
こんにちは
どうなさいましたか?

夏バテや下痢にお悩みの方から
質問をいただきましたよ
うだるような暑さが続く毎日、冷たいお茶をがぶ飲みしたり、アイスを食べたりしていませんか?
クーラーの効いた部屋で過ごす時間も長くなりますね。そんな生活が続くと、急にお腹の調子が悪くなったり、下痢や吐き気に悩まされることがあります。
実はこれ、体が冷えすぎてしまったことが原因かもしれません。今回は、夏バテによる下痢や吐き気を解消してくれる漢方薬「藿香正気散(かっこうしょうきさん)」についてお話しします。
どうして夏バテで下痢になるのですか?
冷たい食べ物によって、お腹の働きが弱ってしまうことで下痢になります。
口から入った食べ物は、腸管の働きで運ばれ、お腹で吸収され、血流によって体の上の方へと運ばれていきます。この「運ぶ働き」と「吸収する働き」のバランスが保たれていることが大切なんですね。
ところが、冷たいものを摂り過ぎてしまうとどうなるでしょうか。お腹の働きが低下してしまい、適度に吸収したり運んだりすることができなくなります。すると、お腹の中には冷えによって生じた余分な水分が充満するようになるのです。
この余分な水分が停滞すると、食べ物から必要な栄養を吸収できなくなります。それが体の下の方へ向かうと下痢になり、逆流して上の方へ向かうと吐き気になるというわけです。
さらに、お腹の中に余分な水分が充満していると、空腹感も感じにくくなります。食欲が低下してしまいますし、動きの悪い冷えた水分がお腹に停滞することで、お腹が張ったような感じや重だるい痛みなどの不快感も生じてしまいます。
また、この影響が他の部分にも及ぶと、次のような症状が現れることもあります。
- 体が重い
- 頭が重い
- 鼻がつまる
- 鼻水が止まらない
- 口が粘る
- むくみ
こうした症状に心当たりがある方は、お腹の冷えが原因かもしれませんね。
藿香正気散はどんな漢方薬ですか?
藿香正気散は、体の中を温めて乾燥させる働きがある漢方薬です。
この漢方薬は13種類の生薬がチームを作ってできています。それぞれの生薬を見ていきましょう。
- 藿香(かっこう):お腹を温め余分な水分を排除
- 蘇葉(そよう):体表面を温めて発散
- 白芷(びゃくし):発散力が強く水分を乾燥
- 白朮(びゃくじゅつ):お腹の働きを高める
- 茯苓(ぶくりょう):水分を下へ引き降ろす
- 生姜(しょうきょう):お腹を温めて発汗を促す
- 半夏(はんげ):水分を温めて乾かす
- 陳皮(ちんぴ):気の滞りを解消する
- 厚朴(こうぼく):気を下向きに降ろす
- 大腹皮(だいふくひ):お腹の気を降ろす
- 桔梗(ききょう):気を上向きに上昇させる
- 甘草(かんぞう):気や潤いを補充
- 大棗(たいそう):気や潤いを補充
ほとんどの生薬が温めて乾かす働きを持っています。停滞している気や水分を発散したり、上に巡らせたり、下に引き降ろしたりすることで、動きを回復させて体の中から追い出してくれるのです。
どうして下痢や吐き気が良くなるのですか?
