私たちの食卓でおなじみの昆布。出汁をとるだけでなく、古来より薬としても珍重されてきた海の恵みです。実は昆布は生薬としても高い評価を受けており、さまざまな健康効果が期待できることをご存知でしょうか?
797年の『続日本紀』には715年に蝦夷の酋長が朝廷に昆布を献上したという記録があり、平安時代の『延喜式』では租税として指定されるほど価値あるものとされていました。こうした長い歴史を持つ昆布の、生薬としての魅力に迫ってみましょう。
今回は昆布の基本情報から薬効、使い方、注意点まで、Q&A形式でわかりやすく解説します。毎日の健康維持に、ぜひ参考にしてみてください。
昆布とは?生薬としての基本情報
昆布(コンブ)は、主に北海道沿岸で生育する褐藻類の海藻です。生薬学では「昆布」または「海帯」と呼ばれます。
昆布の基本情報は以下の通りです:
- 性味/帰経
- 性味:寒、鹹
- 帰経:肝・胃・腎
- 常用量
- 10~15g(煎じて服用する場合)
昆布は日本の食文化においても重要な役割を果たしてきました。豊富な旨味成分であるグルタミン酸を含むため、出汁(だし)の素材として欠かせない存在です。精進料理や茶懐石など、動物性の出汁を使わない料理でも重宝されています。
昆布にはどんな薬効があるの?
昆布には主に「消痰軟堅(しょうたんなんけん)」と「行水消腫(こうすいしょうしゅ)」という二つの重要な薬効があります。
1. 消痰軟堅(痰を消し、硬いものを柔らかくする)
昆布は「軟堅散結(なんけんさんけつ)」と呼ばれる作用を持ちます。これは硬くなったしこりを柔らかくして散らす働きのことです。
この作用は、昆布に含まれるヨウ素と関係があると考えられています。ヨウ素は甲状腺ホルモンの主成分であり、摂取が不足すると甲状腺ホルモンが不足して甲状腺腫大を引き起こします。昆布を内服すると、ヨウ素が補充されて甲状腺ホルモン不足が解消し、腫大した腺体はしだいに縮小して正常の大きさになります。
2. 行水消腫(水を巡らせ、むくみを消す)
昆布には熱を冷まし、余分な水分を排出する働きもあります。以下のような症状に効果があります:
- 水腫(すいしゅ:むくみ)
- げっぷ
- 血便
- 脚気
- 浮腫(ふしゅ)
また、昆布には以下のような現代医学的な薬理作用も報告されています:
- 降圧作用:軽度の降圧作用がありますが持続時間は短いとされています
- 脂質代謝調整作用:コレステロール値を下げる効果が期待できます
- ガン予防効果:食物の中で最もヨウ素の含有量が多く、ガン予防の効果が期待されています
このように、昆布は日常的な健康維持にも役立つ成分を豊富に含んでいるんですよ。
昆布を使う際の注意点は?
Q. 昆布を使う際に気をつけるべきことは?
昆布は多くの健康効果が期待できる食材ですが、以下のような注意点もあります:
1. 使用を控えるべき状態
- 脾胃の虚寒証で下痢気味の時には用いない
- 昆布は「寒滑」の性質があるため、胃腸が冷えて弱っている方や下痢気味の方は避けましょう
- 特に泥状~水様便のある方は注意が必要です
2. 適量を守る
- 食材として使う場合も、毎日大量に摂取することは避けましょう
3. 薬との相互作用
- 特に甲状腺疾患で薬を服用している方は、医師に相談してから昆布を積極的に摂取するようにしましょう
- 血圧を下げる薬を服用している方も、昆布の降圧作用と重なる可能性があるので注意が必要です
昆布は体を冷やす性質があるので、もともと冷え症の方や胃腸が弱い方は、温かい料理に取り入れるなど工夫して摂取することをおすすめします。
まとめ:昆布の生薬としての価値
昆布は日本の食文化に欠かせない食材であるだけでなく、生薬としても貴重な価値を持っています。
活用のポイント
- 出汁として活用した後も、昆布自体を食べることで栄養素を無駄なく摂取できます
- 佃煮やふりかけ、煮物や和え物など、日常的な料理に手軽に取り入れられます
- 真昆布、羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布など種類によって風味や用途が異なるので、目的に応じて選ぶと良いでしょう
昆布は「海の恵み」とも呼ばれ、その豊富な栄養素と薬効により、日本人の健康を古くから支えてきました。現代でも、その価値は変わらず、むしろ研究が進むにつれて新たな健康効果も発見されています。
日々の食卓に昆布を上手に取り入れて、その恵みを享受してみませんか?長い歴史を持つ昆布の知恵を、現代の健康維持に活かしていきましょう。
参考文献

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