私たちの身近にありながら、その素晴らしい薬効についてはあまり知られていない「蓮の実」。
蓮根は料理でおなじみですが、蓮の花が枯れた後の花托に収まっている「蓮の実」も、実は東洋医学では「蓮子(れんし)」と呼ばれる貴重な生薬なのです。
古代中国では皇帝の誕生日を祝う膳に欠かせない食材として珍重され、精進料理にも使われてきました。ご飯に混ぜたり、スープにしたり、スイーツに使ったりと様々な調理法で楽しむことができます。
今回は、この小さな実に秘められた東洋医学的な効能や使い方について、Q&A形式でわかりやすく解説していきましょう。
蓮の実(蓮子)とは何ですか?
蓮の実は、東洋医学では「蓮子」と呼ばれる生薬です。蓮の花が咲き終わった後、花托(かたく)と呼ばれる部分に収まっている種子になります。
蓮と言えば蓮根をイメージする方が多いですが、蓮根は実は地下茎であり、翌年の発芽に備えて栄養を蓄えて肥大したものです。
蓮はかつて花托の形状がハチの巣に似ていることから「はちす」と呼ばれていましたが、いつしか「はす」に変わったと言われています。ちなみに、この形状に不快感を感じる方は、小さな穴や斑点の集合体を恐れる「トライポフォビア」かもしれませんね。
蓮の実の基本情報
性味/帰経:
- 性質:平(へい)
- 味:甘(かん)、渋(じゅう)
- 帰経:脾、腎、心
蓮の実にはどのような効能がありますか?
蓮の実には主に以下の3つの重要な効能があります。
1. 健脾止瀉(けんぴししゃ)- お腹の調子を整える
健脾止瀉とは、お腹(脾)の働きを高めて、下痢を止める効果です。東洋医学では、食べ物の消化吸収と栄養分を全身に運ぶ働きを「脾気(ひき)」と呼びます。
脾気が弱ると、食べ物を上手く吸収できず下痢や軟便になりがちです。蓮の実は脾気の働きを高めると同時に、漏れ出るものを引き締めて留める作用も持っています。
こんな症状に効果的:
- 脾虚(ひきょ)による慢性的な下痢
- 食欲不振
- 消化不良
2. 養心安神(ようしんあんじん)- 心を養い精神を安定させる
養心安神は、東洋医学で「心気(しんき)」と呼ばれる脳の活動を調整し、精神を穏やかにする効果です。
心気は意識活動をコントロールしており、大脳の働きと関係が深いと考えられています。ストレスや過度の精神活動で心気が過剰になると、不眠や不安などの症状が現れます。
蓮の実は心の熱を冷まし、同時に潤いを補充して漏れ出ないようにしてくれるため、精神を安定させる効果があります。
こんな症状に効果的:
- 虚煩(きょはん)- 落ち着かない気持ち
- 動悸
- 不眠
3. 益腎固精(えくじんこせい)- 腎の機能を高め精を固める
益腎固精とは、腎気の働きを高めて、濃厚な命の素(精)を漏らさないようにする効果です。
東洋医学では、腎気が月経などの生理的な出血をコントロールしていると考えられています。腎気が弱ると、留めておくべき血が漏れ出て不正出血となることがあります。
蓮の実は腎気の機能を高め、体の大切な成分を保持する力を強化します。
こんな症状に効果的:
- 腎虚(じんきょ)による遺精
- 不正出血
- 帯下(たいげ)- おりものの過多
- 精力減退
蓮の実を使う際の注意点はありますか?
蓮の実は多くの効能がある一方で、いくつか注意点もあります。
注意すべきポイント:
- 熱性の便秘がある方は控えめにしましょう(留める作用が強いため)
- 芽が出てしまっている実は苦味が強いので、取り除くことをおすすめします
- 体質によっては合わない場合もあるので、体調の変化に注意して使用してください
- 初めて使用する場合は少量から始めるのが安全です
まとめ:蓮の実(蓮子)の魅力と活用法
蓮の実は東洋医学の宝庫とも言える素晴らしい生薬です。脾を補って下痢を止め、心を養って不眠や不安を改善し、腎を益して不正出血や精力減退を防ぐという、体の根本から健康を支える効能を持っています。
蓮の実の主な効果:
- お腹の働きを高めて下痢を改善
- 不眠や不安感を和らげる
- 不正出血を予防
- 精力減退を改善
日常の食生活に蓮の実を取り入れることで、穏やかに体質改善を図ることができます。ご飯に混ぜて炊いたり、甘味料と一緒に煮てデザートにしたり、お粥に入れたりと様々な方法で楽しめますよ。
ただし、便秘がある方は控えめにするなど、自分の体質に合わせた使い方を心がけましょう。東洋医学の知恵を活かして、自然の恵みである蓮の実の力を日々の健康に役立ててみてはいかがでしょうか。
参考文献

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