知っておきたい東洋医学の知恵:粟(あわ)の驚くべき効能と活用法

穀物類など

みなさん、「粟(あわ)」という穀物をご存知でしょうか?日本では「濡れ手に粟」ということわざがあるほど馴染み深い穀物ですが、実は私たちの食卓からは少し遠ざかっている食材かもしれません。

粟は縄文時代から日本で栽培されており、お米よりも古くから私たちの先祖に親しまれてきました。そして東洋医学では「秫米(じゅつべい)」という生薬として重要視されてきた健康食材でもあるのです。

今回は、そんな粟の持つ驚くべき効能や活用法について、東洋医学の観点から詳しくご紹介していきたいと思います。胃腸トラブルの改善や精神の安定など、現代人の健康にも役立つヒントが満載ですよ。

粟とは?基本情報を教えてください

粟は東洋医学では「秫米(じゅつべい)」と呼ばれる生薬で、性質は「涼・甘・鹹(かん)」とされています。帰経(作用する臓器)は腎・脾・胃とされ、これらの臓器の働きを整える効果があるとされています。

・【性味/帰経】涼,甘,鹹/腎,脾,胃

粟は日本の食文化においても非常に古い歴史を持っています。古事記の食物起源神話には、スサノオノミコトがオオゲツヒメという食べ物の神様に食べ物を求めた際、オオゲツヒメの亡骸から様々な食べ物の種が生まれ、そのうち粟は耳から生まれたとされています。

現代においても、天皇陛下が収穫された穀物に感謝を捧げる新嘗祭には、米と共に粟が使われています。それほど古くから日本人の食生活と密接に関わってきた重要な穀物なのです。

粟には栄養面でも優れた特徴があります:

  • ビタミンB群が豊富(特にB1)
  • 食物繊維(水溶性・不溶性の両方を含む)
  • カリウムなどのミネラル
  • マグネシウム
  • 鉄分

この豊富な栄養素が東洋医学的な効能の基盤となっています。

粟にはどんな薬効があるのですか?

1. 清熱和中益腎(せいねつわちゅうえきじん)

粟の最も重要な効能の一つが「清熱和中益腎」です。これは体内の余分な熱を取り除き、腸胃の働きを整え、腎の機能を高める効果を意味します。

東洋医学では、脾(ひ)は湿を嫌うと考えます。体内に余分な水分が停滞していると、胃もたれや食欲不振の原因になるのです。粟に含まれるカリウムには、体内の余分な塩分を排出する働きがあり、これによって余計な水分も体外へ出すことができます。

具体的な効果としては:

  • 胸やけ(胸灼け)の改善
  • 吐き気・嘔吐の軽減
  • 下痢の改善
  • 消渇(糖尿病ののどの渇き)の緩和

特に胃腸の働きを整える効果は優れており、ビタミンB1が糖質をエネルギーに変換するのを助けることで、胃腸機能を支え、疲労回復も促進します。

また、粟に含まれる食物繊維は水溶性と不溶性の両方の特性を持っているため:

  • 水溶性食物繊維→善玉菌のエサとなり腸内環境を整える
  • 不溶性食物繊維→腸に適度な刺激を与え便通を改善する

これらの働きによって、胃腸の機能が正常化し、停滞していた腸管が下向きに動き出すことで、胸やけや吐き気の改善につながります。

2. 利尿通淋(りにょうつうりん)

粟には優れた利尿作用があり、排尿痛や血尿などの症状にも効果があるとされています。

カリウムを豊富に含む粟は、体内の余分な水分を排出する手助けをします。これにより:

  • むくみの改善
  • 排尿の促進
  • 淋痛(排尿時の痛み)の緩和
  • 血尿の改善

が期待できます。

3. 安神(あんじん)作用

「安神」とは精神的な働きを安定させる効果のことです。粟には不眠や不安感の改善に役立つ成分が含まれています。

健やかな睡眠のためには、興奮した脳が穏やかな状態に落ち着く必要があります。しかし、胃腸の機能が低下していると、必要な栄養素が脳に届かず、余分な水分が体内に停滞してしまいます。

粟に含まれる栄養素が睡眠と精神の安定をサポートします:

  • マグネシウム:神経の興奮を抑え、神経伝達を正常化
  • 鉄分:貧血解消に役立ち、間接的に不眠や不安感を改善
  • ビタミンB群:神経機能をサポート

東洋医学では、鉄分のような「重い性質」を持つ生薬には、興奮した気を静め落ち着かせる働きがあると考えられています。粟に含まれる鉄分もこの働きを持っているのです。

粟を食べる際の注意点はありますか?

粟は非常に優れた健康食材ですが、いくつか注意点もあります:

  1. 消化吸収が弱っている方は、最初は少量から始めましょう
  2. 冷え症が強い方は、生姜などの温性の食材と組み合わせるとよいでしょう
  3. 腎機能に重度の問題がある方は、カリウム含有量が高いため医師に相談してから摂取してください
  4. 粟には複数の種類があり、「もちあわ」はねばりけが強く、「うるちあわ」はさらっとした食感です。用途に合わせて選びましょう

一方で、粟の効果を高める組み合わせもあります:

  • 粟とナツメを一緒にお粥状に煮て、黒砂糖や蜂蜜で味付けすると、鉄分と気血の補充に効果的で、虚弱体質の改善におすすめです
  • お米と混ぜて炊くことで食べやすくなります
  • サラダの材料として使うこともできます
  • 甘味料と合わせてデザートにすることも可能です

まとめ:粟の効能と上手な取り入れ方

粟は古代から伝わる貴重な健康食材であり、東洋医学的にも高い価値を持つ穀物です。その主な効能をまとめると:

  • 胃腸トラブル(胸やけ、吐き気、下痢など)の改善
  • 水分代謝の調整と利尿作用
  • 精神安定効果と不眠の改善
  • 豊富な栄養素(ビタミンB群、食物繊維、ミネラル)の供給

粟は「もちあわ」と「うるちあわ」の2種類があり、どちらも栄養価が高く、食物繊維やミネラルを豊富に含んでいます。動脈硬化の予防や肥満予防にも効果があるとされています。

現代の食生活に粟を取り入れることで、古来から伝わる健康の知恵を活かすことができるでしょう。スーパーや健康食品店で手に入りますので、ぜひ一度お試しください。体の内側から健康になる喜びを感じられるはずです。

粟を日々の食事に取り入れて、東洋医学の知恵を現代の生活に活かしてみませんか?

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