
こんにちは
どうなさいましたか?

咳にお悩みの方から
質問をいただきましたよ
鼻づまりや鼻水、そして風邪を引くたびに長引く咳でお悩みの方は少なくありません。特に副鼻腔炎や後鼻漏を抱える方にとって、一度風邪をひくと咳が何週間も続くことがあり、日常生活に大きな支障をきたすことも。
なぜこのような症状が起こるのでしょうか?そして、どのように改善していけばよいのでしょうか?
今回は、28歳男性の方からお寄せいただいた体験談をもとに、東洋医学の観点から副鼻腔炎や後鼻漏、そして止まらない咳の原因と対策法について詳しく解説していきます。
この方はどんな症状でお悩みなのでしょうか?
まずはこの方の外見的な特徴とお悩みの症状をご紹介します。
外見的な特徴とお悩みの症状
- 28歳・男性
- 身長:177cm
- 体重:68kg
- BMI:21.71(標準範囲内)
主な症状:
- 副鼻腔炎
- 鼻炎
- アレルギー性鼻炎
- 後鼻漏
- 風邪をひくと咳が止まらない
顔色は黄色みが強く、皮膚や髪の毛は乾燥気味です。舌の形は厚ぼったく、色は白で水っぽい状態。舌苔(ぜったい:舌の表面に付着する白っぽい膜)は部分的に剥げており、舌の裏の血管は細いながらも良く見える状態となっています。
鼻の仕組みと副鼻腔炎が起こる原因とは?
副鼻腔炎の原因を理解するためには、まず鼻の構造と働きを知ることが大切です。
鼻の中には「鼻腔」と呼ばれる空洞があり、その奥には「副鼻腔」と呼ばれる8つの空洞が目や鼻の周囲の骨の中に広がっています。副鼻腔はそれぞれが鼻腔との間に小さな穴で繋がっており、通常はそこから空気や鼻汁が出入りしています。
鼻の働きは、単に呼吸の通り道となるだけではありません。実は以下のような重要な機能も担っているのです:
- 空気中のゴミやチリを取り除くフィルター機能
- 通過する空気に適度な温度と湿度を与える加湿器のような働き
- これらの機能により、肺への直接的な刺激を軽減
例えば、呼吸により体内に入ってきた異物を排出するために、鼻や喉の粘膜から分泌される粘液が異物を絡め取り、線毛運動(粘膜表面の微細な毛の動き)によって外側へ排除しています。
しかし、以下のような状況では鼻の防御機能が低下してしまいます:
- 空気が乾燥しすぎると粘膜も乾燥
- 冷たい空気で鼻粘膜が冷やされ血流が悪化
- 線毛運動による排除機能の低下
また、肺は乾燥した空気や冷たい空気が急激に入ると、呼吸のためのガス交換がうまくいかなくなり、空気が逆流して咳が出やすくなります。
後鼻漏はなぜ起こるのか?
鼻で匂いを感じるのは、鼻に入ってきた匂いの物質が鼻の粘膜に溶け込み、その情報が脳へ送られることで機能しています。そのため、鼻の粘膜はある程度湿っている必要があり、生理的に常に水分が補給されるようになっています。
しかし、鼻の周辺において水分の巡りが何らかの理由で停滞すると:
- 鼻の粘膜が浮腫んで腫れる
- 鼻腔と副鼻腔を繋ぐ小さな穴が塞がる
- 副鼻腔内に鼻汁や膿が溜まる
実は鼻からは1日に数リットルもの鼻水が分泌されていますが、そのほとんどは無意識のうちに喉の方へ流れ、唾液と一緒に消化管へと排泄されています。しかし、様々な原因で鼻周辺の水の巡りが悪くなると鼻水が停滞し、それを意識するようになった状態が後鼻漏なのです。
この方の体質の特徴は?
この方の症状から、体質の特徴を探ってみましょう。
顔色が黄色みを帯びている、手のひらに汗をかく、手足が冷える、食べると胃がもたれる、大便が軟らかすぎるなどの症状から、熱の不足が背景にあることでお腹の働きが弱っている可能性があります。
皮膚の色は、血管内を流れる血液の量と流れの状態に大きく影響されます。例えば、興奮したり恥ずかしいと感じたりすると心臓の拍動が活発になり、全身の血液循環が良くなります。すると顔の皮膚の下の毛細血管にも多くの血液が流れ、赤みが増します。
特に顔は毛細血管の密度が高く、頬の血管はお腹と比べて5倍もの毛細血管が通っているため、血液の流れが顕著に表れる部位です。
しかし、顔は体の中で最も高い位置にあるため、そこに血液を運び上げるには相当なエネルギーが必要です。血液を上方に運んだり、内臓を正しい位置に保持するには、お腹と関係の深い脾気(ひき:東洋医学で消化機能を司るエネルギー)の働きが重要です。
この脾気の働きが低下すると:
- 血液を持ち上げられなくなり、顔色に黄色みが目立つ
- 内臓の位置を保持できなくなり、胃下垂などの症状が現れる
- 消化・吸収した栄養を上方へ運べなくなり、胃もたれが起きる
- 血液が上方に運ばれにくくなり、髪や皮膚の乾燥が起こる
ではなぜ風邪をひくと咳が止まらないのか?
