食欲不振・寝たきりの状態から回復へ〜心と体の東洋医学的アプローチ

お腹の不調
ピヨ先生
ピヨ先生

こんにちは
どうなさいましたか?

にゃんたろう
にゃんたろう

食欲不振にお悩みの方から
質問をいただきましたよ

食欲不振やお腹の調子が良くないとき、単なる胃腸の不調だけではなく、心のバランスが崩れている可能性もあります。東洋医学では、心と体は密接に繋がっており、精神的なショックや強いストレスが体調不良につながることがよく知られています。

今回は、大切なペットを亡くし、それをきっかけに食欲不振となり、ほぼ寝たきりの状態になってしまった方の体験談をもとに、東洋医学的な視点からの改善方法をご紹介します。

心と体の繋がりを理解し、自然な方法で回復への道を探っていきましょう。

この方の外見的な特徴とお悩みの症状

まずは相談者の方の基本情報をご紹介します:

  • 57歳の女性
  • 身長:158.5cm
  • 体重:55.5kg
  • BMI:22.09

主な症状:

  • ほぼ寝たきりの状態
  • 以前は体重80kg前後、糖尿病の数値が6.5前後あった
  • 愛犬の死をきっかけに食欲が無くなる
  • 飲み込むことも困難になり、うつ病と診断される
  • 最近は少し食べられるようになったが、食後に下痢になる
  • 現在は総合栄養剤と1日1食の少量の食事のみ

顔色は白っぽく、皮膚は乾燥気味で、髪の毛は細いとのこと。また、舌の色は白っぽく、歯の痕が残り、溝や割れ目も見られます。

食欲不振やお腹の不調はなぜ起こるのか?

食べ物の消化吸収プロセスを東洋医学の視点から解説します。

食べ物は口から入り、噛み砕かれて食道を通り、胃に入って分解され、腸へと送られます。そこで必要な栄養素が吸収され、全身へと配られていくのです。

東洋医学では、この過程を以下の3つの「気」が担っているとされています:

  1. 胃気 – 食べ物を受け入れ、分解し、下向きに運ぶ働き
  2. 肝気 – 腸管の蠕動運動を調整し、栄養素を全身に配る働き
  3. 脾気 – 栄養素を吸収し、上向きに運び上げる働き

これら3つの気がバランスよく協調して働くことで、食べ物は正しく消化吸収され、不要なものは排出されます。

しかし、肝気の流れが乱れると、様々な問題が生じます:

  • 肝気が滞ると→腸管の蠕動運動が上向きに逆流→吐き気・嘔吐・便秘
  • 肝気が過剰に働くと→腸管の蠕動運動が過剰に→下痢
  • 肝気が脾気を攻撃すると→食欲不振・腹痛

精神状態と消化器官の深い関係

東洋医学では、心気(精神活動に関わる気)が肝気をコントロールしていると考えます。心気は記憶、判断力、言語機能などの知的処理を担っており、その指令を全身に与えています。

強いストレスや精神的ショックにより心気の働きが乱れると、それは肝気にも影響します。まるで「国の王様が乱れた行いをし、家来である兵士たちがあちこちで混乱して暴れている」ような状態になるのです。

結果として、肝気の緊張が強まり、気の巡りが悪化して、食欲不振やお腹の調子の悪化につながります。

この方の体質を東洋医学的に分析すると?

この方の症状を詳しく見ていきましょう。

尿の様子は回数が6回ほどで、量は多かったり少なかったりとその時によって変化するようです。大便の様子も便秘と下痢の両方があり、硬さも日によって様々に変化します。

これらの症状から、単純にお腹が弱いのではなく、肝気の乱れが腸管の不具合を引き起こしていると考えられます。そして、愛犬の死がきっかけとなっていることから、心気の乱れが肝気に影響しているものと思われます。

心気の様子を探ると:

  • 不眠になりやすい
  • 寝つきが悪い
  • 夢をよく見る
  • 不安感が強い
  • 忘れっぽい

これらは心の領域での血や陰の不足の傾向を示しています。

さらに体の状態から見ると:

  • 皮膚が乾燥しやすい
  • 口唇が乾燥しやすい
  • 髪の毛が抜けやすい
  • 目が疲れやすく乾燥しやすい
  • 爪がもろい

これらは体の上部を中心に血や陰の不足が見られます。また、ふらつきやめまい、立ちくらみ、耳鳴りなども、上部での血や陰の不足により脳や耳の機能が正常に維持できなくなっている表れです。

