皆さんはパクチーと聞くと、どんなイメージが浮かびますか?独特の香りに強い好き嫌いがあるこのハーブですが、実は漢方医学では古くから重宝されてきた貴重な薬草なのです。
セリ科の一年草であるパクチーは、地中海沿岸原産の植物です。日本には約1000年前に伝わったとされていますが、近年ではエスニック料理ブームと共に再評価されています。
その独特の香りは「気」の巡りを改善するとされ、漢方では「温性」のハーブとして重要な位置を占めています。今回は、そんなパクチーの漢方的な効能や使い方について、詳しく見ていきましょう。
パクチーとは何ですか?基本情報を教えてください
パクチーは、セリ科の一年草で、葉・茎・種子・根まで全てを食用や薬用として利用できる万能ハーブです。
基本情報
- 性味/帰経:
- 性味: 温、辛
- 帰経: 肺、胃
パクチーには様々な呼び名がありますが、これらは全て同じ植物を指します。日本では「パクチー」、欧米では「コリアンダー」と呼ばれるのが一般的です。
その特徴的な香りは、一部の人にとっては「石鹸のよう」と感じられることがあります。これは実は遺伝的な要因があり、日本人の約半数以上がこのタイプの遺伝子を持っているとされています。好き嫌いが分かれるのも納得ですね。
パクチーにはどのような薬効があるのですか?
漢方医学では、パクチーには主に以下の2つの重要な薬効があるとされています。
1. 発汗透疹(はっかんとうしん)
発汗作用によって体内の熱や邪気を外に出し、特に麻疹の発疹がうまく出ないときに効果的です。体表に病邪を透発させる作用があり、発疹を改善する効果が期待できます。
2. 開胃消食(かいいしょうしょく)
胃の働きを活発にして、食べ物の消化を促進します。以下のような症状に有効です:
- 食滞胃痛(しょくたいいつう):食べ過ぎによる胃痛
- 食欲不振
- 脘腹痞満(かんふくひまん):みぞおちや腹部の膨満感
さらなる効能
中医学では、以下のような効果も認められています:
- 血液循環の促進:ビタミンCと鉄分が豊富で、血液の酸素運搬能力を高めます
- 抗菌・消炎作用:含有される精油成分が一般的な病原菌に対して抑制効果を示します
- 目の健康維持:ビタミンAとβカロテンが豊富で、夜盲症予防や目の健康に寄与します
- 血圧調整:カリウムを含み、ナトリウムの排出を促して血圧のバランスを整えます
- 骨の健康促進:カルシウムやマグネシウムが骨の成長と発達をサポートします
- デトックス効果:食物繊維が腸の働きを促進し、体内の毒素排出を助けます
これらの栄養素により、強力な抗酸化作用があり、老化防止や美容効果も期待できます。実は葉だけでなく、種子もほぼ同等の薬効を持ち、特に消化促進作用に優れています。
種子は熟すとスパイシーな甘い香りを発し、カレーやエスニック料理の調味料としてよく使われていますね。
パクチーを使用する際の注意点は?
効能が高いパクチーですが、使用時には以下の点に注意する必要があります。
使用上の注意点
- 多食しない:過剰摂取は胃腸の不調を引き起こす可能性があります
- 熱盛者には禁忌:体に強い熱がある状態の方は避けるべきです
- 個人の体質に合わせる:特にアレルギー体質の方は少量から試すことをお勧めします
適切な摂取量
漢方的な常用量は3~6gとされていますが、料理の香味付けとして使う場合はそれほど気にする必要はありません。ただし、薬効を期待する場合は適量を守りましょう。
特に妊娠中の方や特定の疾患をお持ちの方は、専門家に相談してから摂取することをお勧めします。
パクチーの家庭での活用法は?
パクチーは料理だけでなく、家庭療法としても活用できます。
料理での利用法
- サラダのトッピング
- スープの風味付け
- 炒め物に加える
- エスニック料理のアクセント
- スパイスとしての種子利用
家庭療法としての活用法
- 消化不良時:少量のパクチーをお湯で軽く煮出して飲む
- 食欲不振時:生のパクチーを少量、食前に摂取する
- かぜの初期症状:パクチーとねぎのスープを作り、体を温める
栽培方法
日当たりと水はけの良い場所を好み、18~25℃の温度で育ちます。プランターや水耕栽培で家庭でも比較的簡単に育てられるハーブです。
まとめ:パクチーの魅力を再発見しよう
パクチーは単なる香味野菜ではなく、漢方医学において重要な薬効を持つ薬草です。その主な効能は:
- 発汗作用による体内の熱や邪気の排出
- 胃腸の働きを活性化する消化促進効果
- 豊富な栄養素による健康維持と美容効果
独特の香りから好き嫌いが分かれるハーブですが、その効能を知れば見方が変わるかもしれませんね。ただし、体質や体調に合わせて適量を守ることが大切です。
「薬食同源」という言葉があるように、食べ物は私たちの健康に大きく影響します。パクチーの持つ力を上手に活用して、毎日の健康維持にお役立てください。
何千年もの歴史を持つ漢方の知恵と現代の栄養学の知見を組み合わせることで、私たちの食生活はさらに豊かになります。パクチーを苦手としていた方も、少量から始めてみてはいかがでしょうか?
参考文献

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