清流に住む美しい魚、マス(鱒)。料理としての美味しさだけでなく、実は古くから薬膳では身体に良い働きを持つ食材として重宝されてきました。現代の栄養学でもその健康効果が認められ、バランスの良い食生活に取り入れたい食材の一つです。
今回は、日本でもおなじみのマスについて、薬膳的な効能から現代科学が証明する栄養価値まで、幅広く掘り下げていきましょう。胃の調子を整えるだけでなく、全身の健康維持にも役立つマスの魅力を一緒に探ってみませんか?
マス(鱒)とは何ですか?
マス(鱒)はサケ科に属する淡水魚で、主に冷たい清流や湖に生息している魚です。日本では、ニジマス、ヤマメ、イワナなどが代表的なマスとして広く知られています。
その美しい姿と繊細な味わいから、釣りの対象としても料理の食材としても人気があります。特に清流に住むマスは、その水質の良さを反映するかのように、クリアな味わいが特徴です。
マス(鱒)の基本情報は?
性味・帰経
- 性味:温、甘味
- 帰経:胃
中医学では、マスは「温性」で「甘味」を持ち、主に「胃」の臓腑に作用する食材として分類されています。これは、マスが体を温め、胃腸の機能を助ける性質を持つことを意味しています。
栄養成分
マスは栄養価の高い食材で、以下のような豊富な栄養素を含んでいます:
- 高品質なタンパク質
- オメガ-3脂肪酸(EPA・DHA)
- ビタミンD
- ビタミンB群(特にB12が豊富)
- ミネラル(カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉛、鉄など)
これらの栄養素はバランスよく配合されており、一度の食事で効率良く栄養を摂取できる優れた食材と言えるでしょう。
マス(鱒)にはどのような薬効がありますか?
マスの主な薬効は「暖胃和中(だんいわちゅう)」と呼ばれる作用です。これは胃を温め、消化機能を整えることを意味します。
主な薬効
- 胃の冷えの改善
- 胃痛の緩和
- 食欲不振の解消
- 生理痛の緩和
特に「胃寒(いかん)」と呼ばれる胃の冷えによる症状に効果的です。胃が冷えることで起こる腹痛や消化不良、さらには生理痛にも効果が期待できます。
中医学では、マスには胃腸の不調を和らげる効果があるとされ、腹部膨満感や胃のむかつきなどの不快な症状の改善に役立つと考えられています。
応用例
胃の冷えによる腹痛や生理痛には、以下の組み合わせが効果的です:
- マス + にんじん + ピーマン + タマネギ + シメジ
これらの食材を組み合わせることで、胃を温め、血行を促進する効果が高まります。シンプルな炒め物や煮込み料理にするとよいでしょう。
マス(鱒)の現代的な健康効果は?
伝統的な薬効だけでなく、現代栄養学の観点からもマスには多くの健康効果があることがわかっています。
心血管系の健康維持
マスに含まれるオメガ-3脂肪酸は、悪玉コレステロールを減らし、動脈硬化の予防に役立ちます。また、血圧の安定にも貢献するため、心臓病のリスク低減につながります。
免疫力の向上
豊富なビタミンDやビタミンB群は免疫システムの正常な働きをサポートし、感染症への抵抗力を高めます。
骨の強化
カルシウムやビタミンDが豊富に含まれているため、骨密度の維持や骨粗しょう症の予防に役立ちます。
視疲労の緩和
マスには不飽和脂肪酸やビタミンAが豊富に含まれています。脂肪酸は眼球の主要な構成要素であり、ビタミンAには視力保護の作用があるため、目の疲れを和らげる効果が期待できます。
マス(鱒)はどのように調理するのがおすすめですか?
マスはその繊細な味わいを生かす様々な調理法があります。体質や季節に合わせて、以下の方法から選んでみましょう。
おすすめの調理法
- 塩焼き:シンプルに塩を振って焼くことで、マス本来の風味を堪能できます。夏場はレモンを添えて爽やかに。
- ムニエル:小麦粉をまぶしてバターで焼き上げるフランス料理の定番です。外はカリッと、中はジューシーに仕上がります。
- 刺身やカルパッチョ:新鮮なマスなら生で楽しむのもおすすめ。繊細な食感と味わいを楽しめます。夏の暑い時期には特に魅力的な食べ方です。
- フライ:衣をつけて揚げることで、サクサクとした食感が加わります。お弁当のおかずにも最適で、子どもから大人まで楽しめます。
- 薬膳スープ:ショウガやネギなどの薬味と組み合わせ、体を温めるスープにするのも効果的です。冬の冷え症対策にぴったりです。
マス(鱒)を食べる際の注意点は?
マスは多くの健康効果が期待できる食材ですが、以下のような点に注意して摂取しましょう。
注意すべきポイント
- 吹き出物ができやすい方は控える:マスは温性の食材のため、もともと体熱が強い方や吹き出物ができやすい方は摂取を控えめにしましょう。
- 一度に食べ過ぎない:どんな良い食材でも食べ過ぎは禁物です。一度に大量に食べると胃腸に負担をかけ、腹部膨満感や腹痛などの不快症状を引き起こす可能性があります。
- 特定の状態の方は注意:以下の状態にある方は、マスの摂取に注意が必要です。
- 痛風の急性発作期
- かゆみを伴う皮膚疾患の方(アレルギー症状を悪化させる可能性があります)
- バランスの良い食事を心がける:マスだけに頼らず、様々な食材をバランスよく摂取することが健康維持の基本です。特に胃腸機能が弱い方は、刺激の強い食べ物や油っこいもの、生冷たいものを控えめにしましょう。
まとめ:マス(鱒)を健康に活かすコツ
マス(鱒)は、薬膳の視点からも現代栄養学の観点からも、優れた健康効果を持つ食材です。特に胃を温め、消化機能を整える効果は、冷えによる不調に悩む方にとって心強い味方となるでしょう。
以下のポイントを押さえて、マスを食生活に取り入れてみてください:
- 体質や季節に合わせた調理法を選ぶ
- 他の野菜や食材とバランスよく組み合わせる
- 自分の体調に合わせて適量を摂取する
- 注意が必要な体質や状態を理解しておく
あなたも今日から、食材としてだけでなく、健康維持のためのパートナーとしてマスを見直してみませんか?体質や好みに合わせた調理法で、マスの持つ恵みを最大限に活かしていきましょう。
参考文献

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