日中の強い眠気に悩む方へ〜東洋医学から見る原因と対策法〜

嗜眠
ピヨ先生
ピヨ先生

こんにちは
どうなさいましたか?

にゃんたろう
にゃんたろう

昼間の眠気にお悩みの方から
質問をいただきましたよ

日中、強烈な眠気に襲われて仕事や家事に集中できない…そんな経験はありませんか?

特に午後になると急に眠くなり、体が重くなって意識が朦朧としてしまうという症状は、実は多くの方が抱える悩みです。カフェインに頼っていた方が断ったら逆に症状が悪化するというケースも少なくありません。

今回は、カフェインを断ったことで日中の眠気が強くなってしまったという36歳女性の体験談をもとに、東洋医学の観点から眠気の原因と対策について詳しく解説していきます。

この方の外見的な特徴とお悩みの症状

基本情報:

  • 36歳女性
  • 身長160cm
  • 体重50kg
  • BMI 19.53

主な症状:

  • 2週間前からカフェイン断ちを始めたところ、午後から夜寝るまで尋常じゃない眠気に襲われる
  • 体が鉛のように重く、やる気が出ない
  • 肩と首の凝りが増している
  • たまに深く呼吸できないような感覚がある
  • 夢をいくつも覚えていて眠りが浅い感じ
  • 起きた時は疲労感があるが、動くと軽減する
  • 舌に歯の痕があり、苔の上の水分が水っぽく、一部剥れている

コーヒーを飲んでいた頃は朝起きられず午前中は倦怠感があったものの、日中は活動的だったそうです。しかし夜眠れないことが悩みだったため、カフェイン断ちを始めたところ、今度は朝は起きられるようになったものの、日中の強烈な眠気に悩まされるようになったとのことです。

強い眠気はなぜ起こる?東洋医学的な視点から

東洋医学では、十分な睡眠をとっているのに眠くなる症状を「嗜眠(しみん)」と呼びます。この嗜眠にはさまざまな原因がありますが、主に以下のような要因が考えられます。

  1. 体の熱源が弱い
  2. 体内に水分が充満している

東洋医学では、脳の活動を調整しているものを「心気(しんき)」と呼び、これが意識状態や睡眠と深く関わっています。心気の機能が正常で気血が充実していれば、意識活動は明瞭で思考も穏やかに保たれます。

この心気の機能を正しく発揮させるためには、活動の源となる熱源「心陽(しんよう)」と、活動を穏やかに制御する冷却水の役割を持つ「心陰(しんいん)」の2つがバランスを保つ必要があります。

これをコンピューターに例えると分かりやすいでしょう。脳の働きは様々な計算をするCPUのようなものです。コンピューターを起動するには電気が必要ですが、同時に過熱を防ぐための冷却システムも必要です。人間の脳も同様に、活動させるエネルギーと適切に冷却するエネルギーのバランスが大切なのです。

この心陽と心陰のバランスから睡眠を考えると:

  • 心陽が活動することで脳の活動が盛んになり→目覚める
  • 心陰が充実することで脳が穏やかになり→眠る

つまり:

  • 不眠の方は、心陽が過剰で心陰が不足している
  • 強い眠気に悩む方は、心陽が不足している

心陽が不足する原因としては:

  1. 体が冷えて脳を活動させるために必要な気血が届かない
  2. 余分な水分が体内に充満して気血の流れを阻害し、心陽が圧迫される
  3. ストレスにより気の広がりが悪くなる
  4. ドロドロした水分や血液が流れを邪魔する
  5. 過労や慢性的な寝不足により体の潤いが不足している

この方の体質はどのようなタイプ?

この方の体質を分析してみましょう。

顔色は普通、舌の形も普通で色は綺麗なピンク色、寒がりや手足の冷えもないことから、体の熱源に問題はなさそうです。舌の苔の厚さも問題なく、BMIも正常、浮腫みもないことから、体全体に水が充満しているわけでもありません。

しかし、以下の点から体内の一部に余分な水分が停滞していると考えられます:

  • 舌に歯の痕がある
  • 舌の苔の上の水分が水っぽい
  • 尿の回数が1日10回と多い
  • 頭が重く感じられることが多い
  • 大便が何度も出る

また、喉が渇いて水を飲みたいという訴えから、水分を摂取する機会が多いことが推測されます。ただし、頻繁な排尿や排便によって外へ排出されているため、体に浮腫みなどの症状として現れていない可能性があります。

これはまるで、お風呂の水道を全開にしたまま排水溝も開けているような状態。せっかく温めたお湯も入ってくる水で冷やされ、本来の水の循環が起こりません。これと同様のことが体内で起きていると考えられます。

熱めのお風呂に入ると目が覚めるという点からも、体が温まることで循環が良くなり、気血が届くようになったことが窺えます。

さらに、以下の症状から気の巡りも停滞気味であることが分かります:

  • 喉に何かが引っかかる感じがする
  • 肩こりがある
  • たまに深く呼吸ができない

この気の滞りによって生じた広がることのできないエネルギーが上方へ向かう際に水を連れていき、頭が重く感じられる原因になっています。また、肩や首の周辺で充満することで、肩こりや首のコリを引き起こしているのでしょう。

なぜ午後になると眠くなるのか?

