
こんにちは
どうなさいましたか?

過敏性腸症候群にお悩みの方から
質問をいただきましたよ
過敏性腸症候群でお悩みの方は少なくありません。特に現代社会では、ストレスや緊張を感じる場面が多く、それがお腹の症状として現れることがよくあります。
日本人の約10%が過敏性腸症候群に悩んでいるといわれています。器質的な異常がないにもかかわらず、お腹の痛みや便通異常が続く状態は、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
今回は、不安感があって眠りが浅く、緊張するとお腹が張る症状に悩む方の体験談をもとに、東洋医学的な視点から原因を探り、自然療法による改善方法をご紹介します。
外見的な特徴とお悩みの症状
- 23歳の男性
- 身長:177cm
- 体重:55kg
- BMI:17.56(やややせ形)
主な症状:
- 不安感や緊張がある
- 眠りが浅い
- 過敏性腸症候群でお腹の張りを感じる
- 静かな場所や電車の中、大学のテストや授業中、寝る前などに症状が悪化する
過敏性腸症候群とはどんな病気なのか?
過敏性腸症候群は、大腸に炎症など明確な器質的異常がないにもかかわらず、お腹の痛みや便秘・下痢などの症状が長期間にわたって繰り返し起こる疾患です。命に関わることはありませんが、日常生活の質を大きく下げてしまう厄介な症状です。
過敏性腸症候群は症状によって主に3つのタイプに分けられます:
- 下痢型:緊張感や不安感が引き金となり、特に授業中や会議中など自由にトイレに行けない状況で突然の腹痛と水のような便が出る
- 便秘型:腸管が強く緊張して蠕動運動(ぜんどううんどう)が正常に行われず、いきんでも排便できない状態になる
- 混合型:下痢と便秘の症状を交互に繰り返す
その他の症状として以下のようなものがよく見られます:
- 不意にガスが出る
- 吐き気やゲップが多い
- 食欲不振
また、お腹以外にも以下のような症状が現れることがあります:
- 不眠
- 不安感
- 抑うつ症状
- 頭痛やめまい
- 肩こり
- 疲れやすさ
- 顔面のほてり
東洋医学から見たお腹の働き
東洋医学的に考えると、腸管の蠕動運動を調整する胃気や脾気と共同作業をする肝気の異常、またその肝気に指令を与えている心気に異常が起きていると考えられます。
東洋医学での胃腸の働きを簡単に説明すると:
- 胃気:食べ物を受け入れ、分解し、下向きに運ぶ働き
- 肝気:胃気と共同し腸管の蠕動運動を調整する働き
- 脾気:必要な材料を吸収して栄養に変え、上向きに運ぶ働き
これら3つの働きが協調することで、食べたものが体の栄養となって全身を巡り、不要なものは体外へ排出されます。
特に肝気は、体内を巡る様々なものを全身へ送り届ける働きを持ち、主に筋肉の働きを微妙に調整しています。この肝気の巡りが悪くなると、さまざまな不調が生じるのです。
事例:不安感とお腹の張りに悩む方の体質分析
体質の分析
この方の場合、以下のような特徴が見られます:
- 気の巡りの偏り:上向きに偏った気の流れがあり、肩こりや食後の腹部膨満感として現れている
- 水分の停滞:体内の水分の動きが悪くなり、胃でチャポチャポする感覚や喉に何かが引っかかる感じ、ふくらはぎの浮腫みなどとして現れている
- 栄養を運ぶ力の不足:必要な栄養(特に血)を体の上部に届ける力が不足しており、不眠や不安感、髪の毛が抜けやすいなどの症状として現れている
- 冷えとのぼせの混在:末端部に気血が行き渡らず、中心部にこもった熱が上昇することで、のぼせや目の充血などの症状が出ている
これらの特徴から、肝気の巡りが順調でないことが主な原因と考えられます。特に気の流れに上向きの偏りがあり、水分の停滞と合わさって様々な症状を引き起こしていると推測されます。
ではこの方に、おススメの自然療法を教えて下さい
1. 水分摂取の工夫
体内には動きが悪くなっている水分が停滞しているため、冷やす性質を持つ水の摂り方に注意が必要です。以下のポイントを意識してみましょう:
- 喉が渇いてから少量ずつ飲む(特に熱中症の心配がない季節)
- 一気に大量に飲まず、少しずつこまめに飲む
- 冷たい飲み物は控えるようにする
2. 適度な運動の継続
手足の末端部へ気を広げるため、ストレッチや週に2〜3回のウォーキングを続けることをおすすめします。運動によって:
- 手足に気が配られるようになる
- 上向きに偏っていた気の流れが正常化する
- 頭に集中していた熱が下がり、脳の働きが穏やかになる
- 不安感や睡眠の問題が改善する
運動不足の状態で頭だけを使う生活を続けると、頭に熱が集中して脳の興奮状態が続き、不安感などの症状につながります。適度な運動で体から改善を図りましょう。
3. 呼吸法とリラクゼーション
眠れない時や不安感が強い時には、次の方法を試してみてください:
- 目を閉じて呼吸に意識を向ける
- 手足の先から悪い気が出ていくイメージで息を吐く
- 良いものが頭のてっぺんから入ってくるイメージで息を吸う
- 心や体がゆるんでいる感覚を覚えておき、その状態を維持するよう意識する
また、無意識に緊張している部位(歯、喉、お腹、腕、眉間など)に気づき、意識的にそれらの部位を緩めることで、中心部にこもった熱が減り、脳の興奮も抑えられます。
4. 就寝前のお腹のマッサージ
眠る際に呼吸法と合わせて、以下を試してみましょう:
- 仰向けになる
- お腹で押すと気持ちが良い部位を見つける
- その部位を軽くマッサージする
- 呼吸が深くなり、副交感神経が優位になるのを感じる
この体質に効果が期待できる漢方薬
このような体質の方には、以下のような漢方薬が効果的な場合があります:
- 加味逍遙散(かみしょうようさん):気の巡りを整え、上向きの偏りを調整する効果が期待できます
- 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう):喉の違和感や胃のむかつきを改善し、水分の停滞を解消する働きがあります
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):精神不安を和らげ、眠りを深くする効果があります
ただし、これらは一般的にこの体質タイプに合うとされる漢方薬であり、個人の症状が複雑な場合には単独では効果が見られないこともあります。正確な処方については、漢方相談をおすすめします。
まとめ
過敏性腸症候群は、東洋医学的に見ると気の巡りの乱れが大きく関わっています。特に肝気の巡りが滞ることで、腸管の動きが不調となり、様々な症状として現れます。
今回ご紹介した方のように、不安感や緊張、睡眠の浅さといった精神面の症状とお腹の張りが合わさった場合は、気の巡りの上向きの偏りと水分の停滞が原因と考えられます。
改善のポイントは:
- 水分摂取の工夫
- 適度な運動の継続
- 呼吸法とリラクゼーション
- 就寝前のお腹のマッサージ
- 体質に合った漢方薬の活用
これらの自然療法を継続的に行うことで、症状の改善が期待できます。ただし、症状が長引く場合は、東洋医学の専門家による個別のアドバイスを受けることをおすすめします。
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