私たちの食卓に当たり前のように存在する「はちみつ」。その甘い味わいは料理や飲み物の風味を引き立てるだけでなく、実は漢方医学の世界では重要な薬効を持つ食材として古来より重宝されてきました。
ミツバチが花の蜜を集め、体内で加工して作り出すこの黄金色の食材は、単なる甘味料ではなく、体調を整え、さまざまな不調を改善する力を秘めているのです。
今回は、漢方医学の視点から見た蜂蜜の驚くべき効能と、日常生活での活用法についてご紹介します。あなたのキッチンにある蜂蜜の新たな一面を発見してみませんか?
はちみつとは?漢方における基本情報を知ろう
蜂蜜(はちみつ)は漢方医学において「ほうみつ」と呼ばれ、古くから薬効が認められてきた天然の甘味料です。
【性味/帰経】
- 性味:平、甘
- 帰経:脾、肺、大腸
「性味」とは漢方医学で薬物の性質を表す概念で、蜂蜜は「平」と「甘」の性質を持っています。「平」は体を冷やしも温めもしない穏やかな性質、「甘」は補益作用を持つ味わいを意味します。
また「帰経」は薬物が作用する体内の臓腑を指し、蜂蜜は主に脾、肺、大腸に作用します。
生のままで使うと清涼性を持ち、火を通すと温性に変化して体を温める効果が高まるという特徴があります。
はちみつにはどんな効能があるの?
蜂蜜にはどんな漢方的効果がありますか?
蜂蜜には大きく分けて4つの主要な効能があります。
1. 補中緩急(ほちゅうかんきゅう)
脾胃(消化器系)の機能が弱っている状態を改善し、疲労回復や食欲不振、胃痛、腹痛などを緩和する効果があります。
具体的な効果:
- 食欲不振の改善
- 胃腸の調子を整える
- 疲労回復を促進
- 体力低下の回復をサポート
2. 潤肺止咳(じゅんぱいしがい)
肺の乾燥を潤し、咳や息切れを和らげる効果があります。特に空咳(痰が出ない乾いた咳)に効果的です。
効果的な症状:
- 乾いた咳
- のどの渇き
- 肌の乾燥
- 息切れ
3. 潤腸通便(じゅんちょうつうべん)
腸を潤して便通を促進します。特に体力が弱っている方や、腸が乾燥して起こる便秘に効果的です。
向いている症状:
- 虚弱体質による便秘
- 腸の乾燥による便秘
- 高齢者の軽度の便秘
蜂蜜はどのように使うと効果的ですか?
蜂蜜は単独でも効果的ですが、他の食材や漢方薬と組み合わせることで、より特定の症状に対応した効果を発揮します。
応用例:
- 腹痛や手足の冷えに: 蜂蜜 + 肉桂(シナモン) 温性の肉桂と組み合わせることで、体を温め、腹痛や冷えを緩和する効果が高まります。
- 空咳(からせき)に: 蜂蜜 + 蓮根 蓮根の止咳効果と蜂蜜の潤肺作用が相乗効果を発揮し、乾いた咳を鎮めます。
- 慢性的な便秘に: 蜂蜜 + 黒ゴマ 潤腸効果をさらに高める組み合わせです。
- 高血圧に: 蜂蜜 + 桑の葉 + 黒ゴマ 潤いの不足による高血圧に。
具体的な使用法:
- 温かい飲み物に溶かす: 60度以下のお湯や温かい飲み物に溶かして飲むと効果的です。
- 丸薬の形にする: 他の漢方生薬と混ぜて丸薬状にして摂取することもあります。
はちみつを使う際の注意点は?
蜂蜜を使用する際の禁忌や注意点を教えてください
蜂蜜は天然の安全性の高い食品ですが、いくつかの注意点があります。
注意すべき点:
- 痰湿(たんしつ)、腹脹、下痢がある方は使用を控える 体内に湿気や痰が多い状態、お腹が張っている状態、下痢をしている時には蜂蜜の使用は適していません。
- 温度管理に注意する 蜂蜜を溶かす際は60度を超えない温度で行いましょう。高温で加熱すると有効成分が失われます。
- 乳児への使用は避ける 1歳未満の乳児には、ボツリヌス菌が含まれている可能性があるため、絶対に与えないでください。重篤な食中毒を引き起こす危険があります。
- 泥状便の方は使用しない すでに緩い便の状態にある方は、さらに腸を潤す効果がある蜂蜜の使用は適していません。
はちみつの漢方的活用のまとめ
はちみつの漢方的な効能をまとめると?
蜂蜜は漢方医学において、その穏やかな性質と多様な効能から広く活用されてきた重要な素材です。
主な効能のまとめ:
- 消化器系への効果: 脾胃の機能を高め、食欲不振や腹痛を改善
- 呼吸器系への効果: 肺を潤し、空咳や息切れを緩和
- 排泄系への効果: 腸を潤して便秘を改善
- その他の効果: 皮膚の乾燥改善、疲労回復、口内炎の改善
蜂蜜は性質が温和で副作用が少ないため、日常的に取り入れやすい食材です。特に体力が低下している方や高齢者、乾燥症状がある方におすすめです。
ただし、体質や状態によっては向かない場合もあるので、体調に合わせて適切に使用しましょう。漢方では「百薬を和す」とも言われ、他の生薬と組み合わせることで、その効果を調和させる働きも重視されています。
日常の食生活に蜂蜜を取り入れる際は、品質の良いものを選び、適量を心がけることが大切です。自然の甘味と薬効を兼ね備えたはちみつを、ぜひ健康維持に役立ててみてくださいね。
参考文献

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