この方の場合、特に以下のメカニズムで日中の眠気が生じていると考えられます:

  1. 水分の停滞と気の滞りによって、お腹の働きに負担がかかる
  2. 気を作る働きにも負担がかかるため、食事後は限られた気がお腹の中心部に集中する
  3. その結果、頭部など末端部へ気が広がれなくなり、疲れや眠気を感じる

特に気を作る働きが低下していると、睡眠により朝はエネルギーが満タンになっているため活動できますが、昼間の活動でエネルギーが消耗すると、午後になって疲れや眠気として現れます。また、夜間の睡眠が浅いとのことなので、不足分を補おうとして体が眠りを要求しているとも考えられます。

さらに、体内の余分な水分には活動を鎮静化させる働きがあるため、体が重だるく感じるようになります。これは濡れた洋服を着て歩いているような状態です。この状態が続くと、水が停滞している部位は冷やされ、血管を収縮させます。すると体を動かすためのエネルギーや材料となる気や血液がきちんと運搬されなくなり、重だるさや疲れを感じるようになるのです。

このような体質の方におすすめの自然療法

この方の体質を整理すると:

  1. 浮腫みや体の冷えなどの目立った症状はないものの、体内の水分の運行力が低下している
  2. お腹に負担がかかっていて、気を作る働きにも負担がかかっている
  3. 朝は元気でも、活動による気の消耗と食事によるお腹への気の集中で、午後になると末端部に気が広がらなくなり、疲れや眠さを感じる
  4. ウォーキングや体を動かす仕事により、水の巡りがある程度維持されているため冷えや浮腫みは目立たないが、水の運行には負担がかかっている

水分摂取の工夫

喉が渇いて水を飲みたいという症状がありますが、水の飲み方に注意が必要です。常温やぬるめの白湯を少量ずつこまめに飲むようにしましょう。一度に大量の冷たい水を飲むことは避けてください。

食生活の見直し

大便の回数が多いことから、もし食べ過ぎの傾向がある場合は、よく噛んで腹八分を心がけましょう。また、特に体を冷やすような食べ物(生野菜、冷たい飲み物、アイスクリームなど)は控えめにするとよいでしょう。

コンニャク湿布で体を温める

熱めのお風呂に入ると目が覚めるという点から、体を温めることが効果的と考えられます。夜寝る前などに温めたコンニャクを使った湿布で肝臓や下腹部、腎臓などを温めると、循環が良くなりおすすめです。

コンニャク湿布のやり方:

  1. 大きめの鍋に水を入れ、コンニャク2丁を入れてから強火で水を沸かし、沸騰後さらに10分ほど煮る
  2. 茹でたコンニャクを取り出してタオルでくるみ、火傷に注意しながら肝臓と丹田の上に乗せて30分ほど温める
  3. 同時に、左わき腹の脾臓を濡れたタオルで10分ほど冷やす(不快に感じる場合は省略可)
  4. コンニャクを外して冷たいタオルで軽くふき、皮膚の毛穴を閉じる(これも不快な場合は省略可)
  5. うつぶせになって腎臓の上にコンニャクを置き、30分ほど温める
  6. 冷たいタオルでふいて毛穴を引き締める

※違和感などがある場合はすぐに中止してください。

この体質改善に効果が期待できる漢方薬

この体質の方には、水分代謝を改善し気の巡りを促進する漢方薬が効果的です。ただし、これらはあくまで一般的な体質改善のための漢方薬であり、個人の症状に合わせた処方ではありません。

  • 五苓散(ごれいさん): 体内の余分な水分を排出し、水分代謝を整える漢方薬。むくみや頭重感の改善に期待できます。
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう): 気の巡りを良くし、精神を安定させる効果があります。肩こりや不眠の改善にも効果が期待できます。
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう): 気を補い、消化機能を高める漢方薬。疲れやすさや食後の眠気改善に役立ちます。

症状が複雑な場合には、単独では効果が見られないこともあります。ピヨの漢方では、あなたの体質や症状に合わせた漢方相談も行っていますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

日中の強い眠気の原因は、東洋医学的に見ると、体内の水分バランスの乱れと気の滞りによる場合が少なくありません。特に、この症例のように水の運行力の低下と気の生成に負担がかかっている方は、午後になると気が末端まで届かなくなり、眠気や疲労感を感じやすくなります。

対策としては:

  1. 水分摂取の仕方を工夫する(冷たい水をガブ飲みしない)
  2. 食生活を見直す(食べ過ぎない、体を冷やす食べ物を控える)
  3. コンニャク湿布などで体を温める
  4. 可能であれば適切な漢方薬を取り入れる

これらの対策を継続することで、体内の水分と気のバランスが整い、日中の眠気が改善する可能性があります。急激な改善は難しいかもしれませんが、根気よく続けることが大切です。

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ピヨ先生
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