皆さんのキッチンにもよく登場する蕪(かぶ)。その白くつやのある見た目と爽やかな風味は、日本の食卓に欠かせない存在ですね。しかし、この身近な野菜が実は古来から東洋医学で重要な生薬として扱われてきたことをご存知でしょうか?
蕪(かぶ)は、アブラナ科の根菜で、その歴史は古代から続いています。原産地はヨーロッパや中央アジアとされ、古代ギリシャやローマでも栽培されていた歴史ある野菜です。
日本には弥生時代に伝わったとされ、奈良時代には既に重要な作物として扱われていました。実際、日本書紀には持統天皇が蕪の栽培を奨励した記録が残されています。
今回は、私たちの健康をサポートしてくれる蕪の薬効や使い方について、東洋医学の観点からわかりやすくQ&A形式でご紹介します。健康維持や体調管理に役立つ知識として、ぜひ日々の食生活に取り入れてみてください。
蕪(かぶ)とは?基本情報を教えてください
興味深いことに、日本では関ヶ原を境に東日本と西日本で栽培される蕪の系統が異なります。東日本ではヨーロッパ経由で伝わった洋種系が、西日本では中国経由で伝わった和種系が主に栽培されているのです。
性味/帰経
- 性味:平、辛、甘、苦
- 帰経:心、肺、脾、胃
薬膳では、根だけでなく葉も薬効があるとされ、様々に用いられてきました。
蕪にはどのような薬効があるのですか?
蕪には主に二つの重要な薬効があります。一つは「下気寬中(げきかんちゅう)」、もう一つは「清熱利湿(せいねつりしつ)」という働きです。これらは東洋医学的な考え方に基づいていますが、現代医学からみても理にかなった効果といえます。
1. 下気寬中(げきかんちゅう)の効果
これは気の流れを下げて、中焦(胃腸)の働きを整える効果を指します。具体的には次のような症状に効果があります:
- 消化不良の改善
- 胃腹部の張りや満腹感の軽減
- げっぷの軽減
- 吐き気の緩和
蕪に含まれるアミラーゼという消化酵素が、この効果をもたらす一因と考えられています。胸や腹部が冷えることで起こる痛みを、気を巡らせて緩和する働きも持っています。
2. 清熱利湿(せいねつりしつ)の効果
体内の余分な熱や湿を取り除く効果を指します:
- 多汗の調整
- ほてりの緩和
- 黄疸の改善
- 消渇(のどの渇き)の軽減
頭に昇った「気」を降ろす作用もあるため、のぼせやイライラ、頭痛、熱を持った腫れ物などの改善にも効果が期待できます。
また、現代の研究では蕪に含まれる成分にがん抑制効果や動脈硬化予防効果が期待されています。葉の部分もビタミンCが豊富で、栄養価が高いことがわかっています。
蕪はどのように活用すればよいですか?応用例を教えてください
蕪は様々な調理法で活用でき、その薬効を生かした食べ方もあります。以下に具体的な応用例をご紹介します。
日常の活用法
蕪は生でサラダとして食べるほか、煮物や漬物、炒め物など多彩な料理に利用できます。葉の部分も栄養豊富なので、さっと茹でて刻み、冷凍保存しておくと便利です。後日の炒め物やスープの具材として活用できますよ。
春の七草の一つとして知られる「すずな」は実は蕪のことで、昔から新年の無病息災を願って食べられてきました。日本人の食文化に深く根付いている野菜なのです。
蕪を使用する際の注意点はありますか?
蕪は多くの人にとって安全な食材ですが、調理法や保存方法、また体質によっては注意が必要な点もあります。
調理上の注意点
- 葉と根は別々に調理するのがおすすめです(葉は根より早く火が通るため)
- 薬効を最大限に生かすには、根の皮近くにも栄養素が多いので、皮はむき過ぎないようにするとよいでしょう
体質による注意点
東洋医学的に、極度に「気虚」(体力が極端に弱っている状態)の方は、消化力が弱まっている場合があるため、生で大量に摂取するのは控えめにした方がよいでしょう。
また、アブラナ科野菜にアレルギーのある方は、蕪の摂取に注意が必要です。不安な場合は、医師や栄養士に相談することをおすすめします。
まとめ:蕪の魅力と活用法
蕪は私たちの身近にある野菜でありながら、東洋医学的にも現代栄養学的にも優れた効能を持つ食材です。消化を助けるアミラーゼを多く含み、体内の余分な熱を冷まし、湿を取り除く効果があります。
蕪の主な効能まとめ
- 消化促進と胃腸の調子を整える
- 体の余分な熱や湿を取り除く
- 便秘の改善に役立つ
- がん抑制や動脈硬化予防の可能性
- 頭に昇った「気」を降ろし、イライラや頭痛を緩和
蕪は料理の幅も広く、生食から煮物、漬物まで様々な形で楽しめます。その薬効を生かすためには、他の食材との組み合わせも工夫してみましょう。
日本の食文化に古くから根付いている蕪は、季節の変わり目や体調を整えたいときこそ積極的に取り入れたい野菜です。ぜひ毎日の食卓に取り入れて、その効能を体感してみてください。
伝統的な知恵と現代の栄養学の両面から見直された蕪の魅力を、日々の健康維持にお役立ていただければ幸いです。
参考文献

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