こんにちは、漢方の世界へようこそ!今回は日本人にもなじみ深い生薬「葛根(かっこん)」について詳しくご紹介します。
葛根は風邪の初期症状に効く「葛根湯」の主成分として知られていますが、実はそれだけではない多彩な効能を持っています。また、食品として親しまれる「葛粉(くずこ)」の原料でもあり、私たちの生活に深く根ざした貴重な自然の恵みです。
この記事では、葛根の基本情報から薬効、使用上の注意点まで、わかりやすくQ&A形式でお伝えします。漢方薬や自然療法に興味をお持ちの方はもちろん、健康維持に関心のある方にとっても参考になる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
葛根とは?基本情報を教えてください
葛根は、マメ科のつる性植物「クズ(葛)」の根から採取される生薬です。日本や中国を原産としており、古くから東洋医学において重要な位置を占めてきました。
性味・帰経
葛根の性質と特徴を漢方医学の視点から見てみましょう:
- 性味:涼、辛、甘
- 帰経:脾、胃
主な成分
葛根には以下のような有効成分が含まれています:
- フラボン類(プエラリン、ダイゼインなど)
- デンプン質
- イソフラボン誘導体(女性ホルモンに似た働き)
- サポニン類(10種類以上)
これらの成分が複合的に作用することで、様々な薬効を発揮します。特にイソフラボン類は、近年では健康食品としても注目されています。
葛根にはどのような薬効がありますか?
葛根の薬効は非常に幅広く、東洋医学の理論に基づいた作用と、現代医学での研究成果の両面から理解することができます。
東洋医学での主な働き
- 解肌退熱(げきたいねつ) 風邪などで外邪が体表に侵入した際の発熱・無汗・頭痛・首や背中のこわばりなどの症状を改善します。特に首や肩のこりに効果的です。
- 透疹(とうしん) 麻疹(はしか)や風疹などの発疹性疾患の「発疹を促す」作用があります。発疹がうまく出ないときに、体内の邪気を表面に出すのを助けます。
- 生津止渇(せいしんしかつ) 体内の水分を潤し、のどの渇きを和らげる効果があります。熱による口渇や糖尿の症状にも用いられます。
- 昇陽止瀉(しょうようししゃ) 下痢症状を改善する働きがあります。特に熱性の下痢や脾虚(消化機能の低下)による下痢に効果的です。
現代医学での研究成果
- 解熱作用:動物実験では強力な解熱効果が確認されています。
- 冠状動脈拡張作用:心臓の血管を広げ、血流を改善する効果があります。
- 脳血流量増加効果:脳の血管を拡張し、脳への血流を増やします。
- 筋肉の痙攣緩和:筋肉のこわばりや痙攣を緩める作用があります。
これらの作用により、風邪の初期症状だけでなく、高血圧や冠動脈疾患、突発性難聴などにも応用されています。
葛根はどのような症状や疾患に使われますか?
葛根は様々な症状や疾患に対して用いられます。主な応用例をご紹介しましょう。
1. 風邪の初期症状
最も有名な使用法は「葛根湯」としての応用です。特に以下のような症状に適しています:
- 首や肩のこり・痛み(葛根+シナモンの組み合わせが効果的)
- 発熱、のどの痛み(葛粉+生姜で使用)
- 頭痛、悪寒
2. 発疹性疾患
麻疹や風疹などの発疹がうまく出ない場合に用いられます。
3. 熱による口渇
発熱時の喉の渇きや、糖尿病などによる強い口渇感を和らげるのに役立ちます。
4. 下痢症状
- 熱性の下痢:熱盛の下痢に用いられます。
- 脾虚による下痢:泥状~水様性の下痢に効果的です。
5. 現代医学での応用
- 高血圧症:頭痛、ふらつき、耳鳴り、しびれなどの症状改善に効果があります。
- 狭心症など冠動脈疾患:冠状動脈を拡張し、狭心痛を緩和します。
- 突発性難聴:内耳の血管痙攣による感音性難聴の初期に効果を示すことがあります。
葛根を使用する際の注意点は何ですか?
葛根は安全性の高い生薬ですが、以下のような注意点があります。
禁忌・使用上の注意
- 表虚多汗の状態では使用を避けましょう。 表虚とは体表の防御機能が弱まっている状態で、自然と汗が出やすい体質の方には不向きです。
- 発疹が十分に出た後は使用しないようにしましょう。 透疹作用があるため、すでに発疹が出ている場合には不要です。
- 肝陽上亢(かんようじょうこう)の体質の方は少なめに使用しましょう。 肝陽上亢とは潤いの不足により肝の機能が亢進し、顔面紅潮、めまい、頭痛などの症状がある状態です。
- 妊娠中の方は、イソフラボン類は女性ホルモン様作用があるため、過剰摂取は避けましょう。
葛粉(くずこ)について教えてください
葛根から抽出されるデンプン質である「葛粉」は、日本の伝統的な食材として広く親しまれています。
葛粉の特徴と使い方
- 独特の食感:なめらかでとろみのある質感が特徴です。
- 料理への活用:とろみ付けやデザート作りに重宝されます。
- 代表的な料理:葛湯、葛餅、葛切り、とろろ汁など。
葛粉の健康効果
葛粉にも葛根由来の成分が含まれており、以下のような健康効果が期待されています:
- ホルモンバランスの調整
- 抗酸化作用
- 血流改善効果
- 整腸作用
まとめ:葛根の魅力と活用法
葛根は東洋医学の宝庫であり、現代医学でもその効果が認められつつある貴重な生薬です。風邪の初期症状から高血圧、冠動脈疾患まで幅広い症状に対応できる優れた特性を持っています。
葛根の魅力ポイント
- 多彩な薬効:解熱、透疹、生津、止瀉など幅広い作用を持ちます。
- 豊富な栄養成分:イソフラボン類やサポニンなど、体に有益な成分を含んでいます。
- 日常生活での活用:葛粉として食材にも利用でき、親しみやすい生薬です。
上手な活用のために
体質や症状に合わせた適切な使用法で、葛根の恵みを最大限に活かしましょう。
もし風邪の初期症状や筋肉のこりを感じたら、葛根湯を試してみるのも良いでしょう。また、日常的には葛粉を料理に取り入れることで、穏やかな健康効果を期待できます。
東洋医学の知恵と現代科学の知見を組み合わせることで、葛根の持つ素晴らしい力を実感してみてください。
参考文献

ご自分の体質にあった
漢方薬を試してみたい方は
ピヨの漢方の漢方相談を
ご利用ください。
