温経湯で生理不順が改善される理由と体質別の選び方

漢方メモ
ピヨ先生
ピヨ先生

こんにちは
どうなさいましたか?

にゃんたろう
にゃんたろう

生理不順にお悩みの方から
質問をいただきましたよ

生理の周期が安定しない、出血が不規則に起こる。そんな悩みを抱えていませんか。

生理不順には、生理がなかなか来ない「稀発月経」や、周期が短すぎる「頻発月経」、予定外の「不正出血」などがあります。これらは身体からのサインかもしれません。

温経湯(うんけいとう)は、お腹の働きが弱って血液の巡りが悪くなったことで起こる生理不順に働きかける漢方薬です。生理痛や手の肌荒れにも効果が期待できます。

今回は、温経湯がどのように身体に作用するのか、中医学の視点から詳しくお伝えします。

生理不順はどうして起こるのですか?

生理が遅れる「稀発月経」の仕組み

排卵後から月経までの期間は、子宮が赤ちゃんを迎える準備をする大切な時期です。この時期、身体は子宮へ濃厚な「気血(きけつ)」を注ぎ込みます。

気血とは、生命活動のエネルギー源となる「気」と、栄養を運ぶ「血液」のことです。子宮を育てるために多くの気血が必要なため、この時期は食欲が増すのが自然な反応なのです。

気血が不足している方の場合、身体は気血を消耗させるよりも作ることを優先します。そのため、だるさや眠気を感じやすくなることもあります。

ただし、身体は母体の健康を最優先します。子宮を育てるだけの気血を確保できない場合でも、母体を犠牲にすることはありません

お腹の働きが弱い方は、気血を十分に作れません。すると、子宮が気血で満たされるまでに長い時間がかかり、生理が遅れてしまうのです。

また、気血を作る力だけでなく、子宮へ運ぶ力も重要です。気血がスムーズに流れるには、次の3つが必要です。

  • 気血を動かす熱源(温かさ)
  • 流れを誘導する気の働き
  • 通り道に障害物がないこと

これらのどれかが欠けても、子宮へ気血が届きにくくなり、生理が遅れる原因になります

生理が早く来る「頻発月経」の仕組み

お腹の働きには、血管の筋肉に適度な緊張を与える役割があります。お腹が弱ると、血管の緊張が緩んで血液が漏れ出やすくなります。

子宮に気血を十分保てないと、正常な期間を待たずに生理が始まってしまうのです。

これは芯部の熱源が弱った場合にも起こります。また、気血の巡りが悪くてドロドロの血液が停滞すると、下の方で押し出されるように漏れ出ることもあります。

不正出血が起こる理由

身体が冷えると、気血の巡りが弱まって下の方で固まってしまいます。停滞した血液が押し出されて漏れ出ると、生理の時期でないのに出血する「不正出血」になります

温経湯はどんな漢方薬ですか?

温経湯は、12種類の生薬で構成されています。それぞれの生薬が協力して、身体を温め、血液の巡りを改善してくれます。

  • 呉茱萸(ごしゅゆ): 身体を温める
  • 桂皮(けいひ): 芯部を温める
  • 当帰(とうき): 血液を巡らせる
  • 川芎(せんきゅう): 血流を促進する
  • 芍薬(しゃくやく): 筋肉の緊張を緩める
  • 牡丹皮(ぼたんぴ): 熱を冷ます
  • 麦門冬(ばくもんどう): 潤いを補う
  • 阿膠(あきょう): 血液を補い止血する
  • 人参(にんじん): 気を補う
  • 生姜(しょうきょう): お腹を温める
  • 甘草(かんぞう): 諸薬を調和する
  • 半夏(はんげ): お腹の働きを高める

どうして温経湯で生理不順が良くなるのですか?