藿香正気散は、胃腸を温め、停滞している余分な水分を体の外へ追い出してくれます。
冷たいものによってお腹の働きが低下すると、吸収できないことで下痢になり、吐き気が起こります。
藿香正気散の主役となる藿香には、お腹を穏やかに温めて余分な水分を排除する働きがあります。夏の暑さや湿度による不調を改善する力があるので、夏の胃腸症状や風邪によく使われる生薬なんですね。
胃液の分泌を促して消化する力を高めるとともに、腸管の神経の過剰な働きを鎮めることで、吐き気や下痢を抑える働きもあります。
蘇葉と白芷は、体の表面を温めて発散することで、停滞している冷えを排除して気と水の巡りを回復させてくれます。
蘇葉はシソのことで、お腹や体の表面に作用して冷えを温めて発散します。利尿を促し、胃液の分泌を促し、腸の蠕動運動を強めてくれます。穏やかな発散で気の滞りを解消し、お腹の気は下向きに引き降ろすので、吐き気を抑えてくれるんですね。
白芷には強い発散力と、余分な水分を乾燥させる働きがあります。鼻づまりなど腫れの解消や、痛みの解消にも効果があります。痛みは通るべきものが通っていないことで起こると考えられていますので、白芷によって通れるようになり、頭痛、歯の痛み、胃の痛み、関節の痛みなどにも使われます。
白朮は、お腹の働きを高めて気を補うことで、体の中に停滞した余分な水分を巡らせ、お腹の中を乾燥させる働きがあります。
茯苓は、余分な水分を巡らせて下向きに引き降ろして利尿につなげることで、余分な水分を排除してくれます。お腹の働きを高める作用もあり、お腹の張り、下痢、軟便、吐き気、めまいなどの解消に役立ちます。これらの働きが脳の働きを穏やかにすることで、不眠や不安感などの精神的な症状の緩和にもつながります。
生姜は、お腹の働きを高めて水分を温め、体の表面へと動かして発散させることで発汗を促します。胃液の分泌を促し、胃腸の蠕動運動も高められるので、お腹が冷えて起こる吐き気の解消に使われます。
半夏は、停滞してドロドロになった水分を温めて乾かすことで排除し、下向きに引き降ろしてくれます。胃のつかえや吐き気、喉の詰まりなどの解消に効果があります。
陳皮はミカンの皮ですが、温めて乾かしながら気の滞りを解消し、下向きに引き降ろすことで、お腹の張り、吐き気、下痢などの解消に効果があります。
厚朴は、温めて乾かしながら気を下向きに引き降ろします。お腹の張り、腹痛、吐き気、便秘の解消や、気の逆流を降ろすため咳の解消にも使われます。
大腹皮は、温めながら乾燥させることで、お腹の辺りの気を下向きに引き降ろしてくれます。お腹の張り、みぞおちの張り、下痢、むくみなどの解消に使われます。
桔梗は、気を上向きに上昇させることで、皮膚表面などを調整する肺気の流れを良くし、様々な皮膚のトラブルを解消してくれます。気や水が停滞して膿になっているような状態も、動くことで解消されます。鼻づまり、喉の痛み、声のかすれなどにも使われます。
これらの働きを、大棗と甘草で気や潤いを補充することで支えています。
つまり、藿香正気散はお腹を温めながら冷えを発散し、余分な水分を巡らせて排除しながら、気の滞りを解消することで、お腹の働きを取り戻してくれるのです。
どんなタイプの人に向いている?体質別おすすめコメント
これだけ温めて、停滞しているモノを動かす働きがありますので、次のような方におすすめです。
冷たいものや体を冷やすものを食べすぎてしまった方、クーラーなどで体が冷やされてしまって、お腹の調子が悪くなって下痢や吐き気を感じる方、無色透明な鼻水が止まらないような方に効果があります。
これは、体の中に余分な水分が停滞していて、それが冷えてしまっている状態です。舌の苔が白くて厚く、水っぽい状態が見られる場合があります。
冷たいものによってお腹の働きが低下し、吸収できないことで下痢になり、吐き気になっています。藿香正気散によって胃腸を温め、停滞している余分な水分を体の外へと追い出し、居座っている冷えを発散しながら、お腹の働きも高めます。その結果、吸収の力も回復して、下痢や吐き気が解消されるというわけです。
使う際の注意点
藿香正気散は体を乾燥させる働きがとても強い漢方薬です。
予防のためなどとして飲み続けてしまうと、粘膜などの必要な部分の潤いまで乾燥させてしまうので、体の様子を見ながら飲む必要があります。
ちなみに、花粉症などの鼻水の解消にも効果がありますが、花粉症の場合には熱による症状もあります。乾きによって余計に悪化することもありますので注意が必要です。
体調を見ながら、症状がある時に飲むようにしましょう。
まとめ
今回は、夏バテの下痢や吐き気におすすめの漢方薬として、藿香正気散をご紹介しました。
毎日のように暑い日が続いていると、どうしても冷たいものが欲しくなります。クーラーの効いた部屋でグイっと飲みたくなりますが、それが続くと段々とお腹の働きが低下して、下痢や吐き気、場合によっては夏風邪のような症状になることがあります。
それは、お腹の働きが低下したことにより、お腹の中に余分な水分が停滞していることで起こっています。吸収は邪魔され、移動もままならずといった状態ですね。
解消するためには、温めて乾燥させることでお腹の働きを回復させる必要があります。藿香正気散はとても役に立ってくれる漢方薬です。
冷たいものを摂り過ぎて、透明な鼻水が止まらなくなり、くしゃみが出始めたような時に素早く飲むと、あっという間に鼻水が止まり、くしゃみも出なくなることがよくあります。
ただし、症状が複雑な場合には、単独では効果がない場合もあります。体質や症状に合わせた漢方選びが大切ですので、お困りの際は当店で漢方相談も承っております。お気軽にご相談くださいね。
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