不安感を感じやすい方へ。桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)はどんな漢方薬ですか?

不安感
ピヨ先生
ピヨ先生

こんにちは
どうなさいましたか?

にゃんたろう
にゃんたろう

不安感にお悩みの方から
質問をいただきましたよ

ちょっとした事が切っ掛けで不安感を強く感じるようになり、色々な事に過剰に反応してしまう。被害妄想を膨らませて同じことを繰り返し考えてしまい、よく眠れない。そんなお悩みはありませんか?

中医学では、このような症状は心気(しんき)の異常な高ぶりが原因と考えます。頭に熱が上がったまま降りてこられない状態ですね。

今回は、神経が過敏になって起こる不安感に対して、**桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)**という漢方薬がどのように働くのかを、やさしく解説していきます。

どうして不安感を感じてしまうのですか?

心気が身体全体をコントロールしている

東洋医学では、意識活動をコントロールしているものを**心気(しんき)**と言います。心気の機能が正常で気血も満ち盛んに巡っていれば、意識ははっきりとしていて思考も穏やかです。頭の回転も良くなっています。

心気は大脳の働きと深く関係していると考えられます。記憶、判断力、言語機能、運動に対する指令など、物事を考えたり決めたりする機能です。外部から入ってくる情報を知的に処理して、その指令を身体全体に与える働きを担っています。

しかし、心気が異常を起こすと、様々な症状が現れてきます。

  • 物忘れが激しくなる
  • 注意力が散漫になる
  • 不安感が強くなる
  • 心が何となく落ち着かない
  • 驚きやすく眠れない

太陽と地球の関係で例えてみましょう

心気の働きを理解するために、太陽と地球の関係で例えてみますね。

太陽からは地球へと熱が降り注がれ、その熱や光が地球上の様々な活動の原動力となります。熱は主に海などの水に蓄えられて、地球の温度を保つ働きをします。

太陽からの熱によって蒸発した雲ができることで、太陽からの強い光や熱を遮断して適度な涼しさをもたらします。やがて風に載って移動して雨を降らせ、植物などを成長させていきます。

これを人間の身体で見てみましょう。太陽である心気から、体の一番深い部分である**腎陽(じんよう)**に熱が受け渡されることで、身体全体の熱源が作られています。

体全体の潤いの基となる**腎陰(じんいん)**が、腎陽によって温められて軽くなることで、体の上の方へと上昇していきます。これが心気を穏やかにする潤いとなり、ちょうど太陽からの強い熱や光を遮っていた雲のようになって、心気が過剰な働きをするのを制御しています。

不安感が生じるメカニズム

ところが、異常気象のように、海の熱が異常に高くなって熱の偏りが起きてしまうと問題が生じます。太陽からの熱を遮る雲が適度に流れてこなくなってしまい、猛暑や山火事のように熱が過剰になってしまいます。

同じように、考えすぎや心配事などのストレスを長く感じていたり、過度の精神活動などで頭を使いすぎてしまうと、心気の活動が異常に亢進して熱を生じるようになってきます。

心気の熱が過剰になり過ぎてコントロールが効かなくなると、腎陽のある体の芯部にまで降りてこられなくなります。すると腎陽が不足して腎陰の潤いを上昇させられなくなり、心気の活動を制御できなくなります。

また、過労や夜更かしなどが続いて体全体の潤いが不足してくると、腎陰も不足します。そのため心気を穏やかにするための潤いが供給されなくなり、心気の働きが穏やかになれず、過剰に働くようになるのです。

桂枝加竜骨牡蛎湯はどんな漢方薬ですか?

桂枝加竜骨牡蛎湯は、7種類の生薬から構成されている漢方薬です。それぞれの生薬が協力して働くことで、体が本来持っている気血の流れを応援しながら、頭に浮き上がった熱を引き降ろしてくれます。

この漢方薬に使われている生薬をご紹介しますね。

  • 桂皮(けいひ): 体の芯部を温める
  • 芍薬(しゃくやく): 潤いを補い筋肉を緩める
  • 生姜(しょうきょう): お腹を温めて巡らせる
  • 大棗(たいそう): 潤いと気の材料を補う
  • 甘草(かんぞう): お腹の働きを高める
  • 竜骨(りゅうこつ): 頭の熱を引き降ろす
  • 牡蛎(ぼれい): 心気を鎮静させる

どうして不安感が良くなるのですか?

