
こんにちは
どうなさいましたか?

耳鳴りにお悩みの方から
質問をいただきましたよ
天気が変わると体調も変わる…そんな経験はありませんか?
特に梅雨や台風の季節、気圧の変化によって耳鳴りやめまい、頭痛に悩まされる方は少なくありません。これらの症状は単なる偶然ではなく、東洋医学的に見れば明確なメカニズムがあるのです。
今回は、一昨年に回転性めまいで入院された53歳女性の貴重な体験談をもとに、気圧変化による体調不良の原因と対策について東洋医学の視点から解説します。
この方の体質的特徴とお悩みの症状
外見的な特徴とお悩みの症状
- 53歳・女性
- 身長:165cm
- 体重:62kg
- BMI:22.7(標準)
主な症状:
- 回転性めまいの既往歴(一昨年9月に入院)
- 気圧変化で頭の中がぐわぐわする
- 気圧変化で耳鳴りが悪化
- 気圧変化で頭痛がする
- MRI検査では異常なし
体重は標準ですが、筋肉質というよりはやや浮腫みやすい体質と推測されます。顔色や舌の色が白っぽく、舌は厚ぼったく歯の跡があり、舌苔(ぜったい:舌の表面を覆う薄い膜)は白く水っぽい状態です。
これらの特徴から、体が冷えていて、水を巡らせる力が不足していることがわかります。舌の周辺では水分が過剰に溜まり、気が不足してむくんだ状態になっています。
どうして気圧の変化で耳鳴り・めまい・頭痛が起こるの?
まず、これらの症状がなぜ起こるのか、東洋医学の基本的な考え方を簡単に説明しましょう。
めまいの原因
脳が正常に機能するためには、気や血液による栄養の補給が欠かせません。この気血の正常な流れが阻害されると、脳への栄養供給が不足し、めまいとして現れます。
これには主に2つのパターンがあります:
- 体の働きが低下して、脳へ気血を十分に届けられない場合
- 逆に、気血が上方で充満しすぎて、正常な流れが滞っている場合
耳鳴りの原因
耳の機能には、鼓膜や耳小骨(耳の中にある小さな骨)の柔軟な動きと、それを支える「気」が必要です。耳鳴りは、耳の中で活動が過剰になっている状態で、気の働きが過剰になり、それを調整する潤いが不足していると考えられます。
頭痛の原因
東洋医学では、痛みは「通れなくなるから痛む」と考えます。頭痛は、頭部において何らかの理由で気血の流れが妨げられた状態です。
つまり、めまい・耳鳴り・頭痛には共通点があります。すべて頭部で起こり、何らかの原因で流れが阻害されているのです。
気圧変化と雨の日に症状が悪化するのはなぜ?
体調悪化のきっかけとなるのが「気圧の変化」と「雨の日」という点が重要です。雨の日の特徴として、湿度が高くなることと気温が低くなることが挙げられます。
これらは両方とも気の働きを低下させ、体内の気血の動きを停滞させます。その結果、体の中では水分が溜まりやすくなるのです。
さらに、この方は「喉が渇いて水が飲みたい」とのことで、水分摂取量も多め。尿の回数や量に問題はないものの、余分な水分が体内に残っている可能性があります。雨の日にはこの水分の巡りに負担がかかり、頭部への気血の流れが阻害されていると考えられます。
この浮腫みやすい体質を裏付けるように、次のような症状も見られます:
- 動くと汗が出やすい
- 自然に汗が出る
- 手足が冷える
- 寒がり
- 口が粘る
- 頭が重く感じる
- おりものが多い
体の内側と外側のアンバランス
興味深いことに、皮膚や髪の毛は乾燥気味で、次のような症状も見られます:
- 抜け毛が多い
- 唇が乾燥しやすい
- 爪が脆い
- 筋肉がつる
- 目が疲れやすく乾燥する
これは体の表面で起こっている状態です。つまり、体の内側では水分が過剰なのに、体の表面では乾燥している状態。体の潤いが表面まできちんと届いていないのです。
顔色や舌の色が白い、髪や皮膚の乾燥、抜け毛、夢をよく見る、爪が脆い、筋肉がつる、目の乾燥といった症状から、体の表面では潤い(特に血)が不足していることがわかります。
髪の毛の健康には毛母細胞への血液供給が不可欠ですが、浮腫んだ状態では植物の根腐れのように、必要な栄養が届きにくくなります。
水分の巡りを妨げる根本的な原因
体内の水分を巡らせるには、次の要素が協調して働く必要があります:
- 体の芯の熱である「腎陽」
- お腹の働きである「脾気」
- 呼吸と関係する「肺気」
- 体に気血を巡らせる「肝気」
この方の場合、寒がり、手足の冷え、顔色・舌の色の白さ、夜間尿の多さから、腎陽が冷えていると考えられます。夜間尿の量が多いのは、体が制御できない水分を危険と判断して排出しようとしているためです。
食欲に問題はなく、BMIも標準、便の硬さも普通で尿もきちんと排出されているため、脾気の基本機能には大きな問題はないようです。
