夏の風物詩であるスイカは、東洋医学では古くから「西瓜(セイカ)」という生薬として重宝されてきました。冷やしたスイカを食べるとひんやりと体が冷え、夏バテ防止に役立つことは経験的に知っている方も多いでしょう。
スイカは冷蔵庫で冷やして均等に切り分け、そのまま食べることが一般的ですが、食べきれずに余ってしまった場合には、ジュースやゼリー、シャーベットなどに加工して楽しむこともできます。実は皮や種にも薬効があり、捨てるところがない優れた食材でもあるのです。
この記事では、スイカの生薬としての効能や薬効について詳しく解説します。冷えた果肉を頬張るだけでなく、その薬効を理解して健康維持に役立てましょう。
スイカとは?生薬としての基本情報
スイカは東洋医学では「西瓜(セイカ)」と呼ばれ、以下のような特徴を持つ生薬です。
性味: 寒、甘
帰経: 心、胃、膀胱
主な効能:
- 清熱解暑(せいねつげしょ)- 体内の熱を冷まし、暑さによる不調を改善する
- 除煩止渇(じょはんしかつ)- イライラを鎮め、喉の渇きを潤す
- 利尿(りにょう)- 尿の排出を促進する
スイカの薬効とは?夏の健康を守る3つの効能
清熱解暑 – 体内の熱を冷まし夏バテを防ぐ
夏は気温が高くなるため、体内の生命力が盛んになり、活動も活発になります。その結果、体内では熱が激しく生じ、気血の動きも活発になります。さらに、夏は湿度も高くなるため、湿邪(しつじゃ)による影響も受け、気血の巡りが鈍くなり、体が重だるく感じるようになります。
スイカの持つ清熱解暑の作用は、体内の熱を冷まし、夏特有の高温多湿による体への悪影響を解消する手助けをしてくれます。熱を冷ますことで、以下のような症状の改善にも効果があります:
- 暑熱による過度な発汗
- 体の熱感
- 目の充血や腫れ、痛み
- 喉の痛み
除煩止渇 – イライラを鎮め、喉の渇きを潤す
真夏の暑さで体内に生じた熱は血流に乗って体表へと運ばれ、末梢血管の拡張や汗の蒸発による気化熱によって放散されます。しかし、外気温が異常に高い場合や湿度が高い環境では、この熱放散のメカニズムがうまく機能せず、体内に熱がこもってしまいます。
こもった熱は脳の働きを乱し、イライラや落ち着きのなさを引き起こします。また、汗として水分が失われるため、体内は脱水状態となり、強い喉の渇きを感じるようになります。
スイカは果肉の90%以上が水分であるため:
- 体に適度な水分を提供し、脳の興奮を鎮める
- イライラや落ち着きのない精神状態を改善する
- 喉の渇きを潤す
- 夏バテによる顔のほてりを和らげる
- 発熱後の水分補給に最適
利尿作用 – むくみを改善し血圧を下げる
体内に熱がこもり、水分が不足すると、尿が熱を持って濃い色に変わり、排尿時に熱感を感じることがあります。スイカにはカリウムが豊富に含まれているため:
- ナトリウムの排出を促進し、尿の排出を改善する
- むくみを改善する
- 熱がこもり水分不足になったことによる尿の異常を改善する
さらに、スイカに多く含まれるシトルリンというアミノ酸は:
- 血管を強くしなやかにして若返らせる
- 血管を広げて血行を改善する
- 血圧を下げる効果が期待できる
スイカの食べ方と注意点
おすすめの食べ方
西瓜の皮の活用法: シトルリンは皮の部分に多く含まれているため、捨てずに以下のように調理して食べるとよいでしょう。
- 漬物として
- 刻んでサラダに
- 炒めてきんぴらのように
西瓜の種の活用法: 種を炒めてから皮をむいて食べると、腸の働きを改善します。
熱中症予防のスイカの食べ方: スイカにレモン汁を搾り、塩をかけて食べると効果的です。
- スイカ:熱を冷まし、潤いを補充
- レモン:汗の出過ぎを防止
- 塩:ミネラルを補給
注意すべき点
スイカの薬効を理解した上で、以下のような方は摂取に注意が必要です:
- 冷え性の方: スイカは体を冷やす作用があるため、エアコンの効いた寒い環境にいる方や、もともと体が冷えやすい体質の方は控えめにしましょう。
- 冷えによる浮腫みがある方: 体が冷えることで余分な水分が停滞し浮腫んでいる場合は、スイカの摂取を控えめにした方が良いでしょう。
- 腎機能が低下している方: スイカはカリウムを含むため、腎機能が低下している方は医師に相談の上、適量を守りましょう。
まとめ
スイカは、東洋医学的には「西瓜(セイカ)」として、夏の暑さによる体調不良を改善する優れた生薬です。体内にこもった熱を冷まし、イライラした気持ちを和らげ、のどの渇きを改善します。また、口内炎や発熱後の水分補給にも適しています。
暑気あたりや熱中症気味で顔がほてったり、頭がスッキリしないときにも効果的です。豊富なカリウムの作用でナトリウムの排出を促進するので、むくみを改善し、血圧を下げる効果も期待できます。
冷やしたスイカを食べるだけでなく、皮や種も無駄なく活用することで、さらに多くの薬効を得ることができます。体質や体調に合わせて適切に取り入れ、夏を健やかに過ごしましょう。
参考文献

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