鮮やかなオレンジ色が美しい杏(あんず)は、初夏の訪れを告げる果実として親しまれています。紀元前3000年頃から中国で栽培され、その薬効は今日まで受け継がれています。
さっぱりとした甘酸っぱい味わいが魅力の杏ですが、その効能は果肉だけでなく種子(杏仁)にまで及びます。咳を鎮め、肌を潤し、便通を改善するなど、多岐にわたる健康効果を持つ杏の世界をのぞいてみませんか?
今回は、漢方の視点から見た杏の基本情報から効能、正しい活用法、そして注意すべきポイントまで詳しくご紹介します。自然の恵みを賢く取り入れて、健康維持に役立てましょう。
杏(あんず)とは何ですか?
杏(あんず)は、バラ科サクラ属に属する果物で、アプリコットとも呼ばれています。原産地はネパールから中国北部地方の山岳地帯とされています。
漢方では、果肉と種子(杏仁)をそれぞれ異なる用途で活用してきました。特に「杏仁(キョウニン)」は、古くから重要な生薬として知られています。
性味・帰経
- 性味:温、甘、酸(微毒)
- 帰経:肺、心、腎
杏の栄養価値は何ですか?
杏には驚くほど多くの栄養素が凝縮されています。特に注目すべきは以下の成分です。
- βカロテン(ビタミンAの前駆体)
- ビタミンC、E
- 食物繊維
- ミネラル(カリウム、リン、鉄、カルシウムなど)
- 蛋白質
- クエン酸
- リコピン
杏は水分も豊富に含んでおり、体の水分補給にも役立ちます。βカロテンは体内でビタミンAに変換され、視力の維持や免疫機能の向上に寄与します。
杏にはどのような効能がありますか?
1. 咳止め・喘息の緩和
杏(特に杏仁)には咳を鎮め、喘息を和らげる効果があります。のどの粘膜を潤わせ、痰を取り除く作用があるため、肺の不調や咳に悩む方には特におすすめです。
2. 便秘の改善
杏に含まれる豊富な食物繊維は、腸の働きを促進します。適量摂取することで、自然な形で便通を改善する効果が期待できます。特に腸の乾燥が原因の便秘に有効です。
3. 美肌効果
杏に含まれる成分は肌の粘膜にも作用し、さまざまな肌トラブルを改善する効果があります。βカロテンの抗酸化作用も肌の老化防止に役立ちます。
4. 生津止渴(口の渇きを癒す)
杏には体内の水分バランスを整え、喉の渇きを癒す効果があります。特に暑い季節に役立つ効能です。
5. 免疫力向上
βカロテンやビタミンCなどの栄養素は、体の免疫機能を高める働きがあります。適量の杏を日常的に摂取することで、免疫力の向上が期待できます。
6. 清熱解毒
部位によっては「熱」を冷まし、毒を排出する作用があるともされています。体内の余分な熱を取り除き、バランスを整える効能があります。
杏の種(杏仁)の種類と使い分け方は?
杏仁(杏の種)には主に2種類あり、それぞれ特性と用途が異なります。
甜杏仁(てんきょうにん)
- 味:微甘、辛、甘味
- 性質:温性
- 効能:腸を潤す、咳を止める、気を補う
- 用途:慢性の咳、便秘、気虚(気の不足)の症状に適しています。杏仁豆腐の材料として使われます。
苦杏仁(くきょうにん)
- 味:辛、苦味
- 性質:温性(微毒あり)
- 効能:咳を止める、喘息を鎮める、腸を潤す
- 用途:急性の咳、喘息、強い便秘などに適していますが、毒性があるため使用量に注意が必要です。苦みも強いため食用には用いません。
杏を食べる際の注意点は何ですか?
杏は多くの健康効果がある一方で、いくつか注意すべき点もあります。
適量を守る
- 杏(特に杏仁)には微量の毒性成分(アミグダリン)が含まれているため、過剰摂取は避けましょう
- 果肉の場合は、胃酸との相性から食べ過ぎると胃腸に負担をかける可能性があります
摂取に注意すべき人
- 胃腸が弱い人:酸味が強いため、胃腸が敏感な方は少量からお試しください
- アレルギーのある人:杏やその他のバラ科の果物にアレルギーがある方は避けてください
その他の注意点
- 未熟な杏は食べないでください(中毒の危険があります)
- 杏仁を薬膳として使用する場合は、必ず医師に相談してください
- 市販の杏仁製品は使用方法と用量を守って使用してください
まとめ:杏の恵みを賢く活用しよう
杏は果肉も種も、それぞれ素晴らしい効能を持つ自然の贈り物です。咳を鎮め、便通を改善し、美肌効果も期待できる多機能な食材であり生薬です。
しかし、その効果を最大限に活かすためには、適量を守り、自分の体質に合った摂取方法を選ぶことが大切です。特に杏仁を薬膳として利用する場合は、医師のアドバイスを仰ぐことをおすすめします。
杏の旬は6月から7月。この時期に新鮮な杏を味わうとともに、ドライフルーツやジャムなどの加工品を上手に取り入れて、一年を通して杏の恵みを健康維持に役立てましょう。
自然の薬箱である漢方の知恵と、現代の栄養学の知見を組み合わせることで、杏をより効果的に活用できるはずです。
参考文献

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