不眠に悩む人の特徴とは?原因と体質改善法を漢方の視点から解説

不眠
ピヨ先生
ピヨ先生

こんにちは
どうなさいましたか?

にゃんたろう
にゃんたろう

不眠にお悩みの方から
質問をいただきましたよ

睡眠の悩みを抱える方は非常に多いものです。良質な睡眠は心身の健康に欠かせないにもかかわらず、現代社会では様々な要因によって睡眠の質が低下している方が増えています。

今回は36歳女性の体験談をもとに、東洋医学の視点から不眠の原因と体質改善法について詳しく解説します。特に「なぜ眠れないのか」という根本的な問題に焦点を当て、漢方の知恵を活かした自然な改善方法をご紹介します。

まずは不眠の基本的なメカニズムから理解していきましょう。

この方の外見的な特徴とお悩みの症状

今回ご相談いただいた方は以下のような特徴をお持ちです:

  • 36歳女性
  • 身長162cm
  • 体重50kg
  • BMI 19.05

主な症状:

  • 不眠(寝つきが悪い)
  • 不安感が強い

顔色は赤ら顔で、皮膚や髪の毛は乾燥しています。舌の形は厚ぼったく色は白く、舌には歯の痕が残っています。舌苔の上の水分は水っぽく、苔は剥れてい

そもそも健康的な睡眠とは?東洋医学の視点で解説

睡眠に入るためには、身体の潤いによって興奮した脳がゆったりと穏やかな状態に落ち着けることが必要です。

東洋医学では脳の活動を調整しているものを「心気」と呼びます。この心気は意識状態や睡眠と深く関係しています。心気の機能が正常で気血が充実していれば、意識活動は明瞭で、思考も穏やかに保たれ、物事に敏捷に対応できるのです。

心気が正しく機能するためには、次の2つの要素がバランスよく保たれる必要があります:

  1. 心陽:活動の源となる熱源
  2. 心陰:活動を穏やかな状態に制御する冷却水の役割

これをコンピューターに例えると分かりやすいでしょう。脳の働きはCPUのような計算装置です。コンピューターを起動するには電気エネルギーが必要ですが、同時に過剰な熱による負担もかかります。そのため、正常な機能を維持するには、動かすためのエネルギーと同時に、ファンや冷却水によって適温に保つ仕組みも必要なのです。

人間の脳も同じように、心陽と心陰のバランスが保たれて初めて正常に機能します。

なぜ不眠になるの?心陽と心陰のバランス崩壊

睡眠と覚醒の仕組みを心陽と心陰の観点から考えてみましょう:

  • 心陽が活動→脳の活動が盛んになる→目が覚める
  • 心陰が充実→脳が穏やかになる→眠りにつく

不眠に悩む方の多くは、心陽が過剰になり過ぎ、心陰が不足している状態にあります。そのため脳が穏やかになれず、眠りにつくことができません。

これは遠足前日の子どものような状態です。明日の楽しみで体も心も興奮して熱が盛んになり、脳の興奮が鎮まらず寝付けなくなるのと同じメカニズムなのです。

このように脳の興奮が強まりすぎて眠れない場合は、心や体の緊張をほぐす必要があります。

不眠の原因は「お腹の働き」にも?潤いの供給問題

お腹の働きが弱ってしまうことで不眠になるケースもあります。

先ほど説明したように、睡眠に入るためには脳の興奮を鎮める必要があります。しかし、お腹の働きが弱いと、脳を穏やかにする潤い(血液)を作りだすことができなくなるため、潤いの不足によって脳は穏やかになれず、不眠になってしまうのです。

また、お腹の働きが弱いと血液を運ぶ働き自体も低下し、脳のある身体上部まで潤いを運び上げられなくなるため、脳を穏やかにすることができなくなります。

その他にも、脳へと潤いを届ける働きを何かが邪魔していることで不眠になるケースがあります。例えば:

  • お腹の働きが弱く、食べ物を上手く吸収・運搬できない
  • お腹の中に必要のない余分な水分が停滞する
  • ストレスで気の巡りが悪くなり、さらにやけ食いなどでたくさん食べてしまう

こうした状態になると、お腹の中で「ドロドロしたモノ」が生じ、脳へと潤いを届けるのを邪魔するようになります。その結果、脳は穏やかになれず、不眠につながるのです。

この方の体質はどうなっているの?東洋医学的な分析

この方の体質を東洋医学的に分析してみましょう。

まず水分の様子を探ってみると、自然に汗が出る、頭・足・手が浮腫む、舌が厚く歯の痕がある、手のひらに汗をかく、頭が重く感じられることが多いなど、体のあちこち、特に下部や末端部に動きの悪い水分がたむろしている様子がうかがえます。

ただしBMIの様子から、身体全体に水分が充満しているわけではなく、動きが悪くあちこちに停滞しているように感じられます。

これには、喉が渇いて水を飲みたいという飲水の習慣が体の巡りに負担をかけている可能性があります。

一方で体の上方では、皮膚が乾燥しやすい、口唇が乾燥しやすい、髪の毛が抜けやすい、目が疲れやすく乾燥しやすいなど、血や潤いの不足が目立ちます。しかし月経血の様子が正常で舌の形も厚ぼったいとのことなので、身体全体で血が不足しているわけではなさそうです。

また、動悸があり自然に汗が出ることから、汗を強く外側へと向かわせる力があり、発汗させているのかもしれません。ただしこれは体の活動による熱ではなく、体の潤いの不足やストレスなどの気の滞りで、こもった気が上方や表層に向かっている可能性があります。

気の様子を探ってみると、胸が張って苦しい、腹が張って苦しい、ゲップやガスが出ると楽になる、痒みを感じることが多い、湿疹ができやすい・膿みやすいなど、気の巡りのギクシャクした滞りの様子が感じられます。