この方の場合、単にお腹の働きが弱いだけではなく、体が必要とする以上の飲食物の影響もあるように見受けられます。BMIは正常で、全身の倦怠感や無力感もなく、食欲不振でもないようです。
しかし、喉の渇きを訴え、水分摂取量も多いと思われますが、舌の状態から見て、体全体ではなくお腹の中に余分な水分が充満している状態と考えられます。
また、気(東洋医学でのエネルギーの流れ)の面でも問題があるようです:
- 食べると腹が張りやすい
- 喉に何かが引っかかる感じがする
これらの症状は、お腹の中心部に気の滞りがあることを示しています。気の滞りにより喉の周辺の水も停滞し、喉に異物感を生じさせます。さらに、気の滞りで熱がこもることで喉の渇きが生じ、過剰な水分摂取につながっている可能性があります。
こうした状態で風邪をひくと、体は外からの邪気(病原体など)を追い払うために内側から外側へ大量の気を送り出します。この外向きの気の流れに、もともと上昇過剰の気が巻き込まれて内側に戻れなくなり、咳が止まらない状態になると考えられます。
また、副鼻腔炎により副鼻腔内で細菌が繁殖し、炎症を起こして粘液分泌が増加します。この細菌を含んだ粘液が後鼻漏としてのどへ流れ落ち、のどの粘膜を刺激することで咳になることもあります。
ではこの方におススメの自然療法を教えて下さい
この方の症状改善には、以下のような自然療法が効果的と考えられます:
1. 水分摂取の工夫
大便が軟らかすぎるという症状から、過剰な水分摂取が考えられます。喉の渇きに応じて水分を摂るのは問題ありませんが、一気にがぶ飲みせず、少量ずつこまめに摂取することをおすすめします。
具体的には:
- 喉の渇きを癒す程度に少し飲む
- 少し時間をおいて、まだ渇きがあれば再度少量摂取
- こまめな水分補給を心がける
2. 食べ方の改善
お腹に余分な負担をかけないよう、食事の取り方も工夫しましょう:
- 一気に食べず、よく噛んで食べる
- 消化に時間がかかる食べ物は控えめに
- 冷たい食べ物や飲み物を避ける
東洋医学では、鼻とお腹の関連が深いと考えられています。冷たい飲食物でお腹が冷えると、鼻の水の巡りに影響が出て、花粉症やアレルギー性鼻炎の原因となることがあります。
実際、鼻の症状を抱える子供は牛乳やジュース類を多く飲み、大人はお茶やコーヒー、ビールなどを好む傾向があります。体質の背景に冷えが隠れているようですので、体を冷やす飲食物は控えることも大切です。
3. 適度な運動の実践
気血の巡りやお腹の働きを高めるために、適度な運動を心がけましょう。体を動かすことでストレス解消にもなり、気の滞りも解消されます。それが鼻周辺の巡りの改善につながります。
無理のない範囲で継続できる運動を選び、定期的に実践することをおすすめします。
漢方薬による対策
体質改善には漢方薬も効果的です。ただし、この方個人に合う漢方薬ではなく、一般的に副鼻腔炎や後鼻漏の改善に効果が期待できる漢方薬をいくつかご紹介します:
- 辛夷清肺湯(しんいせいはいとう):副鼻腔炎や蓄膿症に効果的で、鼻づまりや膿性鼻汁の改善に役立ちます。
- 銀翹散(ぎんぎょうさん):発熱による喉の痛みや咳などの風邪症状に効果があります。
- 麦門冬湯(ばくもんどうとう):乾いた咳や喉の渇きに効果的で、気道の炎症を鎮める作用があります。
これらの漢方薬は症状の一部に対応するものですが、症状が複雑な場合には単独では効果が不十分なこともあります。ピヨの漢方では個人の体質や症状に合わせた漢方相談も行っていますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
副鼻腔炎や後鼻漏、そして風邪の際に止まらない咳の原因は、東洋医学的に見ると「気・血・水」の巡りの乱れにあります。特にお腹の働きの低下と余分な水分の停滞が、鼻周辺の症状を引き起こしていると考えられます。
改善のためには:
- 水分摂取を一気ではなく少量ずつ
- 食べ物はよく噛んでゆっくり食べる
- 体を冷やす飲食物を控える
- 適度な運動で全身の気血の巡りを改善する
これらの自然療法を継続的に実践することで、症状の改善が期待できます。体質改善は一朝一夕にはいきませんが、毎日の小さな習慣の積み重ねが大きな変化をもたらします。
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