
こんにちは
どうなさいましたか?

ニキビにお悩みの方から
質問をいただきましたよ
最近できたニキビが治りにくく、色々試しても逆に増えてきている…そんなお悩みはありませんか?
実は、ニキビや肌荒れの原因は、体の内側と皮膚との巡りが寸断されていることにあります。東洋医学では、皮膚は「肺気(はいき)」との関係が深いと考えられています。肺気とは、体を外敵から守るバリア機能を持つ働きのことです。
この肺気の働きが低下すると、体の内側から皮膚への栄養や潤いが届かなくなり、皮膚が孤立状態になってしまいます。その結果、皮膚の常在菌バランスが崩れ、ニキビができやすくなるのです。
今回は、そんな治りにくいニキビに効果的な漢方薬「排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)」について、中医学の視点から詳しくご説明します。
ニキビができる原因は何ですか?
ニキビなどの肌荒れになる原因は、体の内側と皮膚との巡りの悪さにあります。東洋医学では、皮膚は肺気との関係が深いと考えられていますので、肺気が不具合を起こすと肌荒れになります。
皮膚のバリア機能と肺気の関係
肺気には、体の外側からやってくる様々な邪魔物を、体の内側に侵入させないようにするためのバリアやバッファーとしての働きがあります。
皮膚の最も外側にあるのは角質層です。角質層は細胞核の抜かれた細胞が積み重なり壁のようになって体を守っていますが、体を守る壁としての役割があるため、血液は流れていません。
もし角質層に血液が流れていると、外側からの何らかの衝撃で傷ついた場合、血液の流れを通じて簡単に体の奥深くまで侵入を許してしまうからです。
そのため、角質層に栄養を与えるには、体の内側からの潤いが必要になります。
皮膚の常在菌とニキビの関係
皮膚のバリア機能として重要なのが、皮膚の常在菌の存在です。
常在菌はバイキンとして扱われがちですが、実際には空気中にいる何万もの種類の菌が体の中へ侵入することで起きる感染を防いだり、様々な物理的・化学的な外部の刺激から体の内側を守る働きをしています。
しかも、皮膚の常在菌同士でも常にバランスを保つための戦いが起こっていて、皮膚の状態が変わることで勢力争いが起こっています。
アクネ菌の働き
例えば、ニキビの原因となるアクネ菌は、皮膚の状態に問題がなければ肌を弱酸性に保つ働きがあります。それにより、皮膚で悪さをする菌の異常繁殖を抑えて、皮膚の状態を守っています。
このアクネ菌は酸素が苦手なので、酸素のある状態では死滅してしまいます。ところが、皮脂の分泌が増えたり、ターンオーバーが過剰になって毛穴が詰まると、そこで突然増殖して炎症を起こしニキビになります。
黄色ブドウ球菌の働き
また、食中毒をはじめ様々な炎症の原因ともなる黄色ブドウ球菌は、皮膚が弱酸性の状態であれば大人しくしています。しかしアルカリ性になると、突然増殖して毒素などをまき散らし始めます。
このように、皮膚が弱酸性の状態では常在菌同士がバランス良く生存していますが、アルカリ性になると突然増殖して悪さをするようになります。
肺気の働きと皮膚トラブル
これらの皮膚の常在菌に栄養を与えるためにも、体の内側から提供される潤いは不可欠です。もし、この皮膚の潤いが何らかの理由で届けられなくなると、次のような問題が起こります。
- 皮膚の乾燥が目立つようになる
- 皮膚の常在菌のバランスが崩れる
- 様々な悪さをする菌の繁殖を許してしまう
- ニキビなど肌荒れが目立つようになる
逆に、皮膚の細胞活動によって生じた不要物や、皮膚を栄養するために運ばれてきた潤いなども、流れが停滞していることで回収されずに一か所に滞ると、必要以上に分泌が過剰になってしまいます。やはり皮膚の常在菌のバランスは崩れてしまうことになります。
しかも、皮脂腺や汗腺の調節をして皮膚への潤いを調節しているのも肺気が行っています。ですので、体の内側と皮膚表面を調整する肺気との連携がうまくできなくなって、皮膚が体の内側から孤立するようになると、様々な肌のトラブルになります。
排膿散及湯はどんな漢方薬ですか?
排膿散及湯は、6種類の生薬の働きによって、停滞している気や水分の巡りを改善してくれる漢方薬です。
この漢方薬に使われている生薬は以下の通りです。
- 桔梗(ききょう): 肺気開いて気を上向きに上昇させる
- 枳実(きじつ): お腹の気や水分を冷やしながら下向きに降ろす
- 生姜(しょうきょう): お腹を温めて気や水を発散させる
- 芍薬(しゃくやく): 余分な水分を下へ引き降ろし、血液を補う
- 大棗(たいそう): 潤いと気の材料を補給する
- 甘草(かんぞう): 潤いと気の材料を補給する
これらの生薬が組み合わさることで、体の内側と皮膚との巡りを回復させる働きをします。
どうしてニキビが良くなるのですか?
