古来より日本人に親しまれてきたフナ(鮒)は、食文化として楽しまれるだけでなく、実は優れた薬効を持つ食材でもあるのをご存知でしょうか?
特に東洋医学では「薬食同源」の考えのもと、フナは健康維持や様々な症状の改善に活用されてきました。
今回は、そんなフナの薬効や活用法について、東洋医学の観点から詳しく解説していきます。むくみや食欲不振でお悩みの方、産後の母乳分泌でお困りの方にもおすすめの情報です。ぜひ最後までお読みください。
フナ(鮒)とは何ですか?
東洋医学における基本情報は以下の通りです:
【性味/帰経】
- 性味:平、甘
- 帰経:脾、胃、大腸
「性質が平」というのは、体を極端に温めたり冷やしたりせず、バランスを保つ性質を持つことを意味します。また「甘味」があることで、体力を補い、脾胃の機能を高める作用があります。
フナ(鮒)にはどのような薬効がありますか?
フナには主に2つの重要な薬効があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 健脾利湿(けんぴりしつ)の効果
健脾利湿とは、脾(消化吸収系)の機能を高め、体内の余分な水分(湿)を排出する働きのことです。具体的には次のような症状の改善に役立ちます:
- 疲れやだるさ
- 食欲減退
- むくみ(浮腫)
- 下痢
- 脚気
- 関節の浮腫や痛み
現代医学的に言えば、フナには利尿作用や消化促進作用があり、体内の余分な水分を排出し、代謝を促進することで上記の症状を緩和すると考えられています。
2. 通乳(つうにゅう)の効果
通乳とは、母乳の分泌を促進する効果のことです。産後に母乳の出が悪い方にとって、フナは自然な形で母乳分泌を助ける食材として重宝されてきました。
特に中国では古くから、出産後の女性がフナのスープを飲む習慣があります。これは経験的に母乳の分泌を促進する効果が認められてきたからです。
フナ(鮒)の栄養成分と現代的な健康効果は?
フナは薬効だけでなく、現代栄養学的にも優れた栄養価を持っています:
- 高タンパク・低脂肪:良質なタンパク質を含み、脂肪が少ないため、ダイエット中の方にもおすすめです
- ビタミンB群:特にビタミンB12が豊富で、貧血予防や神経機能の維持に役立ちます
- DHA・EPA:脳や神経の発達、心血管系の健康維持に効果的な不飽和脂肪酸を含みます
- ミネラル類:カルシウム、リン、鉄分などのミネラルが豊富で、骨や血液の健康に貢献します
これらの栄養素は、東洋医学で言う「健脾利湿」「通乳」の効果を、現代栄養学の観点からも裏付ける要素となっています。
フナ(鮒)を使用する際の注意点は何ですか?
フナの薬効を活用する際には、以下の点に注意しましょう:
- 寄生虫のリスク:フナには寄生虫が存在する可能性があるため、生食は避けてください。必ず十分に加熱調理しましょう。
- フナずしについて:伝統的な製法のフナずしは長期間塩漬けにするため、寄生虫の心配はありません。ただし、自家製の場合は発酵過程をしっかり管理することが重要です。
- アレルギーの確認:魚類アレルギーのある方は摂取を避けてください。初めて食べる場合は少量から試すことをおすすめします。
- 妊娠中の摂取:妊娠中の方は、薬効を期待した過剰摂取は避け、通常の食事の一部として適量を摂取するにとどめましょう。
- 調理方法による効果の違い:薬効を最大限に引き出すには、スープにして飲むのが効果的です。焼き魚や揚げ物は薬効が減少する可能性があります。
まとめ:フナ(鮒)の薬効と上手な活用法
フナは単なる食材としてだけでなく、東洋医学においては重要な薬効を持つ生薬としても位置づけられています。主な効能は以下の通りです:
- 健脾利湿:脾(消化吸収系)の機能を高め、余分な水分を排出することで、むくみや食欲不振、消化不良などの改善に役立つ
- 通乳:母乳の分泌を促進する効果があり、産後の母乳不足に悩む女性にとって心強い味方となる
これらの効果を最大限に引き出すには、スープにして摂取するのが効果的です。特に、生姜やカルダモンなど他の薬味と組み合わせることで、相乗効果が期待できます。
ただし、生食は寄生虫のリスクがあるため必ず加熱調理を行い、アレルギーのある方や妊娠中の方は摂取に注意してください。フナずしなどの発酵食品は塩漬け工程で寄生虫の心配はなくなりますが、自家製の場合は適切な発酵管理が必要です。
日本の伝統的な食文化の中に息づくフナ。その薬効を知ることで、私たちの食卓がより豊かで健康的なものになるでしょう。ぜひ、体調や目的に合わせて、フナの持つ自然の力を上手に活用してみてください。
参考文献

ご自分の体質にあった
漢方薬を試してみたい方は
ピヨの漢方の漢方相談を
ご利用ください。
