私たちの食卓でおなじみの海苔。おにぎりや巻き寿司の材料として親しまれていますが、実は古来から生薬としても重宝されてきた健康食材なのをご存知でしょうか?
海苔の歴史は古く、8世紀の大宝律令の時代にまで遡り、「紫菜(むらさきのり)」として税に納められていたほどです。今日では、その栄養価の高さから世界中で注目されています。
この記事では、漢方の観点から見た海苔の効能や使い方、注意点までを詳しく解説します。日常的に摂取している海苔の新たな一面を発見し、健康維持に役立ててみませんか?
海苔とは?基本情報を教えてください
海苔は日本の食文化において欠かせない海藻食品ですが、薬膳的な食材として古くから利用されてきました。
性味/帰経
- 性味:寒、甘、鹹
- 帰経:肺
海苔は冷たい性質を持ち、甘みと塩辛さを兼ね備えています。特に肺の経絡に入り、肺の機能を整える働きがあります。
純粋な食材としても優れており、タンパク質が豊富で、カロチンやリボフラビンなどのビタミン類も多く含まれています。また、鉄分やカルシウム、ヨウ素などのミネラルも豊富に含まれているのが特徴です。
海苔にはどんな薬効がありますか?
海苔には主に2つの重要な薬効があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 化痰軟堅(けたんなんけん)
海苔には痰を取り除き、硬くなった組織を柔らかくする作用があります。具体的には以下のような症状に効果的です。
- 瘰癧(るいれき/リンパ節腫)
- 瘻瘤(ろうりゅう/甲状腺腫)
海苔に含まれるヨウ素は特に甲状腺機能に関わり、ヨウ素欠乏による甲状腺腫の改善に役立ちます。
2. 清熱利尿(せいねつりにょう)
体内の熱を取り除き、利尿を促進する作用があります。以下のような症状に効果的です。
- 水腫(むくみ)
- 淋病
- 小便不利(排尿困難)
- 脚気
- 不眠
- 皮膚病
海苔にはマンニトールという成分が含まれており、これが強い利尿作用をもたらします。むくみや排尿困難に悩む方に特におすすめです。
その他の効果
海苔には上記の基本的な薬効以外にも、現代の研究で明らかになった様々な効果があります。
- 高血圧の改善:海苔に含まれる多糖類が血圧降下に寄与します
- 慢性気管支炎や咳の緩和:痰を鎮め、呼吸器系の不調を和らげます
- 抗酸化作用:β-カロテンが豊富で、動脈硬化や生活習慣病の予防に役立ちます
- 高脂血症の予防:不飽和脂肪酸とエイコサペンタエン酸(EPA)が血中脂質を下げ、コレステロール値を改善します
- 造血作用:鉄分が豊富で、ヘモグロビン形成を促進し造血機能を強化します
- 記憶力向上:コリンという物質が含まれており、脳内情報伝達を助け記憶力を高めるといわれています
- 骨粗しょう症の予防:カルシウムが豊富で、骨の健康維持に貢献します
海苔を摂取する際の注意点は何ですか?
海苔は多くの健康効果がありますが、すべての人に適しているわけではありません。特に以下のような方は注意が必要です。
禁忌・使用上の注意
- 脾虚の方:脾(消化器系)が弱っている方は食べ過ぎないようにしましょう。腹部膨満感(お腹が張る感じ)を引き起こす可能性があります。
漢方医学では体質に合わせた食材選びが重要です。自分の体質がわからない場合は、漢方の専門家に相談することをおすすめします。
また、海苔は良質なタンパク質源ですが、ヨウ素を多く含むため、甲状腺機能亢進症の方は摂取量に注意が必要です。心配な方は医師に相談してから摂取するようにしましょう。
日常生活での海苔の活用法を教えてください
海苔は薬効だけでなく、日常の食材としても様々な活用法があります。健康維持のために取り入れやすい方法をいくつか紹介します。
便利な食べ方
- 焼き海苔の活用
- おにぎりや巻き寿司の材料として
- パスタやサラダのトッピングとして
- 海苔クリームパスタや海苔とチーズのサラダなど
- 海苔の佃煮のアレンジ
- そのままご飯のおともに
- マヨネーズやわさびと合わせてディップソースに
- ポテトサラダの具材として
- 薬膳料理への活用
- 海苔スープ:風邪予防や咳の緩和に
- 海苔と豆腐の和え物:利尿作用を高めたいとき
- 海苔と生姜の炊き込みご飯:体を温め、血行を促進したいとき
海苔の薬膳としての効能まとめ
海苔は単なる食材ではなく、優れた薬効を持つ薬膳でもあります。その主な効能をまとめると:
- 化痰軟堅作用:痰を取り除き、硬結を和らげる
- 清熱利尿作用:体内の熱を取り除き、利尿を促進する
- 血中脂質低下作用:コレステロールを下げ、動脈硬化を予防
- 造血作用:鉄分が豊富で貧血予防に役立つ
- 甲状腺機能改善:ヨウ素が豊富で甲状腺腫の予防に効果的
- 骨粗しょう症予防:カルシウムが豊富で骨の健康維持に貢献
海苔は日本の食文化に深く根ざした食材であるとともに、健康維持に役立つ優れた生薬でもあります。性質や体質に合わせて上手に取り入れ、その恵みを最大限に活用しましょう。
ただし、脾虚の方は食べ過ぎないよう注意が必要です。自分の体質に合わせた摂取を心がけてください。
海苔の日は2月6日。この機会に海苔の新たな魅力を発見し、健康的な食生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?
参考文献

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