しかし、次のような症状があります:
- 食べると腹が張る
- 胃がもたれる
- 立ちくらみしやすい
- 腹が張って苦しい
- ゲップやガスが出ると楽になる
これらは、お腹の働き(脾気)と気血を巡らせる働き(肝気)がうまく連携できていない状態です。食べ物は脾気によって消化吸収され、肝気によって運ばれますが、連携不全により食べ物が停滞し、張りやもたれ、ガスの充満を引き起こします。
症状の全体像と原因のまとめ
この方の症状をまとめると:
- 元々の体の冷えが土台にある
- 栄養を与える血の不足
- 余分な水分の停滞
- 気の滞りによる中心部での気血の停滞
さらに雨の日の低温と湿度により、気の動きがさらに阻害され、水の動きが停滞します。その結果、必要な気血が頭部に届きにくくなります。
加えて、気の滞りによって生じた余分な熱が上方へ押し上がり、肩こり、喉の渇き、頭のぐわぐわ感、耳鳴り、頭痛などを引き起こします。血などの必要な潤いが足りないことで、気の滞りによる熱がさらに生じやすくなる悪循環が起きているのです。
ではこの方に、おススメの自然療法を教えて下さい
水分代謝を改善するため、次の4つのアプローチで対策しましょう:
- 体を温める
- 余分な水分を取り除く
- 気の巡りを改善する
- 血を補充する
1. 体を温める対策
- 今行っているラジオ体操とヨガを継続する
- 体を温める食材を取り入れる(エビ、クルミ、鮭など)
- 外からの温熱療法を行う(コンニャク湿布、足湯など)
2. 気の滞りを解消する
この方は「怒りっぽい」との記載があり、ストレスによる気の滞りがあると推測されます。気の滞りによる熱が喉の渇きを生じ、余計な水分摂取や冷たい飲み物の摂取につながり、悪循環を作っている可能性があります。
気の巡りを良くし、余分な水分を取り除く食材:
- 余分な水分を取り除く:黒豆、大豆、トウモロコシのひげ
- 気の巡りを改善する:タマネギ、チンゲンサイ、シソの茎
3. 血の不足を改善する
血液の材料となる食材を適切に摂取しましょう:
- 人参、ホウレンソウ、カツオなど
- 無理に食べるのではなく、空腹感を感じながら取り入れると効果的
血の不足自体が冷えの原因になることもあります。
4. マッサージと姿勢の改善
- 首や肩を中心に全身をマッサージして筋肉のコリをほぐす
- 歯の噛みしめや喉を締める無意識の癖がある場合は意識して緩める
- 胸椎10番から腰椎2番までの部分をテニスボールなどで押してマッサージする(腎臓の働きに影響し、水の巡りを改善)
効果的なセルフマッサージの例
- 首:両手の指でゆっくり揉む
- 肩:適度にストレッチする
- 顎周囲:丁寧に揉みほぐす
東洋医学的に見た気圧変化による症状の漢方薬
気圧変化による耳鳴り・めまい・頭痛に効果が期待できる代表的な漢方薬をご紹介します。ただし、これはあくまで一般的な体質改善のための情報です。実際の症状が複雑な場合には、単独では効果が十分でないことがあります。
- 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):水分代謝を改善し、めまいや頭痛に効果が期待できる漢方薬。特に気圧変化に敏感で、体内の水分バランスが崩れやすい方に適しています。
- 釣藤散(ちょうとうさん):頭痛やめまい、耳鳴りなどの頭部症状に広く用いられる漢方薬。特に血の巡りが悪く、頭部への血流が不足している方に適しています。
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):気の滞りを改善し、精神的な緊張からくる自律神経の乱れを整える漢方薬。ストレスから来る頭痛や不眠にも効果的です。
当店(ピヨの漢方)では、このような症状に対する漢方相談も行っておりますので、お気軽にご相談ください。
まとめ:気圧変化による不調を和らげるために
気圧変化による耳鳴り・めまい・頭痛は、東洋医学的に見れば気血の流れの停滞や水分代謝の乱れが原因です。特に体質的に冷えや水の巡りが悪い方は影響を受けやすくなります。
改善のポイントは:
- 体を温めること
- 余分な水分を排出すること
- 気の巡りを良くすること
- 血の不足を補うこと
自然療法を試す際は、「これは心地がいい」と感じるものを選んでください。体に合っているものは体をリラックスさせ気が巡り「ホカホカ」してきますが、合わないものはどんなに良質でも体が緊張してしまい効果が出にくくなります。
気持ちの良い状態を感じられることを目標に、ご自身に合った対策を見つけていきましょう。
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