美しい花として知られる百合ですが、実はその根(正確には鱗茎)には驚くほどの健康効果が隠されていることをご存知でしょうか?
東洋医学では古くから「百合(ひゃくごう)」として重宝されてきたこの食材は、乾いた咳を鎮め、心を穏やかにする効果があるとされています。現代の忙しい生活で疲れた心と体を自然の力で整えたい方にぴったりの食材なのです。
今回は、東洋医学の視点から見た百合の根の効能や活用法について、Q&A形式でわかりやすくご紹介します。日常生活に取り入れやすい知恵をお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
百合の根とは?基本情報を教えてください
百合の根は東洋医学における生薬として「百合(ひゃくごう)」と呼ばれています。性質は「微寒(やや冷やす性質)」で、味は「甘」とされ、主に肺、心、胃の働きに作用します。
性味/帰経:
- 性味:微寒、甘、苦
- 帰経:肺、心、胃
実は百合の根という名前ですが、植物学的には「鱗茎(りんけい)」と呼ばれる構造で、本当の根ではなく葉が変形したものです。その名前の由来は、鱗片が重なり合った形状から「百の鱗が合わさる」ということで「百合」の字があてられたと言われています。
現代栄養学の観点からは、百合の根には以下の栄養素が含まれています:
- カルシウム
- リン
- グルコマンナン(水溶性食物繊維)
これらの成分が組み合わさり、東洋医学で重視される「養陰潤肺止咳」と「清心安神」という二つの主要な働きをもたらします。
百合の根はどんな効果があるのですか?
Q1: 養陰潤肺止咳(よういんじゅんはいしがい)とは何ですか?
養陰潤肺止咳とは、「陰(体液)を養い、肺を潤して咳を止める」という意味です。百合の根は特に乾燥による咳や喉の痛みに効果を発揮します。
肺の働きを理解するために、呼吸のメカニズムを簡単に説明しましょう。私たちが息を吸うと、空気中の酸素は気道を通って肺胞に到達します。この酸素は肺胞の粘膜に溶け込み、血液中の赤血球と結合して全身に運ばれます。
同時に、体内の細胞から出た二酸化炭素は血液によって肺に運ばれ、肺胞から外に排出されます。この酸素と二酸化炭素の交換が円滑に行われることが健康維持には重要です。
しかし、肺胞周辺が乾燥すると、酸素が適切に溶け込めなくなり、呼吸がスムーズに行われなくなります。そこで咳などの症状が現れるのです。
百合の根の効果:
- 肺やのどなど体の表層部位に潤いを与える
- 体内の熱を冷まして乾燥を改善する
- 乾いた咳や少ない痰の症状を和らげる
- 喀血(かっけつ:咳とともに血が出ること)を抑える
- 肌に潤いを与え、乾燥による肌荒れを改善する
Q2: 清心安神(せいしんあんじん)とは何ですか?
清心安神とは、「心(精神)を清め、神(精神活動)を安定させる」という意味です。百合の根は精神の高ぶりを鎮め、心を落ち着かせる効果があります。
東洋医学では、精神活動をコントロールする働きを「心気(しんき)」と呼びます。心気の機能が正常で、気血が満ち巡っていれば、意識ははっきりとして思考も穏やかになります。
心気は大脳の働きと深く関係し、記憶、判断力、言語機能など、物事を考えたり決めたりする機能を担います。身体全体をコントロールする「王様」のような存在なのです。
しかし、この心気の働きが乱れると、考えや感情のバランスが崩れ、穏やかな状態を保つことが難しくなります。
百合の根の効果:
- 心にこもった熱を冷ます
- 心に潤いを与え、精神活動を穏やかにする
- 不眠や多夢(よく夢を見る状態)を改善する
- 精神不安やイライラを和らげる
- 動悸を鎮める
また、百合の根に含まれるカルシウムとリンは、東洋医学では「重い性質」を持つとされ、興奮した気を静めて落ち着かせる働きがあると考えられていました。現代栄養学ではイライラとカルシウム不足の関連性は明確ではありませんが、骨の健康維持には確かに役立ちます。
Q3: その他の健康効果はありますか?
百合の根に含まれるグルコマンナンという水溶性食物繊維には、以下のような効果があります:
- 胃腸の調子を整える
- 便秘を解消する
- 胆汁を吸着して排出し、コレステロールを下げる
- 脂質異常症の改善に役立つ
また、カルシウムとリンを両方含むため、骨粗しょう症の予防にも良い食材です。
百合の根を使う際の注意点はありますか?
百合の根は多くの健康効果がある素晴らしい食材ですが、以下のような場合には注意が必要です:
- 体を冷やす性質があるため、以下の方は控えめにしましょう
- 下痢や軟便の症状がある方
- 体が冷えている方
- 冷え性の方
- 咳の種類によっては効果が異なります
- 百合の根が効果的なのは「乾燥」や「熱」が原因の咳
- 「冷え」が原因の咳や喉の痛みには効果が薄い場合があります
- 食べ過ぎには注意しましょう
- 体を冷やし過ぎると、胃腸の働きが弱まる可能性があります
- 薬との相互作用
- 漢方薬や西洋薬を服用中の方は、医師や薬剤師に相談してから摂取することをおすすめします
まとめ:百合の根の魅力と活用法
百合の根は、東洋医学の知恵が詰まった素晴らしい食材です。主な効果をまとめると:
- 乾燥による咳や喉の痛みを和らげる
- 不眠や不安、イライラを鎮める
- 肌に潤いを与え、乾燥肌やしわなどの肌トラブルを改善
- 便秘の解消や腸内環境の改善に役立つ
- コレステロール値の上昇を抑える
- 骨の健康維持をサポート
日常生活に百合の根を取り入れる場合は、スープや煮物などに加えると効果的です。特に乾燥する季節や、ストレスが多い時期には積極的に摂取してみましょう。
ただし、体質や症状によっては効果が異なりますので、自分の体調に合わせて適量を摂取することが大切です。心身のバランスを整える自然の恵みとして、百合の根の素晴らしさを再発見してみてください。
東洋医学の視点から見ると、食材は単なる栄養源ではなく、体のバランスを整える「薬」でもあります。百合の根のような伝統的な知恵を現代の生活に活かすことで、より健やかな毎日を過ごせるようになりますね。
参考文献

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