梅雨の季節を告げる花として、また夏の保存食として私たちの生活に馴染み深い「梅(ウメ)」。
古くから日本人に愛されてきたこの果実は、単に酸っぱい味を楽しむだけでなく、実は漢方の世界では重要な生薬として扱われてきました。梅干しやジュース、ジャムなど様々な形で私たちの食卓に登場する梅ですが、その効能は実に多岐にわたります。
今回は、生活習慣の乱れや季節の変わり目に役立つ「梅」の薬効について、Q&A形式でわかりやすくご紹介します。夏バテ対策や体調管理にぜひ役立ててくださいね。
梅(ウメ)とは何ですか?その基本情報を教えてください
梅(ウメ)は、バラ科サクラ属の落葉高木の果実で、漢方では乾燥させたものを「烏梅(ウバイ)」と呼び、重要な生薬として用いられています。
日本では梅干しとして親しまれていますが、梅酒、梅ジュース、梅ジャムなど様々な形で私たちの生活に溶け込んでいます。
性味と帰経(漢方での特性)
- 性味:平、酸、渋
- 帰経:肝、脾、肺、大腸
性味とは漢方における食材や生薬の性質を表し、帰経は主にどの臓器に作用するかを示しています。梅は「平」の性質を持ちながら、酸味と渋みがあり、肝臓、脾臓、肺、大腸に特に作用すると考えられています。
梅にはどのような薬効がありますか?
梅には主に以下のような薬効が期待できます:
1. 生津収斂(せいしんしゅうれん)の効果
生津収斂とは、体の潤いを補充し、体内の大切な水分や栄養を保持する作用のことです。具体的には:
- 唾液の分泌を促進し、喉の渇きを癒す
- 過剰な汗の分泌を抑える
- 慢性的な下痢や軟便を改善する
2. 止咳化痰(しがいけたん)の効果
咳を鎮め、痰を除去する作用です:
- 肺の機能を整えて咳を抑制
- 特に虚証(体力が低下した状態)による慢性的な咳や喘息に効果的
3. その他の効能
- 整腸作用:消化吸収を助け、腸内環境を整える
- 殺菌作用:古来より保存食として用いられてきた理由でもある
- 水分代謝の促進:夏バテ防止に効果的
梅を使った家庭での活用法を教えてください
梅は様々な形で日常生活に取り入れることができます:
梅シロップの作り方と効果
梅と氷砂糖で作る梅シロップは、夏の健康維持に最適です。
- 梅の収斂作用が咳を抑える
- 氷砂糖の肺を潤し痰を出す働きが加わる
- 相乗効果で咳止めや喉の渇き解消に高い効果
梅シロップは水で薄めて飲むだけでなく、ヨーグルトにかけたり、かき氷のシロップとして楽しむこともできますよ。
梅干しの活用
- 夏バテ予防に毎朝1粒
- お弁当に入れて殺菌効果を活用
- おにぎりやお茶漬けなど、日本の食文化と共に楽しむ
ただし、梅干しは塩分が多いため食べ過ぎには注意しましょう。減塩タイプや、はちみつ漬けなど塩分控えめのものを選ぶのもおすすめです。
梅を使用する際の注意点はありますか?
効能が高い梅ですが、使用に際して以下の点に注意が必要です:
使用を控えるべき場合
- 風邪が原因の咳:梅は「出過ぎて困るモノを止める」作用があるため、風邪の初期段階で病邪(びょうじゃ)を体内に閉じ込めてしまう可能性がある
- 胃酸過多の方:酸味が強いため、胃酸が多い状態ではかえって症状を悪化させることがある
摂取量について
- 梅干しは塩分が多いため、高血圧の方は食べ過ぎに注意
- 梅酒などのアルコール漬けは、アルコールに弱い方や肝臓に問題がある方は控えめに
漢方では梅(烏梅)をどのように使用しますか?
漢方では梅を乾燥させた「烏梅(ウバイ)」という生薬として用います:
烏梅の主な効能
- 斂肺止咳(れんはいしがい):肺の機能を整え、咳を止める
- 渋腸止瀉(じゅうちょうししゃ):腸の働きを整え、下痢を止める
- 安蛔止痛(あんかいしつう):回虫による腹痛や嘔吐を和らげる
- 生津止渇(せいしんしかつ):体の潤いを補い、渇きを癒す
烏梅は単独ではなく、他の生薬と組み合わせた漢方処方として用いられることが多いです。
まとめ:身近な食材「梅」を健康維持に活かそう
梅は単なる食材ではなく、私たちの健康を支える貴重な存在です。
- 咳止めや喉の渇き解消に効果的
- 慢性的な下痢や軟便の改善に役立つ
- 汗の過剰分泌を抑える
- 夏バテ防止に最適
ただし、風邪による咳や胃酸過多の場合には注意が必要です。梅の酸味や収斂作用が逆効果になる場合があります。
季節の変わり目や夏バテが気になる季節には、ぜひ梅の力を借りて健やかな毎日を過ごしましょう。日本の伝統的な知恵が詰まった「梅」を、現代の生活にも上手に取り入れてみてくださいね。
参考文献

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