ニキビ・肌荒れに効く「十味敗毒湯」とは?漢方で考える肌トラブルの原因と対策

漢方メモ
ピヨ先生
ピヨ先生

こんにちは
どうなさいましたか?

にゃんたろう
にゃんたろう

肌荒れにお悩みの方から
質問をいただきましたよ

「ニキビがなかなか良くならない」「スキンケアを頑張っているのに繰り返してしまう」そんなお悩みを抱えていませんか?

実は、ニキビなどの肌トラブルは、皮膚の表面だけでなく体の内側との巡りが乱れているサインかもしれません。ストレスや生活習慣によって「気」の流れが滞ると、肌は体の内側から孤立してしまいます。

今回は、繰り返す肌トラブルやニキビに悩む方に向けて、中医学の視点から原因を紐解き、「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」という漢方薬がどのように働くのかをやさしく解説いたします。

どうしてニキビができるのですか?

ニキビは、皮膚のターンオーバーの乱れによって毛穴が塞がり、皮脂を栄養とするアクネ菌が過剰に繁殖して炎症が起きることで発生します。

皮膚は常に外部からの刺激にさらされています。表皮の角質には神経や血管が通っていません。これは、角質がバリアとしての働きをするためです。

表皮は死んだ状態の細胞が積み重なるように、壁を作って体の内側を守っています。この表皮の壁を作るための働きがターンオーバーです。

ターンオーバーが乱れる原因

ターンオーバーは、新しく作られた表皮の細胞によって、古い表皮の細胞が押し上げられていく働きです。東洋医学的に考えると、皮膚を作る工場で新しい細胞が作られ、全身へと配る働きによって表皮にまで押し上げられている状態です。

この働きを乱してしまう原因の一つに、ストレスがあります。

ストレスを感じている状態が長く続くと、全身へと配る働きを担う「気」が不具合を起こして滞るようになります。滞ってこもった気によって、コントロールが効かなくなるほどターンオーバーの働きが過剰に亢進すると、毛穴周辺の角質が厚くなって塞がってしまうのです。

皮脂の分泌過剰が起こる理由

さらに、全身へと配る働きを担う気が過剰に亢進すると、外側へと気血を広げる力が強くなってしまいます。すると、血流にのって皮膚までやってきた栄養分を含んだ潤いが、体の内側へと上手く回収されなくなってしまいます。

皮膚周辺で停滞して、皮脂の分泌亢進や皮脂の溜め込みなどを起こす様になるのです。

そうなると、皮脂の分泌が過剰になり、毛穴の角質が塞がってしまった中では酸素が足りなくなります。アクネ菌の増殖を許してしまい、炎症を発症させて、ニキビになります。

肌が孤立してしまうということ

皮膚が健康な状態でいるためには、皮膚表面と体の内側との途切れることのない気血の流れが欠かせません。

ストレスによって気の流れが乱れてしまうと、体の内側から皮膚へと届けられるべき栄養や潤いの配達、皮膚の活動によって生じた不要物の回収などが不具合を起こします。皮膚が体の内側から孤立した状態になってしまうので、様々な皮膚のトラブルになるのですね。

十味敗毒湯はどんな漢方薬ですか?

十味敗毒湯は、その名の通り10種類の生薬から構成されている漢方薬です。滞っている気や水を発散させて巡りを回復させ、こもっている熱を排除してくれます。

配合されている生薬とその働きは次の通りです。

  • 柴胡(さいこ): 滞った気を解放し発散させる
  • 桔梗(ききょう): 気を上向きに上昇させる
  • 荊芥(けいがい): 皮膚表面の血流を盛んにする
  • 川芎(せんきゅう): 血液の流れを改善する
  • 独活(どっかつ): 余分な冷えや水分を発散する
  • 生姜(しょうきょう): 消化を促しお腹を整える
  • 茯苓(ぶくりょう): 余分な水分を巡らせて排除する
  • 甘草(かんぞう): 炎症を鎮め潤いを補充する
  • 桜皮(おうひ): 熱を冷まし炎症を鎮める
  • 浜防風(はまぼうふう): 新鮮な潤いを補充する

※会社によっては、浜防風が防風に変わっているなど変更されていることがあります。その場合には、邪魔モノを外側へと発散する力が強くなるなど漢方薬の性質が変化します。

どうしてニキビが良くなるのですか?

