ナスは私たちの食卓に欠かせない野菜の一つですが、実は古くから東洋医学では生薬としても重宝されてきました。炒めても、揚げても、漬物にしても美味しいナスですが、その効能は料理の味わい以上に深いものがあります。今回は、身近な野菜「ナス」の生薬としての一面をご紹介します。
ナスの基本情報とは?性質や帰経について
ナスは東洋医学では「涼・甘」の性質を持ち、「脾・胃・大腸」の経絡に作用するとされています。つまり、体を冷やす性質があり、味わいは甘く、特にお腹周りの機能に影響を与える食材なのです。
「秋ナスは嫁に食わすな」ということわざがあるほど美味しいナスですが、この言葉には実は二つの意味があるといわれています。一つは単に美味しいナスを嫁に与えたくないという姑の嫁いびりの意味。もう一つは、ナスには体を冷やす性質があり、皮が固くて消化に悪いため、食べ過ぎると体調を崩す恐れがあることから、嫁の健康を気遣った言葉という解釈です。
江戸時代の「和歌食物本草」にも「茄子こそ味わい甘く、寒のもの冷えたる人は食すべからず」と記されており、冷え性の方は控えるべきと注意されています。
ナスの薬効とは?4つの主な効能について
清熱活血止血 – 体の熱を取り除き、出血を止める
ナスには体の熱を冷まし、血行を改善して出血を止める効果があります。一見すると、血流を良くすることで出血が増えそうに思えますが、実はその逆。血液の流れが滞っていると、本来のルートを流れられず、圧力がかかって出血することがあります。
また、ナスには古い血液を取り除く働きもあるため、血流改善と合わせて出血を抑える効果が期待できます。さらに、血液が熱を持って激しく動くと血管を押し破って出血することがありますが、ナスの清熱作用がこれを穏やかにしてくれるのです。
消腫利尿 – むくみを取り、尿の排出を促す
ナスはむくみの改善にも効果的です。カリウムが豊富に含まれているため、体内のナトリウムの排出を促し、尿の出をよくしてくれます。
さらに、ナスに含まれるナスニンなどの成分は血管を強化する働きがあり、余分な熱や水分が体に停滞することで引き起こされる高血圧の改善にも役立つことがあります。ナスニンはナスの皮の紫色の部分に多く含まれているため、皮をむかずに食べることがおすすめです。
健脾和胃 – 消化器系の機能を整える
夏バテで食欲が落ちている時、ナスが助けになります。暑い日が続くと冷たいものが欲しくなり、エアコンの効いた部屋で食べ過ぎてしまうことがありますが、それによって自律神経が乱れ、体力を消耗して食欲が低下することも。
ナスは体を冷やしつつ余分な水分を排出し、胃腸の働きを調整してくれるため、夏バテによる食欲不振の改善を助けてくれるのです。
ナスを食べる際の注意点は?
ナスの効能は多岐にわたりますが、注意が必要な点もあります。
- 冷え性の方は要注意 – 体を冷やす性質があるため、もともと冷え性の方や、エアコンが効きすぎている環境にいる方は食べ過ぎに注意しましょう。
- むくみのタイプによっては控えめに – 利尿作用がありますが、体が冷えていることで水分が停滞しているタイプのむくみがある方は、控えめにした方が良いでしょう。
- 食べ方を工夫する – 生で食べるよりも、温かい料理に取り入れることで、冷やす作用を緩和できます。
ナスの生薬としての活用法まとめ
ナスは単なる食材ではなく、東洋医学的な観点からも優れた効能を持つ野菜です。体を冷やす性質を活かして夏バテ対策に、血行を改善する効果で出血を止め、利尿作用でむくみを取り、胃腸の機能を整えて食欲不振を改善するなど、多彩な効果が期待できます。
特に注目したいのは、ナスのヘタの部分(茄蒂)も生薬として使われてきたこと。ナスのヘタを黒焼きにして口内に塗ると、口内炎や歯槽膿漏、歯の痛みの改善に役立つとされています。例えば、ナスの黒焼きに自然塩を混ぜて歯茎をマッサージすると歯槽膿漏の改善に効果があると言われています。
ナスニンを始めとするナスの成分には活性酸素の働きを抑え、がんや動脈硬化の予防効果も期待されています。体質や季節に合わせて上手に取り入れ、ナスの持つ生薬としての力を日常の健康維持に活かしましょう。
参考文献

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