私たちの食卓を彩る果物の中でも特に人気の高い桃。その甘くジューシーな味わいは夏の風物詩として多くの人に親しまれていますが、実は薬膳においても重要な役割を持つ果物なのです。
桃はバラ科サクラ属の落葉小高木で、その原産地は中国西北部から西部とされています。約4000年以上前から栽培が始まったとされています。
日本には弥生時代までに伝わったとされ、古事記や日本書紀にも桃に関する記述があります。「桃太郎」の物語に代表されるように、邪気を払う力があるとして日本の文化や伝説にも深く関わってきました。
今回は、そんな桃の持つ漢方的な効能と活用法について詳しく見ていきましょう。
桃とは?その基本情報を教えてください
桃は一般的な果物の中では珍しい「温性」の性質を持つ果物です。これは薬膳の観点から見た特徴で、桃の持つ独特の価値を示しています。
桃の性味と帰経
- 性味: 温、甘、酸
- 帰経: 肺、肝、胃、大腸
桃は温性であるため、胃腸を冷やしません。そのため、胃腸が弱い方でも比較的安心して食べられる果物と言えるでしょう。
また、桃には水溶性食物繊維のペクチンが豊富に含まれており、コレステロール値を下げる効果も期待できます。桃の種は「桃仁(とうにん)」として血の巡りをよくする漢方薬の生薬として用いられ、葉はあせもなどの皮膚病の薬になることもあります。
桃にはどのような薬効がありますか?
桃には主に以下の3つの働きがあります。それぞれの効能について詳しく見ていきましょう。
1. 益気生津(えっきせいしん)
「益気」とは気を補い、「生津」とは体の潤いを生み出すことを意味します。桃には以下のような症状に効果が期待できます:
- 疲れ
- 口渇
- ほてり
- 盗汗(とうかん:睡眠中に汗をかく症状)
2. 養陰潤燥(よういんじゅんそう)
「養陰」とは体の潤いを養い、「潤燥」とは乾燥を潤すことを意味します。特に効果的なのは:
- 腸の乾燥による便秘
桃は腸を潤して腸の機能を助け、血の巡りもよくします。これにより自然な排便を促進する効果が期待できるのです。
3. 利肺鎮咳(りはいちんがい)
「利肺」とは肺の働きを助け、「鎮咳」とは咳を鎮めることを意味します。以下のような症状に効果が期待できます:
- 風寒による咳
- 虚労(きょろう:体力低下)による咳
- 喘息
桃はどのように活用できますか?
桃は様々な症状に対して、以下のように活用することができます。ご自身の体調に合わせて試してみてはいかがでしょうか。
基本的な食べ方
桃はよく洗って皮をむいて生で食べるのがおすすめです。自然の甘みと豊富な栄養素が喉の渇きを和らげ、腸の蠕動運動を促進して便秘を改善するのに役立ちます。
もし歯の弱くて桃をうまく食べられない方は、以下の桃を使った食療法を試してみてください。
おすすめの食療法レシピ
1. 氷砂糖入り蒸し桃
材料:桃・適量、氷砂糖・桃1個に対し10g
作り方:
- 桃をよく洗い、皮をむき、適度な大きさに切り分けます。
- 深めの器に切った桃を入れて氷砂糖をのせ、適量の水を加えます。
- 器を蒸し器に入れ、湯煎で30分ほど蒸し煮します。
- 桃が柔らかくなり、氷砂糖が完全に溶けるまで続けてください。
- 器に残った汁も桃と共に召し上がれます。
気虚による疲労や咳、喘息の予防と治療に効果的です。また身体を滋養し、免疫力を高める効果もあります。
桃を使用する際の注意点はありますか?
桃は多くの健康効果が期待できる素晴らしい果物ですが、以下の点に注意して摂取することが大切です。
禁忌・使用上の注意
- 食べ過ぎには注意が必要です。桃を食べ過ぎると腫れ物や内熱を引き起こし、口の渇きや鼻血などの症状が現れることがあります。
- 一日に3個を超えて食べないよう推奨されています。特に高齢者やお腹が弱い方はより注意する必要があります。
また、桃にはアレルギーを引き起こす可能性もあるため、初めて摂取する際は少量から始め、体調の変化に注意しましょう。
まとめ:桃の恵みを日常に取り入れましょう
桃は甘くジューシーな味わいを楽しめるだけでなく、薬膳的にも価値の高い果物です。温性という特性を持ち、胃腸を冷やさずに体に優しく働きかけます。
益気生津、養陰潤燥、利肺鎮咳といった効能を持ち、疲れや口渇、便秘、咳など様々な症状の改善に役立ちます。水溶性食物繊維のペクチンも豊富で、コレステロール値を下げる効果も期待できます。
桃の活用法は生食だけでなく、調理して食べることで様々な症状に対応できます。ただし、いくつかの注意点もありますので、適切に摂取することが大切です。
また、今回ご紹介した食療法レシピは、桃の効能をより効果的に引き出す方法です。特に歯の弱い方や、より強い効果を求める方におすすめです。
季節の恵みである桃を、食べる楽しみだけでなく、健康維持の観点からも取り入れてみてはいかがでしょうか。自然の恵みを上手に活用して、健やかな毎日を過ごしましょう。
参考文献

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