十味敗毒湯は、段階的に働きかけることで肌トラブルを改善していきます。

第一段階:滞った気を解放する

まずは、柴胡、桔梗で滞っている気を解放して、気を上向きに上昇させます。

柴胡は、滞った気を解放して上向きに上昇させ、体の表面から発散させて表層を冷やします。桔梗は、気を上向きに上昇させることで、皮膚表面などの調整をする肺気の流れを良くします。これにより様々な皮膚のトラブルを解消してくれるのです。

第二段階:邪魔モノを発散して追い出す

さらに、荊芥、川芎によって、皮膚表面に居座っている邪魔モノを発散して外側に追い出します。

荊芥は温める性質を持ち、皮膚表面の血流を盛んにします。汗の分泌を高めることで、筋肉の過剰な収縮を穏やかにし、熱を発散してくれますので、痒みの解消につながります。

川芎も温める性質を持ち、血液の流れの悪いドロドロした状態を、気の流れも改善することで解消してくれます。さらに、血流を促進する作用とともに、停滞している邪魔モノを発散してくれます。皮膚表面に居座っている余分な水分なども外側へと排除するため、痛みの解消や湿疹などの解消につながるのです。

第三段階:余分な冷えや水分を排除する

独活は、温めて発散する性質と共に、乾かす作用も持ちます。余分な冷えや水分が居座ってしまった場合に、それらの邪魔モノを皮膚の表面から発散して排除することによって、巡りの改善を助けてくれます。

生姜は、消化を促すことでお腹の働きを高めると共に、停滞した気や水分の流れを、発散して表層から排除することで応援します。

ここまでの生薬では、居座っているモノを外側へと発散することで、皮膚表面で騒ぎを起こしている邪魔モノを体の中に入れないように外側へと追い払おうとしているのですね。

第四段階:土台を整えて炎症を鎮める

これらに加えて、茯苓によって停滞している余分な水分を巡らせて排除します。お腹の中に余分なモノが停滞しないように土台を整えます。

甘草、桜皮によって熱を冷まして、炎症を鎮める応援をします。浜防風、甘草は、新鮮な潤いを補充することで、熱によって乾燥した部位が潤されて、熱や乾きの症状も解消されます。筋肉の痙攣を鎮める働きも助けてくれます。

全体の働きのまとめ

もう一度繰り返しますと、次のような働きです。

  • 柴胡、桔梗で滞った気の流れを解放
  • 荊芥、川芎で気と血液の流れを改善しつつ発散
  • 独活、生姜は停滞している余分な冷えや水分も発散
  • 茯苓は体の中に停滞している水分を巡らせる
  • 甘草、桜皮で炎症を鎮める
  • 甘草、浜防風で新鮮な潤いの補充を行う

これらの働きにより、熱と水が停滞していることで膿になっているような状態が解消されます。気も血も水も動き、騒いでいる状態が外側へと発散される事で、こもって滞っていた巡りが回復します。正しい気血の巡りへと合流することが出来るので、孤立していた状態が解消して、皮膚のトラブルが改善していくのです。

どんなタイプの人に向いている?体質別おすすめコメント

十味敗毒湯は、次のようなタイプの方におすすめです。

ストレスを感じやすい方 気の巡りが滞りやすいため、十味敗毒湯が気を解放して発散させる働きが合います。

皮脂の分泌が多い方 気血の巡りが偏って、皮膚表面で停滞しやすい状態です。発散して巡りを回復させる働きが役立ちます。

繰り返すニキビや湿疹にお悩みの方 皮膚が体の内側から孤立している状態を、巡りを回復させることで改善します。

赤みや炎症を伴う肌トラブルがある方 熱を冷まして炎症を鎮める働きが、赤みや熱感を持った肌トラブルに適しています。

ただし、症状が複雑な場合には単独では効果がない場合もあります。そのような時は、当店で漢方相談を承っておりますので、お気軽にご相談くださいね。

まとめ

今回は、ニキビや皮膚の赤みと十味敗毒湯というテーマでお話ししました。

皮膚が健康な状態を保つためには、皮膚と体の内側との巡りがきちんと保たれていることが大切です。皮膚へは必要な血液や栄養が届けられ、皮膚の活動によって生じた不要物が体の内側へと回収されている必要があります。

気の巡りが滞るようになると、これらの働きが正常に行われなくなってしまいます。皮膚は体の内側から孤立した状態になり、ニキビをはじめとした様々な皮膚トラブルに見舞われることになるのです。

今回は皮膚トラブルとストレスとの関係を見てきましたが、もちろん皮膚トラブルの原因はストレスだけではありません

例えば、過労や夜更かしは体を潤す成分を消耗させ、気の流れを乱します。ターンオーバーを崩れさせる原因となります。食事の偏りも大きく関係しています。

脂っこいものや、甘いもの、味の濃厚な物は、体の中の働きを偏らせることになります。それが巡りを悪化させることにもつながるのです。

ニキビがなかなか良くならなくて悩んでいる方は、次のような点を心掛けてみてくださいね。

  • 適度な運動を取り入れる
  • 早めの十分な睡眠を心がける
  • 偏りの少ない、昔ながらの和食を中心にする
  • 少しずつ生活習慣を変えていく

体の内側から健やかな肌を取り戻していきましょう。

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ピヨ先生
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