめですか?
クルミは以下のような方に特におすすめです:
- 冷え症の方
- 腰痛に悩む方
- 年齢とともに体力が落ちてきたと感じる方
- 呼吸器系の不調(咳、喘息など)がある方
- 便秘気味の方(特に高齢の方)
- 血管の弾力性を維持したい方
- アンチエイジングに関心のある方
東洋医学では「腎」は単なる臓器ではなく、体の根本的なエネルギーを蓄える場所と考えられています。クルミは「補腎」作用があるため、全身の活力を高める効果が期待できるのです。
まとめ:クルミの健康パワーを日常に取り入れよう
クルミには「補腎助陽」「温肺定喘」「潤腸通便」という3つの主要な効能があり、体を温めながら潤いを補充し、血管の弾力性を回復させる優れた食材です。
単に栄養素を補給するだけでなく、それを体内で活用するためのエネルギーも同時に補充してくれるため、特に年齢を重ねた方には理想的な食品といえるでしょう。
毎日の食生活に少量のクルミを取り入れることで、腰痛や冷え症の改善、呼吸器系の健康維持、便通の改善など、様々な健康効果が期待できます。
ただし、消化に負担がかかる面もあるため、食べ過ぎには注意し、自分の体質に合わせた適量を心がけましょう。クルミを通じて、東洋医学の知恵を現代の健康維持に活かしてみてはいかがでしょうか。
参考文献

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