排膿散及湯は、体の内側と皮膚との気や水の巡りを大きく回復させることでニキビを改善します。具体的なメカニズムを見ていきましょう。
気の上下の巡りを改善する
まず、桔梗と枳実で気を上下に巡らせます。
桔梗は、気を上向きに上昇させることで肺気の流れを良くするため、皮膚で起こっているトラブルが解消しやすくなります。
そして、枳実では、お腹の中に停滞している気や余分な水分を、やや冷やしながら動かすことで、滞って固まっている状態を砕きながら下向きに引き降ろすことで排除します。
また、枳実には、気を下向きに引き降ろすことで強力に腸管を動かしてくれる働きもあります。気の滞りによって腸管の動きが悪くなり上向き過剰になっている状態を解消してくれます。
この、桔梗の上向き、枳実の下向きの働きによって、体の内側から皮膚への流れと、皮膚から体の内側への気の流れが回復します。
水分の巡りを改善する
そこへ、生姜と芍薬によって気と水が上下に動かされます。
生姜は、お腹を温めながら、お腹の中に停滞している気や水を、やや発散させるように動かすとともに、腸管を下向きに引き降ろすことも応援してくれます。
しかも、生姜は、胃液の分泌を増加させて胃腸の蠕動運動を高めてくれますので、消化機能が高まってお腹の働きが改善します。
芍薬は、体の表層で停滞している余分な水分を、体の下の方へと引き降ろしてきて排除する働きもあります。
しかも、芍薬によって血液が補充されることで、筋肉の緊張が緩み、心も体もともに鎮静するようになります。筋肉の過度の緊張によって起こる気の滞りや、余分な水分が停滞してしまうのを防ぐことになります。
この、生姜と芍薬が共に働くことで、お腹の中の水分が上向きに、皮膚に停滞している水分が下向きに引き降ろされてきますので、体の内側から皮膚へ、皮膚表面から体の内側への水の巡りが回復します。
気と潤いの材料を補充する
そして、大棗、甘草によって綺麗な潤いと気の材料を提供するとともに、お腹の働きを高めることで、これらの働きを支えてくれます。
また、生姜、大棗、甘草の組み合わせでも、大棗、甘草によって補充した体の潤いを、生姜によって上手に利用できるようになるので、気や潤いの補充が進み、体の中心部の巡りもさらに良くなります。
全体の働きのまとめ
もう一度繰り返しますと、次のような働きが同時に起こります。
- 桔梗で気が引き上げられる
- 枳実で気が引き降ろされる
- 生姜で気や水が上向きに発散される
- 芍薬で水分が下向きに引き降ろされる
- 大棗、甘草で気や潤いの材料が補充される
これらの働きにより、大棗、甘草で補充された気や潤いが、生姜によって上向きに動かされ、桔梗によって気が引き上げられて皮膚まで届けられます。そして、芍薬によって皮膚から水分が下向きに引き降ろされ、枳実によって気が下向きに引き降ろされます。
停滞していた気や水の流れが大きく巡り出すようになり、体の内側と皮膚とのつながりが回復しますので、皮膚の孤立が解消されて、様々な皮膚のトラブルが改善されていきます。
どんなタイプの人に向いている?体質別おすすめコメント
排膿散及湯は、体の内側と皮膚との巡りが寸断されている方に向いています。
ニキビや肌荒れを寸断させてしまう理由には、次のようなものがあります。
- ストレス
- 冷え
- 貧血
- 過労
- 夜更かし
- 食事の不摂生
排膿散及湯は、身体全体の気や水の巡りを回復させてくれますので、これらの原因によるニキビや肌荒れにとても助けられます。
ただし、排膿散及湯で確かに巡りは回復しますが、冷えが強いような場合には、体を温めてくれる漢方薬や適度な運動が必要になります。
また、過労や夜更かしなどで体の潤いが過剰に消耗している場合には、潤いを補給してくれる漢方薬とともに、適度な休息と睡眠が欠かせません。
症状が複雑な場合には、排膿散及湯単独では効果が十分でない場合もあります。当店では、お一人お一人の体質や症状に合わせた漢方相談を行っていますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
今回は、ニキビや肌荒れの原因と排膿散及湯についてお話ししました。
ニキビや肌荒れの原因は、体の内側と皮膚との巡りが寸断されていることです。寸断させてしまう理由には、ストレス、冷え、貧血、過労、夜更かし、食事の不摂生など色々あります。
排膿散及湯は、身体全体の気や水の巡りを回復させてくれる漢方薬です。6種類の生薬が協力して、体の内側と皮膚とのつながりを取り戻してくれます。
ですが、薬だけでなく、生活習慣の改善に目を向けることも大切です。冷えが強い場合は適度な運動を、潤いが消耗している場合は適度な休息と睡眠を心がけてみてください。
もしニキビや肌荒れがなかなか良くならないとお悩みの方は、薬だけでなく生活習慣の改善に目を向けてみると良いかと思います。
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