牡蠣は私たちの食卓に彩りを与えるだけでなく、東洋医学の観点からも非常に価値のある食材です。焼いても、フライにしても、鍋にしても美味しい牡蠣には、実は多くの健康効果が隠されています。「海のミルク」とも呼ばれるこの栄養豊富な食材は、ただ美味しいだけでなく、私たちの心と体のバランスを整える力を持っています。
今回は東洋医学の視点から見た牡蠣の驚くべき効能と、現代栄養学からも裏付けられるその価値について詳しく解説していきます。ほてりや不眠にお悩みの方、ストレスを感じやすい方は、ぜひ参考にしてみてください。
牡蠣とは?基本情報を教えてください
牡蠣は古くから世界中で食されてきた海の幸で、「海のミルク」という美しい別名を持っています。この呼び名は、真牡蠣の身が乳白色をしていることに由来すると言われています。
牡蠣の名前の由来には「かき落としたから」「かき集めたから」などの説があります。また漢字の「牡蠣」については、中国では牡蠣にはオスしかいないと考えられていたため、「牡」が付いてそのまま伝わったという説があります。
牡蠣の東洋医学的性質
- 性味:平、甘、鹹(かん)
- 帰経:肝、腎
含有する主な栄養素
- グリコーゲン
- 良質なタンパク質
- 豊富なミネラル(亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄分)
- タウリン
- 各種アミノ酸
これらの栄養素が相互に作用し合うことで、牡蠣は単なる美味しい食材を超えた健康効果をもたらしてくれるのです。
牡蠣にはどんな薬効がありますか?
1. 滋陰養血(じいんようけつ)の効果
滋陰養血とは、体の潤いを補充して体液を増やし、血液を養う効果のことです。牡蠣にはのぼせやほてりを解消する働きがあります。
東洋医学では、体の中の水分は「腎陰」と呼ばれる体の基になる水分と、飲食物から摂り入れた水分が、「腎陽」と呼ばれる体の熱源によって温められることで全身を巡っていると考えられています。
これをお風呂に例えると、適量の水と適度な火力があってこそ、ちょうど良い湯加減のお風呂になる状態です。つまり、潤いの基となる腎陰と、体の熱源となる腎陽がバランスを取りながら変化していくことで、体は健康な状態を保つことができます。
ところが潤いが不足すると、相対的に熱が強くなり、体に熱感を生じることがあります。これは体温自体は高くなくても、冷却水としての体液が不足しているため熱を感じるようになるのです。
牡蠣は体の潤いを補充してくれますので、体の中の熱と潤いのバランスが改善し、ほてりやのぼせなどが和らぎます。
滋陰養血による効果
- のぼせの改善
- 顔のほてりの軽減
- 寝汗の減少
- 心悸亢進(どきどき)の緩和
- 空咳(からせき)の改善
- 消渇(糖尿病ののどの渇き)の軽減
2. 寧心安神(ねいしんあんじん)の効果
寧心安神とは、心の状態を穏やかにする効果のことです。牡蠣は、イライラや不安、憂鬱を解消する効果があります。
東洋医学では、精神活動をコントロールしている働きを「心気」と言い、この心気の機能が正常で、気血も満ち盛んに巡っていれば、意識ははっきりとして思考も穏やかになると考えています。
牡蠣には神経の興奮を抑え、神経伝達を正常にさせるマグネシウムが含まれていますので、イライラする精神状態が和らいで眠りにつきやすくなります。
さらに、牡蠣には鉄分も多く含まれているため、貧血解消にも役立ち、それによっても不眠や不安感の改善に効果があります。東洋医学では、鉄分などの重い性質を持つ生薬類には、興奮した気を静めて落ち着かせる働きがあると考えられています。
寧心安神による効果
- 精神の安定
- 不眠の改善
- 不安感の軽減
- イライラの解消
- 憂鬱な気分の改善
- 心神不安の緩和
3. 清熱解毒(せいねつげどく)の効果
牡蠣には解毒作用もあり、タウリンの含有によって肝臓の解毒能力を強化します。
清熱解毒による効果
- 丹毒(皮膚の化膿)の改善
- 甲状腺腫大の緩和
- 瘰癧(るいれき:リンパ節の腫れ)の軽減
- 皮膚湿疹の緩和による美肌効果
4. その他の健康効果
牡蠣に含まれる栄養素による現代医学的な効果も注目されています。
- 血圧調整:タウリンによる高血圧予防
- 血糖値調整:インスリン分泌促進による糖尿病予防
- コレステロール低減:血中脂質の減少
- 免疫力向上:亜鉛やその他ミネラル摂取による免疫機能強化
牡蠣の摂取で注意すべき点は何ですか?
牡蠣は健康に良い食材ですが、いくつかの注意点もあります。
摂取における注意点
- 食中毒のリスク:「花見過ぎたら牡蠣食うな」ということわざがあるほど、特に暖かい季節には注意が必要です
- アレルギーの可能性:牡蠣アレルギーを持つ方は摂取を避けてください
- 調理法の選択:生食は新鮮なものを選び、加熱調理がより安全です
- 適量の摂取:どんな良い食材も食べ過ぎには注意しましょう
牡蠣殻の薬用について
漢方では牡蠣の殻を「牡蛎(ボレイ)」として薬用に用いることがあります。
- 生の牡蠣殻:心を落ち着かせる作用や硬結を砕く作用が強い
- 焼いた牡蠣殻:過剰な汗や不正出血などを止める作用が強くなる
まとめ:牡蠣の驚くべき健康パワー
牡蠣は単なる美味しい食材ではなく、東洋医学的にも現代栄養学的にも価値ある「海のミルク」です。
牡蠣の主な効果
- 体を潤して血を補い、心を落ち着かせる作用
- イライラや不安感、憂鬱を解消する効果
- ストレスに負けない強い心身をつくる作用
- 亜鉛、マグネシウム、鉄分などの豊富なミネラルによる疲労回復効果
- 肝機能向上と解毒促進による美肌効果
- タウリンによる高血圧予防効果
適切に摂取することで、これらの恩恵を受けることができますが、食中毒やアレルギーのリスクにも注意しながら、上手に取り入れていきましょう。旬の牡蠣を味わいながら、その健康効果も一緒に享受してみてはいかがでしょうか?
参考文献

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