
こんにちは
どうなさいましたか?

中途覚醒にお悩みの方から
質問をいただきましたよ
夜中に何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」。最近物忘れが増えてきた…。そんな悩みを抱える方は意外と多いものです。これらの症状は単なる加齢現象と片付けてしまうことも多いですが、東洋医学的にはしっかりとした原因があります。
今回は62歳女性の体験談をもとに、中途覚醒と物忘れの原因について東洋医学的な視点から解説し、日常生活で実践できる自然療法をご紹介します。あなたと同じような悩みを持つ方の事例から、自分の体質改善のヒントを見つけてみませんか?
この方の外見的な特徴とお悩みの症状は?
今回ご相談いただいたのは以下のような特徴を持つ方です:
- 62歳の女性
- 身長:152cm
- 体重:38kg
- BMI:16.45(やや痩せ型)
- 顔色:黄色っぽい
- 舌の状態:水っぽい
主な症状:
- 中途覚醒がある
- 物忘れが気になる
- 既往歴に子宮筋腫がある
- 食後数時間すると眠くなる
- 玄米採食を心がけているが、甘いものが好き
なぜ夜中に目が覚めてしまうのか?睡眠の仕組みを理解しよう
まずは睡眠の仕組みについて理解しましょう。私たちの睡眠は大きく分けて2種類から成り立っています:
- レム睡眠:体は眠っているものの、脳は起きている状態
- ノンレム睡眠:脳は熟睡しているが、体では多少の筋肉活動がある状態
通常、私たちが眠りに入るとすぐにノンレム睡眠に入ります。この最初のノンレム睡眠では、深い睡眠レベルに一気に達するだけでなく、その深い状態を長く保ちます。このためぐっすり眠れたという満足感を得られるのです。
その後、やや眠りが浅くなるレム睡眠になり、再びノンレム睡眠に戻るというサイクルを繰り返しながら、やがて目覚めていきます。
どちらの睡眠も体や脳を休ませ、消耗したエネルギーを回復させる役割がありますが、それぞれ特徴が異なります。
東洋医学から見た睡眠のメカニズム
東洋医学的に見ると、昼間は「気」が外側を中心に巡って外部からの情報や刺激に対応している状態から、夜になると「気」が身体の奥深くに戻り、体の内側の修復や、気や血といった体のエネルギーを作る状態になると考えられます。
ノンレム睡眠では、脳の活動が最小限になり、体の修復や回復が中心に行われます。この質の良い睡眠の後には、体が元通りに回復し、スッキリとした目覚めを感じられます。
一方、レム睡眠では、体は休息していますが脳は活動しているため、記憶の整理や技術の習得のための回路の改修が行われます。この状態では、気は体の内側に戻ってはいるものの、ノンレム睡眠よりはやや浅い部分にある状態です。
良質な睡眠を妨げる原因
スッキリとした目覚めのためには、深い眠りであるノンレム睡眠を維持できることが大切です。
東洋医学では、睡眠を維持するためには、体の潤いによって脳の活動を穏やかにする必要があると言われています。イメージとしては、活動の盛んなコンピューターを冷却するためのファンや冷却水のようなものです。
この脳を穏やかにさせ続けるための「潤い」が不足すると、たとえ寝つきが良くても、途中で脳が活動を再開し始め、眠りが浅くなり、最終的には目が覚めてしまいます。
気の状態で説明すると、気が内側へと戻ってきても、それを穏やかに保つための「陰の潤い」が足りないため、あぶれた気が外側へと飛び出し始め、脳の活動を再開させ、最終的には目覚めてしまうというわけです。
この方の体質はどのようなタイプ?
