古来より「長生不老食」と呼ばれる黒ゴマ。その小さな粒には、私たちの健康を支える驚くべき力が秘められています。東洋医学では「胡麻仁(ごまにん)」と呼ばれ、重要な薬膳食材として珍重されてきました。
現代の忙しい生活の中で、私たちの体は知らず知らずのうちに「乾き」や「不足」を起こしています。そんな現代人の健康課題に、実は身近な黒ゴマが大きな力を発揮するかもしれません。
今回は東洋医学の視点から、黒ゴマの効能や活用法について、Q&A形式でわかりやすく解説していきます。毎日の食卓に取り入れやすい実践的な方法もご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
黒ゴマとは?その基本情報を教えてください
黒ゴマは、生薬名を「胡麻仁」と言い、東洋医学では重要な薬膳素材として扱われています。「胡麻」という名前は、古代中国の西方の民族からシルクロードを通じて中国に伝わったこと、そして胡麻の実が麻の実に似ていることから名づけられたからと言われています。
ゴマには黒と白がありますが、薬用として用いられるのは主に黒ゴマです。白ゴマは主に食用として広く利用されています。
東洋医学的特性
- 性味: 平、甘
- 帰経: 肝、腎、大腸
黒ゴマにはどのような薬効があるのですか?
黒ゴマには主に2つの重要な働きがあります。
1. 滋補肝腎・養血益精(じほかんじん・ようけつえきせい)
体に栄養を与え、血液や精(腎の精気)を補充してくれる作用です。黒ゴマは体の潤いを補充することで、以下のような症状の改善を助けます:
- 耳鳴り
- 頭痛
- めまい・ふらつき
- 目のかすみ
- 陰虚体質(体内の潤いが不足した状態)
- ほてりや微熱
- 盗汗(寝汗)
- 早期の白髪
- 疲労感
黒ゴマは体を潤すことで、相対的な熱を冷ます働きがあります。体の潤いが不足すると、相対的な熱が過剰になって身体の興奮が治まらなくなり、様々な症状が現れるのです。
2. 潤燥滑腸(じゅんそうかつちょう)
腸を潤すことにより排便を促す作用です。腸管が乾燥していると、気の巡りが悪くなり腸管の動きが停滞するため、便秘を引き起こします。黒ゴマに含まれる油脂成分により腸の乾燥が改善されると、気の流れが回復し、便秘が解消されます。
主に以下のような症状に効果的です:
- 皮膚の乾燥
- 腸の乾燥による便秘
黒ゴマの現代科学的な効果は何ですか?
黒ゴマには、東洋医学的な効能だけでなく、現代の栄養学的にも価値のある成分が豊富に含まれています。
- 黒ゴマポリフェノール: 黒ゴマの外皮に含まれる成分で、一説には赤ワインの何倍もの抗酸化作用があるとも言われています。これにより老化防止や若返り効果が期待できます。
- セサミン: 血流を改善し、心臓の働きを助ける効果があります。また肝機能の保護作用も報告されています。
- ビタミンE: 強い抗酸化作用を持ち、血行促進効果があります。
- カルシウム: 骨の強化に役立ちます。
- 鉄分: 貧血予防に効果的です。
これらの成分により、黒ゴマには以下のような健康効果が期待できます:
- 抗酸化作用による若返り促進
- 血流改善
- 心臓機能のサポート
- 便秘解消
- 骨の強化
- 美肌効果
- 白髪改善
黒ゴマをどのように摂取すれば効果的ですか?
黒ゴマは様々な方法で日常的に摂取することができます。以下に、効果的な摂取方法とその特徴をご紹介します。
基本の摂り方
最も簡単なのは、黒ゴマをすりつぶしてご飯にかけて食べる方法です。すりつぶすことで、栄養素の吸収率が高まります。ゴマをすり鉢ですることで、香りも増し、美味しく摂取できますよ。
効能別の配合レシピ
1. 若白髪・貧血・便秘・乳汁不足に
- 黒ゴマ + 何首烏(かしゅう)+ ハチミツ
2. 高血圧に
- 黒ゴマ + 緑豆(りょくとう)
3. 空咳に
- 黒ゴマ + ハチミツ
4. 高血圧・貧血・しびれ・便秘に効果的な「桑麻丸」
材料:
- 桑の葉 50g(粉末状にしたもの)
- 黒ゴマ 200g
- 蜂蜜 適量
作り方:
- 桑の葉を粉末状にします
- 黒ゴマをすりつぶします
- 両者を合わせて、蜂蜜で練って団子状にします
- 1日に5〜9gを目安に摂取しましょう
5. 便秘解消のための簡単レシピ
- すりつぶした黒ゴマと卵をよく混ぜます
- 熱湯を注ぎます
- 適量の蜂蜜を加えてよく混ぜます
- 温かいうちに飲みましょう
このレシピは腸を潤す効果が高く、気の流れを改善して便秘解消に役立ちます。
黒ゴマを使用する際の注意点はありますか?
黒ゴマは非常に安全な食材ですが、より効果的に摂取するためにいくつかの点に注意しましょう。
摂取方法の注意点
- すりつぶして使用する: 黒ゴマは必ずすりつぶして使用しましょう。丸ごと食べると消化吸収されにくく、効果が半減します。
- 適量を守る: 一般的な薬膳としての使用量は9〜30gとされています。食材として日常的に少量を継続して摂取するのが理想的です。
- 他の食材との組み合わせ: 効果を高めるために、症状に合わせた食材と組み合わせると良いでしょう。
注意が必要な人
- 脂質の消化吸収に問題がある方: 黒ゴマには油脂成分が豊富に含まれていますので、胆嚢や肝臓に重篤な疾患がある場合は医師に相談してから摂取しましょう。
- アレルギーのある方: ゴマアレルギーのある方は摂取を避けてください。
まとめ:黒ゴマの力を毎日の健康に活かしましょう
黒ゴマは「長生不老食」と呼ばれるほど、私たちの健康に様々な恩恵をもたらしてくれます。東洋医学的には肝腎を滋養し、精血を補い、腸を潤す作用があります。現代栄養学的にも、抗酸化物質やセサミン、ビタミンEなど健康に役立つ成分が豊富です。
特に現代人に多い「カラダの乾き」や「血の不足」による症状—耳鳴り、めまい、白髪、便秘など—に効果的です。毎日の食事にすりゴマを取り入れる習慣をつけることで、長期的な健康維持につながるでしょう。
黒ゴマは副作用も少なく、誰でも手軽に始められる健康法です。ぜひご自身の体質や症状に合わせて、黒ゴマの恵みを日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献

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