手足の冷えや寒がりといった体の冷えの様子はないため、水分を動かす原動力自体にはそれほど問題がなさそうです。しかし、あちこちに停滞している水分の様子から、気が水を全身へ配っていく働きに負担がかかっていて、体の上方にある脳などの必要な部位へと十分に届けられていないと考えられます。

手のひらに汗をかくことから、お腹の領域にも余分な水分が停滞している可能性があります。東洋医学では、手のひらに汗をかくことは「脾気が弱っている」と見られることが多いとされています。脾気はお腹の働きを調整し、四肢とも関連が深いとされます。

この方の脾気の領域に余分な水分が停滞し、それが緊張やストレスによって生じた外向きの流れによって、手のひらからの発汗として現れているのでしょう。

尿の回数が5回で1回の量が多いものの、あちこちに浮腫みがあることからも、体の要求以上に水分を摂りすぎている可能性が考えられます。

舌の裏の静脈が太いことから、あちこちに停滞している余分な水分を動かすために強い力が必要となっているものの力が足りず、脳へと潤いを届けるのを邪魔しているようです。そのため気だけが上部に向かい、顔色が赤ら顔になり、こもった気が心臓の働きを煽って動悸を引き起こしていると考えられます。

これらの要因により、心陽を穏やかにすることができないため、不眠や不安感が生じているのでしょう。

まとめ:この方の体質と不眠の関係

この方の体質をまとめると:

余分な水分の停滞に加えて、気の滞りの背景があるため、気血の流れは中心にこもり、頭なども含めた末端部への巡りが悪化しています。舌の裏の静脈の様子からも、血の流れの悪さが経血の塊や月経痛を引き起こしています。

そのため、潤いや血は上方へと昇りにくくなり、上方では潤いの不足や血の不足と共に、熱が偏って上方にこもっているため、皮膚や髪の毛、唇が乾燥しています。

これらの要因により、脳の穏やかさを保つことができなくなり、不眠になっているのです。

ではこの方に、おススメの自然療法を教えて下さい

この方の体質改善には、以下の自然療法がおすすめです:

1. 水分摂取の工夫

気の滞りや水分の停滞による巡りの負担から、水分の摂り方を工夫する必要があります。

気になる点として「喉が渇いて水が飲みたい」とありますが、ストレスなどから生じる気の滞りによって体の中心部に熱が生じると、その熱は体のコントロールを無視して上昇し、体の上部に乾燥を引き起こします。

その結果、喉の渇きを感じますが、その渇きに従って水分を摂りすぎると、体内に余分な水分が充満し、こもった熱と結びついて動きの悪いドロドロしたものになってしまいます。さらに水分を摂りすぎると体が冷やされ、ますます動きが悪くなるという悪循環に陥ります。

喉の渇きを癒すためには、一度にたくさん飲むのではなく、少しずつこまめに飲むようにしましょう。

2. 適度な運動で気の巡りを改善

気の滞りや水分の停滞を改善するためには、適度な運動が効果的です。

鍼灸を受けると体が軽くなるとのことなので、それは続けられるとよいでしょう。その緩みを持続させるためにも、適度に体を動かすことが大切です。運動によって緊張が緩和され、停滞している水分の巡りも改善します。

現代人に多い特徴として、頭を使う割に体を鍛えることが少ないため下半身の筋力が弱くなりがちで、体の上部に熱が集中してしまう傾向があります。散歩などで下半身に血流を集中させれば、上部に偏った熱は降りてきますし、お腹への血液供給も促進されるため、心も体もリラックスします。

時間があるときには、リラックスを目的とした散歩を心がけ、体を動かすようにしましょう。

3. セルフケアでリラックス

気持ちよいと感じる範囲で、自分でお腹をマッサージするのも緊張をほぐしリラックスするのにおすすめです。

また、布団に入ってから眠るまでの間に、足から吸った息が背中を通って頭に入って抜けていき、息を吐きながら頭から背中を通って足から抜けていくイメージを持つと、気が循環しやすくなり、頭の興奮が取れやすくなります。

この状態で閉じた目の前をぼんやりと眺めながら、全身が暗闇に溶け込んでいくイメージをすると眠りにつきやすくなります。

この体質改善に効果が期待できる漢方薬

この体質の方には、以下のような漢方薬が効果的かもしれません。ただし、これはあくまで一般的な情報であり、個人の症状や体質に合わせた処方が必要です。

  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) – 気の巡りを整え、精神を安定させる作用があり、不安や不眠に効果が期待できます。
  • 酸棗仁湯(さんそうにんとう) – 心の熱を冷まし、不眠症状を改善する効果があります。特に寝つきの悪さに効果的です。
  • 加味帰脾湯(かみきひとう) – 脾(消化器系)の働きを高め、気血を補う作用があり、心の安定と睡眠の質を改善します。

症状が複雑な場合には、単独の漢方薬では効果が現れない場合もあります。ピヨの漢方では、あなたの体質や症状に合わせた漢方相談も行っていますので、ぜひご相談ください。

まとめ:不眠体質の改善に向けて

今回ご紹介した体験談から、不眠には様々な原因があることがわかりました。特に重要なのは:

  1. 心陽と心陰のバランスが崩れると睡眠の質が低下する
  2. 水分の摂り方に注意することで体内の巡りが改善する
  3. 適度な運動で気血の流れを促進することが大切
  4. リラックス法を取り入れて心身の緊張を緩める

不眠でお悩みの方は、ぜひこれらのポイントを日常生活に取り入れてみてください。症状が続く場合は、漢方相談などの専門家のアドバイスも検討されることをおすすめします。

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ピヨ先生
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