この方の症状から体質の特徴を探ってみましょう。
まず、中途覚醒や忘れっぽさから、心を穏やかにする潤いや血が不足していることが考えられます。爪が脆い、BMIが低め、顔色が黄色いことから、**体の上部を中心に血の不足(血虚)**があることが示唆されます。
次に、血を不足させている原因を探るために、血を作る働きの中心となるお腹の働き(脾気)の状態を見てみましょう。
この方は食欲はあるようですが、大便の頻度が多く柔らかすぎる状態があります。これは食べた栄養が吸収されず、体の材料になっていない状態を示しています。また、息切れしやすい、手足が冷える、夜間尿が多いといった症状から、気の不足も見られます。
これらの状態では、栄養の吸収だけでなく、吸収した栄養を体の材料に変えることもできなくなり、体全体で血が不足していきます。
顔色が黄色い理由
顔色が黄色くなる原因には、体全体の血液不足と、血液を顔へ持ち上げられない場合の2つがあります。
血液を作るためには、食べ物から脾気の働きによって必要な栄養が吸収され、血液に変換される必要があります。お腹の働きが低下すると、体全体の血液が不足し、重要な臓器に優先的に血液が配分されるため、顔まで届く量が減って黄色が目立つようになります。
また、血液を顔へ届けるには血管の緊張度が保たれている必要がありますが、これも脾気が関わっています。脾気が弱ると血管の弾力性が低下し、重力に逆らって血液を上昇させることができなくなります。
これにより、顔において赤血球の赤い色だけが不足し、黄色が目立つようになります。東洋医学ではこのような顔色を「萎黄(いおう)」と呼びます。
この方の体質をまとめると
お腹の働き(脾気)に負担がかかり、飲食物をうまく吸収できず、体の材料に変換することも難しくなっているため、血が不足している状態です。ただし、舌の色は綺麗なピンク色とのことなので、体全体で深刻に不足しているわけではないようです。
手足の冷えがあることから、血の不足の影響で体の末端部では熱が不足し、顔色が黄色いことから、血を持ち上げる力(脾気)への負担があると考えられます。
また、既往歴の子宮筋腫や、静脈瘤、手足の冷え、夜間尿の多さ、息切れなどから、気血を動かすための原動力にも不足がある可能性があります。
これらにより、心気の働きが穏やかさを失い、中途覚醒や物忘れが生じていると考えられます。
ではこの方に、おススメの自然療法を教えて下さい
1. 食事法の見直し
この方は玄米食を心がけていらっしゃいますが、玄米はお腹の弱っている方には負担が大きい食品です。中途覚醒を起こす原因の一つである血の不足を改善するためには、血を作り出し上方へ持ち上げる脾気の働きが重要です。
玄米によってお腹に過度の負担がかかると、脾気の機能が低下し、栄養の吸収や変換、上方への運搬に影響が出て、心気の働きの穏やかさを保つことが難しくなります。その結果、睡眠維持が困難になり、中途覚醒が起こりやすくなります。
玄米食に関するアドバイス:
- 玄米を5分づきにして圧力鍋で炊く
- 完全な玄米よりも5分づきや7分づきを選ぶ
- 消化負担を減らす調理法を工夫する
昔の方が食べていた「玄米」は、現代のような完全な玄米ではなく、精米の技術が今ほど高くなかったため、ある程度糠が取れた状態だったと言われています。また、消化の負担を考慮して様々に工夫して食べていたので、お腹に負担を感じる場合は適切な調整が必要です。
2. 水分摂取の見直し
喉の渇きを感じないのに、排便回数が多く柔らかい便であり、さらに排尿回数も多いという状況は、体が必要とする以上に水分を摂っている可能性を示しています。
東洋医学では「脾は湿を嫌う」と言われ、余分な水分がお腹にあると脾の働きに負担をかけます。
水分摂取のアドバイス:
- 喉が渇いていない時は無理に水分を摂らない
- 生もの、冷たいものなど、お腹を冷やし余分な水分を生じさせる食品を控える
- 温かい飲み物を中心に摂る
3. 適度な運動の導入
体を適度に動かすことで、体がエネルギーを作る必要性に迫られ、お腹の働き(脾気)が活発になります。
運動に関するアドバイス:
- 体に無理なく負担をかける程度の運動を取り入れる
- ウォーキングや軽いストレッチなど続けやすい運動から始める
- 少しずつ運動量を増やしていく
適度な運動によって気血の巡りも改善し、適度な疲労感が得られるようになり、睡眠の質も徐々に改善されるでしょう。
漢方薬による体質改善
この方のような症状がある場合、以下のような漢方薬が効果的な場合があります。ただし、これらは特定の体質改善に効果が期待できる一般的な漢方薬であり、個人の症状に合わせた処方ではありません。
- 帰脾湯(きひとう):気血両虚で食欲不振や不眠、物忘れなどがある方に効果的な漢方薬
- 四君子湯(しくんしとう):気虚体質で脾胃の機能低下がある方に用いられる基本的な漢方薬
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):血虚で冷えや貧血傾向がある方に効果的な漢方薬
症状が複雑な場合には、これらの漢方薬単独では効果が得られない場合もあります。ピヨの漢方では漢方相談を行っていますので、専門家にご相談いただくことをおすすめします。
まとめ:中途覚醒と物忘れを改善するための自然療法
この方の事例から学べることをまとめると:
- 中途覚醒と物忘れには、血の不足と脾気の弱りが関係している
- 玄米などの消化に負担がかかる食品は、お腹の弱っている方には適さない場合がある
- 適切な水分摂取と余分な冷えを避けることが重要
- 適度な運動により、気血の巡りと睡眠の質が改善される
東洋医学的にみると、中途覚醒や物忘れは体内の気血バランスの乱れから生じていることが多いです。自分の体質を知り、日常生活の中で無理なく続けられる方法で体質改善を行うことが、長期的な健康につながります。
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