「1日1個のリンゴで医者いらず」ということわざがあるほど、昔から健康食品として親しまれてきたリンゴ。その甘酸っぱい味わいは多くの人に愛されていますが、実は東洋医学の世界では、リンゴには様々な薬効があるとされてきました。
バラ科の落葉高木であるリンゴは、中央アジアのカザフスタン周辺が原産とされ、シルクロードを通じて世界中に広まりました。日本には奈良時代に中国から伝わり、明治時代以降に西洋品種が導入されて本格的な栽培が始まりました。現在では青森県や長野県が主要な産地となっています。
今回は、普段何気なく食べているリンゴが持つ驚くべき薬効と効能について、東洋医学の視点から詳しく解説していきましょう。健康維持や体調管理に役立つ知識が満載ですので、ぜひ最後までお読みください。
リンゴとは?その基本情報
リンゴは東洋医学では以下のような性質を持つとされています。
性味/帰経
- 性味:涼、酸、甘
- 帰経:脾、胃、心
リンゴ脾、胃、心に良い影響を与えるとされています。これらの基本的な性質が、後述する様々な薬効の源となっています。
リンゴにはどんな薬効があるの?
リンゴには主に二つの重要な働きがあります。
1. 清熱生津潤肺(せいねつせいしんじゅんぱい)
この働きは「体内の余分な熱を取り除き、体の潤いを生成し、肺を潤す」という意味です。具体的には以下のような症状に効果があるとされています。
- 暑熱による発熱
- 喉の渇き
- 空咳(痰の出ない乾いた咳)
- 二日酔い
暑い夏の日にリンゴジュースが特に美味しく感じるのは、この「清熱生津」の効果を体が欲しているからかもしれませんね。
2. 止瀉通便(ししゃつうべん)
この働きは「下痢を止め、便通を良くする」という一見矛盾するような効果を持ちます。しかし、リンゴに含まれる成分が腸内環境を整えることで、以下のような症状に効果を発揮します。
- 下痢
- 便秘
- 消化不良
リンゴに豊富に含まれる水溶性食物繊維「ペクチン」が腸の働きを整え、消化器系のトラブルを改善するのに役立っています。
さらに、中医学によると、リンゴには以下の効果もあるとされています。
- 胃を養う(益胃)
- 心の煩わしさを取り除く(除煩)
- 酔いを醒ます
リンゴの効能と応用例
東洋医学では、リンゴを他の食材と組み合わせることで、様々な症状に対応できるとされています。実用的な応用例をいくつかご紹介しましょう。
便秘に効く組み合わせ
リンゴ + さつまいも
この組み合わせは便秘解消に効果的です。リンゴとさつまいもに含まれる食物繊維が腸の働きを活発にし、自然な排便を促します。朝食やおやつにこの組み合わせを取り入れてみてはいかがでしょうか。
中国医学での応用例
中国の伝統医学では、さらに以下のような応用例が記載されています。
- 消化不良、少食による下痢、または長期の下痢で脾の機能が低下している場合: リンゴと山芋を細かく粉末にし、白砂糖を適量加え、温かい湯で服用する
- 軽度の下痢: リンゴを洗って皮と種を取り除き、つぶして泥状にして食べる
- 喉や口が乾く: 新鮮なリンゴをつぶして汁を取り、濃くなるまで煮詰め、蜂蜜を適量加えて混ぜ、服用する
- つわりによる嘔吐: 新鮮なリンゴと炒った米を水と一緒に煎じ、お茶の代わりに飲む
これらの応用例は、東洋医学の考え方に基づいた伝統的な利用法です。実践する際は、医師の指導を受けることをお勧めします。
リンゴの効能に関する科学的根拠は?
リンゴの健康効果については、現代科学の研究でも様々な面から確認されています。
リンゴ酸の効果
リンゴに含まれるリンゴ酸には、歯の歯垢を除去する作用があります。自然な歯のクリーニング効果が期待できるので、食後のデザートにリンゴを食べるのは良い習慣かもしれませんね。
コレステロール低減効果
リンゴには、コレステロールを下げる作用があることが知られています。これは、リンゴに含まれる水溶性食物繊維のペクチンが大きく関わっています。ペクチンは腸内でコレステロールの吸収を抑える働きがあるのです。
その他の効果
- 腸の働きを整え、脂質代謝を良くする
- 体にたまった余分な熱を冷まし、のどの渇きを癒す
- 二日酔いを解消する
- 酸味が唾液の分泌を促し、食欲を高める
- 不安感やあせりを和らげる心の働きを助ける
リンゴを食べる際の注意点は?
リンゴは多くの人にとって健康的な食品ですが、いくつか注意点もあります。
禁忌と使用上の注意
- 糖尿病の方は注意が必要 リンゴには糖分が含まれるため、糖尿病の方は摂取量に注意しましょう。医師の指導のもと、適切な量を守ることが大切です。
- 脾胃虚寒の方(胃腸が冷えやすい体質の方)は加熱してから食べる リンゴは「涼」の性質を持つため、胃腸が弱く冷えやすい方は、生で食べるよりも加熱して食べることをお勧めします。焼きリンゴやリンゴコンポートなどの調理法が適しています。
- 薬との相互作用に注意 現在何らかの薬を服用している場合は、リンゴとの相互作用の可能性について、事前に医師や薬剤師に相談することをお勧めします。
便利な食べ方
- スライスして手軽に リンゴを薄くスライスし、そのままおやつやデザートとして楽しめます。忙しい朝の朝食や仕事中のスナックにぴったりです。
- 焼きりんご 芯を取り除いたリンゴにバターやシナモン、砂糖を詰めてオーブンで焼くと、胃腸が弱い方にも優しい温かいデザートになります。
- スムージーやジュース 他のフルーツや野菜と一緒にミキサーにかけて、栄養豊富なドリンクを作ることができます。ただし、お腹を冷やしますので摂りすぎには注意が必要です。
まとめ:リンゴの力を毎日の健康に活かそう
リンゴは単なる美味しい果物ではなく、東洋医学的にも現代医学的にも優れた健康効果を持つ食材であることがわかりました。その主な効能をまとめると:
- 清熱生津潤肺:体内の熱を冷まし、体液を生成し、肺を潤す効果
- 止瀉通便:下痢を止め、便通を良くする効果
- 歯垢除去:リンゴ酸による自然な歯のクリーニング効果
- コレステロール低減:ペクチンによる脂質代謝改善効果
- 心の安定:不安感やあせりを和らげ穏やかにする効果
「1日1個のリンゴで医者いらず」ということわざは、科学的にも東洋医学的にも裏付けられた知恵だったのですね。毎日の食生活にリンゴを取り入れて、その素晴らしい効能を健康維持に役立てましょう。
ただし、体質や持病によっては注意が必要な場合もありますので、気になる症状がある場合は、必ず専門家に相談してください。東洋医学と現代医学、両方の知恵を活かした健康的な食生活を心がけていきましょう。
参考文献

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