桂枝加竜骨牡蛎湯がどのように働いて不安感を解消するのか、詳しく見ていきましょう。

気血の流れを整える働き

まず、桂皮によって体の芯部の熱源である腎陽を温めます。これにより、冷えによって塞がって通りにくくなっている気血の流れが、血管を拡張しながら上向きに回復します。

さらに、体の上の方へと浮き上がって心気の活動を過剰にさせている熱を、腎陽へと引き戻してきます。これで腎気から心気への気血の通り道が確保されるのです。

芍薬によって潤いが補充されることで、筋肉の緊張が緩みます。心も体もともに鎮静するようになりますので、筋肉の過度の緊張によって気血の流れが妨げられるのを防いでくれます。

芍薬には、体の表層で停滞している余分な水分を、体の下の方へと引き降ろして排除する働きもあります。

この桂皮と芍薬の組み合わせによって、体を構成している気血の上向き下向きの大きな流れが確保されます。停滞していた巡りが促されるのですね。

消化機能を高める働き

生姜は、お腹の中に停滞している気や水分を温めながら上向きに発散して巡らせます。また生姜には、胃液の分泌を高めて腸管の蠕動運動を促進する働きもあります。これにより食欲が増進して、消化機能が高まります。

大棗と甘草によって、綺麗な潤いと気の材料を提供するとともに、お腹の働きを高めることで、これらの働きを支えてくれます。

生姜と大棗の組み合わせでも、大棗によって体の潤いを補充して、その潤いを生姜によって消化機能を高めてうまく利用できるようになります。気の補充が進み、体の中心部の巡りもさらに良くなります。

頭の熱を引き降ろす働き

これらの生薬の働きによって、身体全体の気血の流れが内側外側共に上下に改善したところで、竜骨と牡蛎によって頭で過剰になっている熱を引き降ろしてきます

竜骨と牡蛎は、どちらもカルシウム成分によってできているものです。その重い性質によって、頭の熱を引き降ろしてきますので、心気の過剰により生じていた精神不安などを解消してくれます。

7つの生薬の連携プレー

もう一度整理してみましょう。

  1. 桂皮で芯部の熱を強めて気血の通り道を確保し
  2. 芍薬で潤いを補充しながら気や水分を下向きに引き降ろし
  3. 生姜で気血を上向きに腸管の動きを回復させ
  4. 大棗・甘草で気や潤いの材料を補充し
  5. 竜骨・牡蛎で頭の熱を引き降ろしてきます

これにより、心気と腎気とをつなげていた大きな流れが回復して、熱が引き降ろされます。巡りが止まっていたことで過剰に活動していた心気が穏やかになり、精神不安などが改善して、心が落ち着きやすくなるのです。

どんなタイプの人に向いている?体質別おすすめコメント

桂枝加竜骨牡蛎湯は、次のようなタイプの方に特に向いています。

考えすぎや心配事でストレスを感じている方 長期間のストレスや過度の精神活動で頭を使いすぎている方に適しています。心気の活動が異常に亢進して熱を生じている状態を整えてくれます。

神経が過敏で驚きやすい方 ちょっとした事に過剰に反応してしまい、被害妄想を膨らませて同じことを繰り返し考えてしまう方に適しています。

イライラして眠れない方 心が落ち着かず、不眠に悩んでいる方にもおすすめです。頭の熱を引き降ろすことで、穏やかな睡眠をサポートしてくれます。

日常生活でできるセルフケア

漢方薬と併せて、日常生活でもできるケアをご紹介します。

ヨガの考えの中には、頭頂部にいる神様が尾骶骨にいる女神にエネルギーを送ることで、女神が目覚め、頭頂部にいる神様に会いに行くために上昇していって合流するという教えがあります。

揺るがない意識の集中と、それに伴う呼吸法によって尾骶骨の女神にエネルギーを送ることで、尾骶骨の女神が上昇させていく巡りを作りだす事が、心を穏やかにする方法の一つだと言われています。

頭が過剰に働きすぎて熱が降りてこられなくなると、頭が空回りして不安感などになってしまいます。頭の熱が体の下の方へときちんと降りてくる生理的な巡りが維持されていることが、不安感などの改善には必要です。

ヨガを本格的にやるほどのめり込む必要はありません。頭の興奮が治まらない方や、イライラして眠れない方などには、次のような方法をお試しください。

  • 適度に運動をして体を動かすことで気血の巡りを良くする
  • おへその下にある丹田(たんでん)に意識を向ける
  • やや吐く息を長めにした呼吸法を行う

これらを続けていると、少しずつ頭の興奮が治まってきて、穏やかな状態に維持しやすくなります。

まとめ

今回は、不安感が起こる原因と、桂枝加竜骨牡蛎湯についてお話ししました。

考えすぎや心配事など、ストレスを長く感じていたり、過度の精神活動などで頭を使いすぎてしまうと、心気の活動が異常に亢進して熱を生じてきます

太陽の熱が蒸発させた雲によって、適度に太陽からの強力な光や熱が遮られていれば、うだるような暑さにならないように、心気からの熱が腎陽に受け渡され、その熱が腎陰の潤いを軽くして心気の活動を穏やかにする。この本来の正常な巡りが確保されていれば、心気の活動は穏やかで明晰なままでいられます。

ところが、この一連の心気と腎気との巡りが何らかの理由で寸断されてしまうと、それぞれが孤立したままになり、お互いの活動は正常に行われなくなってしまいます。

桂枝加竜骨牡蛎湯は、7つの生薬の働きによって、心気と腎気をつなぐ気血の大きな流れを回復させてくれる漢方薬です。頭に上がった熱を下に引き降ろすことで、不安感やイライラ、不眠などの症状を改善に導いてくれます。

症状が複雑な場合には、単独では効果がない場合もあります。当店では、お一人お一人の体質に合わせた漢方相談を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

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ピヨ先生
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