身体を温めて熱を巡らせる

呉茱萸と桂皮が身体を温めながら、上の方に浮き上がった熱を引き降ろして末端へ広げます

身体が冷えて固まると、気血が配られなくなり中心部に集中します。弱いながらも集まった気が熱を生じると、その熱は顔や頭へ浮き上がっていきます。

呉茱萸は温めながら末端へ広げ、桂皮は温めながら芯部へ熱を戻します。こうして熱が巡り出すと、固まっていた気血の流れが回復します。

血液の流れを改善する

流れが良くなったところで、当帰、川芎、芍薬、牡丹皮が血液の流れをさらに促進します。停滞しているドロドロした血液を排除してくれるのです。

当帰と川芎は身体を温めながら血液を巡らせます。芍薬は筋肉の緊張を緩めて、気血の巡りを応援します。

牡丹皮には、熱を持ってドロドロした血液を冷ましながら巡らせる働きがあります。麦門冬と阿膠が潤いを補充することと合わせて、芯部に集中した熱を冷ましてくれます。

血液の材料を補充する

当帰、芍薬、阿膠で血液の材料を補います。阿膠には止血の働きもあります。

これらの働きを、人参、生姜、甘草、半夏がお腹の働きを高めることで支えます。お腹が元気になると、気血を作る力が高まります。

生理不順が改善されるメカニズム

温経湯の働きをまとめると、次のようになります。

  • 身体を温めて浮き上がった熱を引き降ろす
  • 血液の流れを促進する
  • 潤いと血液の材料を補充する
  • お腹の働きを高めて気血を作る

子宮への気血の補充が高まり、充足するまでの期間が正常に戻るため、稀発月経が解消されます。

また、気血の巡りが改善され、通り道の障害物が排除されるので、子宮が気血で満たされやすくなります。

さらに、お腹の働きが高まり冷えが解消されると、子宮に気血を保つ力も高まります。頻発月経や不正出血の改善にもつながるのです。

加えて、気血が手の末端まで届くようになるため、手の湿疹や乾燥によるガサガサの改善にも役立ちます。

どんなタイプの人に向いている?体質別おすすめコメント

温経湯は、次のような特徴がある方に適しています。

身体が冷えやすく、お腹の働きが弱い方に特におすすめです。手足が冷たい、お腹を触ると冷たい感じがする方は、このタイプかもしれません。

血液の巡りが悪く、ドロドロした血液が停滞している方にも向いています。生理の血液に塊が混じる、手がガサガサに乾燥するといった症状がある方です。

気血が不足していて、子宮へ十分に気血が届かない方にも効果が期待できます。疲れやすい、だるさを感じやすい方はこのタイプです。

ただし、すべての生理不順に温経湯が合うわけではありません。体に熱が過剰にこもっている方の場合、温経湯の温める働きがかえってのぼせや吐き気を引き起こすことがあります。

また、体に十分な潤いがある方が服用すると、むくみやおりものが多くなることもあります。

使う際の注意点

温経湯を使う際は、次の点に注意しましょう。

  • のぼせやすい方は慎重に使用する
  • 吐き気を感じた場合は服用を中止する
  • むくみやおりものが増えた場合は見直しが必要

生理不順の原因は人それぞれです。体の熱が過剰で、気血が激しく動いて飛び出すように出血するタイプの方もいます。

このような場合、温経湯の温める生薬がかえって症状を悪化させることがあります。生理不順に良いからといって、誰にでも合うわけではないのです。

症状が複雑な場合には、単独では効果が十分に得られないこともあります。当店では漢方相談を行っていますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

今回は、生理不順や不正出血を解消する漢方薬として、温経湯をご紹介しました。

お腹の働きが弱い、芯部の熱源が弱い、何かが通り道を阻害する。こうした理由で子宮を十分に育てるまでに時間がかかると稀発月経になります。

子宮に気血を留めておけないと頻発月経に、生理と関係ない時に血液が押し出されると不正出血になります

温経湯は次の働きで、これらの症状を解消してくれます。

  • 身体を温めて熱を広げる
  • 血液の巡りを促進する
  • 血液の材料を補充する
  • お腹の働きを高める

ただし、体質によっては合わない場合もあります。のぼせや吐き気、むくみなどの症状が出た場合は、使用を見直しましょう。

ご自身の体質に合った漢方薬を選ぶことで、より効果的に生理不順を改善できます。気になる症状がある方は、専門家に相談してみてくださいね。

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ピヨ先生
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