一方で、口が粘る、雨の日は体調が悪い、舌に歯の痕があるなどの症状から、体の中には動きの悪い水分が停滞している様子も見られます。肩こりがあることから、上部へと向かう偏った気の流れもあり、それが腸管の動きを乱し、食欲不振にも影響していると考えられます。

この方の体質の特徴をまとめると

愛犬の死をきっかけとした心の乱れにより、心気の働きが過剰になり、それが肝気の働きを乱しています。その結果:

  1. 腸管の動きが乱れ、上向きに偏った気の流れが生じる
  2. 腸管が下向きに動かなくなり、腹部の不快感や鈍痛、食欲不振、便秘につながる
  3. 肝気が滞って気が広がれなくなり、血や潤いが末端部へ届かなくなる
  4. 全身の倦怠感やだるさが生じ、さらに心気の乱れが増す
  5. めまいやふらつき、不眠など様々な症状が現れる
  6. 睡眠不足で潤いが不足し、体温は高くないのに熱っぽく感じる
  7. こもった気が腸管を下向きに過剰に動かすと下痢になる

ではこの方に、おススメの自然療法を教えて下さい

この方は現在、糖尿病やうつ病と診断されて医療機関にかかられていると思いますので、医師から指示されている食事療法や生活改善、運動療法などは引き続き続けることが大切です。

ここでは補完的な方法として、寝たきりの方でも実践できる簡単な気功法をご紹介します:

  1. まず仰向けになり、両脇に腕や手の力を抜いて投げ出し、身体全体をリラックスさせます
  2. 顎を噛みしめていたり眉間に力が入っていたらそれも緩めましょう
  3. 鼻で軽く呼吸をしながら、そのリズムに合わせて両手の指を軽く動かします
  4. 次に足のかかとに意識を向け、軽い呼吸のリズムに合わせて、踵を軸にして足を前後に動かします
  5. 同じく仰向けのままでお腹に意識を向け、軽い呼吸に合わせてへそを中心としたお腹を上下に軽く動かします

これらの動作を、初めは30~40回、慣れてきたら100回程度行います。座っていることができる場合は、安全に配慮しながらベッドサイドに座って行うのもよいでしょう。

実践中に手先や足先に温かい感じやふわふわ、もわもわとした独特な感覚、おへその下に温かさや圧力感を感じたら、その感覚に意識を向けてみましょう。

これを続けることで、気が末端部へと広がり、お腹の気の巡りも改善し、脳の方に上がって心気を乱していた熱や気も引き下げられるでしょう。少しずつ心もリラックスしやすくなり、体質も変わっていくと思われます。

この体質改善に効果が期待できる漢方薬

ここでは特定の体質の改善に効果が期待できる漢方薬をご紹介します。なお、これはあくまでこのような体質の方に一般的に合うとされる漢方薬であり、症状が複雑な場合には単独では効果がない場合もあります。

  • 香蘇散(こうそさん): 気の流れの停滞を改善し、肝気の乱れを整える漢方薬です。気分の落ち込みや食欲不振に効果が期待できます。
  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう): のどの詰まり感や胸の圧迫感を緩和し、気の巡りを良くする漢方薬です。不安感や精神的な緊張にも効果があります。
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう): 気虚(気の不足)や脾気の弱りを改善し、全身の倦怠感や食欲不振に効果的です。

症状が複雑な場合や、複数の症状が重なっている場合は、漢方相談を受けることをおすすめします。ピヨの漢方では、お一人お一人の体質や症状に合わせた漢方薬のご相談を承っております。

まとめ:心と体のバランスを取り戻すために

東洋医学では、心と体は密接に繋がっていると考えます。精神的なショックが体調不良を引き起こすことも少なくありません。

この方のケースでは、愛犬を亡くした精神的ショックが心気の乱れを招き、それが肝気の流れを乱して食欲不振や下痢などの症状を引き起こしているものと考えられます。

回復への道のりは:

  1. まずは心のバランスを取り戻すこと
  2. 紹介した気功法で気の流れを整えること
  3. 医師の指示に従いながら少しずつ生活改善を進めること

焦らず、ゆっくりと自分のペースで回復を目指していきましょう。心と体は繋がっているからこそ、心のケアも体のケアと同じくらい大切です。

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ピヨ先生
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