皆さんは春菊というと、どんなイメージをお持ちでしょうか?鍋料理に欠かせない冬の野菜、独特の香りと苦みを持つ緑黄色野菜など、様々な印象があるかと思います。
実は春菊は、日本の食卓に馴染み深い野菜であるだけでなく、古くから「食べる漢方」として重宝されてきました。炒め物、サラダ、天ぷらと多彩な調理法で楽しめるこの野菜には、私たちの健康を支える素晴らしい効能が隠されているのです。
今回は、東洋医学の視点から見た春菊の効能について、わかりやすく解説していきます。日常の食事に取り入れるだけで、様々な不調を緩和できる可能性を秘めた春菊の魅力に迫ってみましょう。
春菊とは?基本情報を教えてください
春菊は東アジアで主に食用として親しまれている野菜です。その名前の由来は、春に黄色い花を咲かせ、葉の形が菊に似ていることから付けられました。
実は春菊は世界各地で栽培されていますが、食用としているのは主に東アジアだけなんです。ヨーロッパでは美しい花を鑑賞する目的で育てられ、独特の香りがあまり好まれないため食用にはあまり使われていません。
春菊は花が咲いた後でも食べることは可能ですが、ポリフェノール由来の苦味が強くなるため、菜の花のようには美味しく食べられなくなります。旬の時期に収穫したものが最も美味しいとされています。
漢方的な特徴
- 性味/帰経
- 性質:涼
- 味:甘
- 帰経:肝、心、脾、胃、肺
春菊にはどんな効能があるのですか?
春菊は漢方的に見ると「平、辛、甘」の性質を持ち、大きく分けて3つの主要な効能があります。
1. 清熱化痰(せいねつけたん)
清熱化痰とは、肺に停滞している熱を冷まし、痰を取り除く効能です。つまり春菊には、咳を止め、痰を取り除く働きがあるんですね。
私たちの呼吸では、肺が膨らむことで気道を通って肺胞に入った酸素が、肺胞の粘膜を通して血液中に入ります。そして血管内を移動する赤血球と結びついて全身を巡ります。
しかし、この流れが何らかの理由で邪魔されると、空気が逆流して咳として現れます。例えば、ストレスなどの影響で気道が狭まると、下に向かうべき気の流れが降りていけなくなり、逆流して咳となります。
また、体が浮腫みやすい方は、肺胞周辺で水分が停滞しやすくなります。すると酸素が血管内へうまく拡散できなくなり、停滞した酸素が行き場を失って出口に逆流し、咳となるのです。
春菊の持つ独特な香り成分には、自律神経に働きかけ、気の巡りを改善し、余分な水分を取り除くことで、咳や痰を解消する効果があります。
効果が期待できる症状
- 煩熱口渇(熱っぽさや喉の渇き)
- 痰熱咳(熱を伴う咳や痰)
- 胸痛
- 腸ヘルニア
2. 疏肝和胃(そかんわい)
疏肝和胃とは、滞っている肝気(かんき)を巡らせることで、胃腸の働きをゆったりさせる効能です。春菊には、食欲不振や胃もたれ、胸や脇の張った痛み、口臭に効果があります。
東洋医学では、食べ物を受け入れ、分解し、下向きに運ぶ働きを「胃気」と呼びます。これと協力して腸の蠕動運動を調整するのが「肝気」です。また、栄養を吸収して上向きに運ぶ働きを「脾気」といい、この3つが協調して働くことで、食べ物の消化・吸収・運搬が行われます。
肝気が上手く巡らなくなると、過剰なパワーでギクシャクした動きになり、脾気の働きを攻撃するようになります。すると食欲不振になったり、吸収の過程で詰まって腹痛が起きたりするのです。
春菊に含まれる香り成分「ペリルアルデヒド」は、気の巡りを良くして精神を安定させ、緊張をほぐす作用があります。これにより、肝気の過剰な攻撃による食欲不振や胃もたれを解消してくれるのです。
また、血液をサラサラにする働きもあるため、気血の巡りが改善して胸や脇の痛みを解消し、気の滞りが解消されればお腹の余分な熱も取り除かれ、口臭の改善にも役立ちます。
効果が期待できる症状
- 食欲不振
- 胃もたれ
- 胸や脇の張った痛み
- 口臭
3. 清心通腑(せいしんつうふ)
清心通腑とは、心の熱を冷まし、便通を改善する効能です。春菊には、不安感や不眠、心が落ち着かない状態や便秘の改善に効果があります。
春菊には不溶性の食物繊維が含まれているため、腸に適度な刺激を与えて便通を促し、体内の水分の巡りを改善してくれます。また、カルシウムや鉄分なども豊富に含まれています。
東洋医学では、鉄分などの重い性質を持つ成分には、興奮した気を静めて落ち着かせる働きがあると考えられています。これにより脳の余分な興奮を抑え、不安感や不眠などの解消に役立つのです。
さらに、春菊には抗酸化作用を持つβカロテンや、皮膚・粘膜を維持するビタミンC、骨や血管の健康を保つビタミンK、ナトリウムの排出を促すカリウムなども含まれています。
これらの栄養素により、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病の予防をはじめ、便秘や風邪の予防、美肌作り、アンチエイジング、がん予防なども期待できます。
効果が期待できる症状
- 不安感
- 不眠
- 心が落ち着かない状態
- 便秘
- 涼血通絡による症状(喀血、痢疾、血便、痔、血尿)
- 通乳による症状(乳汁分泌不全)
春菊を食べる際の注意点はありますか?
春菊は多くの効能を持つ素晴らしい野菜ですが、いくつか注意点もあります。
注意が必要なポイント
- 春菊には食物繊維が豊富に含まれているため、お腹の弱い方が食べすぎると下痢を引き起こす可能性があります
- 春菊アレルギーの方もいらっしゃいますので、初めて食べる際は少量から試してみることをおすすめします
- 妊娠中や授乳中の方、特定の薬を服用中の方は、大量摂取を避けた方が良い場合があります
適量を心がけ、体調に合わせて取り入れていくことが大切です。心配な方は、かかりつけの医師や漢方の専門家に相談してみましょう。
まとめ:春菊の効能と活用法
春菊は「食べる漢方」とも呼ばれる、素晴らしい効能を持つ野菜です。
主な効能
- 清熱化痰:咳や痰、胸痛などの症状を緩和
- 疏肝和胃:食欲不振、胃もたれ、胸や脇の張った痛み、口臭の改善
- 清心通腑:不安感、不眠、心の落ち着きのなさ、便秘の解消
春菊に含まれるペリルアルデヒドという香り成分は、気の巡りを良くして精神を安定させ、ストレスを緩和します。また、腸の働きを整え、胃もたれを改善する作用もあります。
血液をサラサラにして生活習慣病を予防するほか、咳を鎮める効果や美肌効果も期待できる、まさに「食薬」と呼ぶにふさわしい野菜なのです。
旬の冬には鍋料理に、春には炒め物やサラダに、天ぷらなどの揚げ物にしても美味しく食べられます。日常の食事に取り入れて、春菊の持つ素晴らしい効能を活かしてみませんか?
体質改善や不調の緩和に興味がある方は、ぜひ春菊を積極的に取り入れてみてください。心と体の両面から健康をサポートする、身近な「緑の薬膳」として活用してみましょう。
参考文献

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