皆さんは普段の食事やお菓子で楽しむスパイスに、実は素晴らしい薬効があることをご存知でしょうか?特にシナモン(桂皮)は私たちの生活に身近でありながら、東洋医学では古くから重要な生薬として用いられてきました。
世界最古のスパイスとも言われるシナモンは、古代エジプトでは宗教的な儀式にも使用されるほど尊ばれ、「スパイスの王様」とも称されています。今回は、そんな桂皮の持つ薬効や使い方について詳しくご紹介します。
桂皮(ケイヒ)とは何ですか?
桂皮(ケイヒ)とは、クスノキ科の植物であるシナモンの樹皮を乾燥させたものです。日常的にはシナモンとして知られ、アップルパイやクッキーなどのお菓子作りに欠かせないスパイスとして広く使われています。
東洋医学では、部位によって桂枝(ケイシ)や桂皮(ケイヒ)と呼び分けられ、それぞれ異なる効能を持つとされています。特に桂皮は、その温かな性質から冬の季節や冷え症の方に適した生薬として重宝されてきました。
性味・帰経(効果が及ぶ臓腑)
- 性質:温(体を温める)
- 味:辛、甘
- 帰経:心、肺、膀胱、脾、肝、腎
常用量
- 3〜10g(漢方薬としての一日の目安量)
桂皮にはどのような効能がありますか?
桂皮には主に以下のような効能があります。特に「温める」という作用が中心となり、様々な症状の改善に役立ちます。
1. 発汗解表(はっかんげひょう)
体の表面を温めて汗を出し、邪気(病邪)を発散させる作用があります。
- 頭痛
- 発熱
- 悪寒
- 悪風(寒気)
2. 温経通陽(うんけいつうよう)
経絡(体内のエネルギーの通り道)を温め、陽気(温かいエネルギー)の流れを良くします。
- 関節痛
- 生理痛
- 閉経の症状緩和
3. 通陽化気(つうようかき)
陽気の流れを促進し、気の滞りを解消します。
- 胸痛
- 心悸(動悸)の緩和
桂皮に含まれる「桂皮アルデヒド」という成分は、末梢血管を拡張する作用があり、手足の先まで血液を巡らせます。体を温める力は生姜以上とも言われており、内臓の働きを活発にするほか、心を鎮めたり、スタミナをつけたりする効果もあるのです。
4.引火帰原(いんかきげん)
さらに、桂枝には浮き上がってしまった身体上部の気や熱を引き降ろす作用があります。東洋医学における「昇降浮沈」の観点から言えば、「昇って降りる」といった具合に、身体の中を巡るエネルギーや血液を上下にバランス良く動かす効果があります。これにより、体内の巡りが改善され、さまざまな不調のバランスを整えることができるのです。
- 上部に滞った気や熱を下部へ引き降ろす
- 昇降浮沈の流れを促進する
- 血液やエネルギーの巡りを改善する
- 頭部の熱や充血の緩和に役立つ
これにより、体内の巡りが改善され、さまざまな不調のバランスを整えることができるのです。冷えにより上半身にだけ熱がこもりやすい方や、頭痛や目の充血、イライラなどの上熱下寒の症状がある方に効果的です。
桂皮はどのように体に作用しますか?
東洋医学には「不通則痛・通則不痛(ふつうそくつう・つうそくふつう)」という重要な考え方があります。これは「気や血が通っていないから痛みが生じ、通っていれば痛みは生じない」という意味です。
体が冷えると、熱を逃がさないように血管が収縮し、血流が悪くなります。その結果、痛みやだるさが生じることがあります。桂皮は以下のような作用で体を整えます:
- 体や手足の冷えを改善
- 体を温めて熱を作り出す
- 血管を拡張して血流を改善
- 発汗を促して体内の余分な水分や毒素を排出
- 腰や膝の痛み、だるさの緩和
このような働きにより、冷えや痛みの解消に効果を発揮してくれます。普段のお菓子や飲み物に使われる身近な食材ですが、実は体内では様々な働きをしているのです。
桂皮を使用する際の注意点は何ですか?
桂皮は効能が高い反面、全ての人に適しているわけではありません。以下のような点に注意が必要です:
- 身体が熱く乾燥している方は避けるべき
- 気血が活発すぎる方には不向き
- 乾燥してカサカサして落ち着かない状態の方は注意が必要
- 長期間の過剰摂取は避ける
桂皮は体を温めて発散し、気血を上下に動かす作用があります。そのため、冷えて浮腫みがあり、気や血の動きが悪くなっている方には「薬」となりますが、体質によっては「害」になることもあるのです。
自分の体質に合っているかどうか分からない場合は、漢方の専門家に相談してみることをおすすめします。
まとめ:桂皮の魅力と活用法
桂皮(シナモン)は、日常的なスパイスでありながら、東洋医学では重要な生薬として位置づけられています。その主な特徴をまとめると:
- 世界最古のスパイスの一つで「スパイスの王様」とも呼ばれる
- 体を温め、血行を促進する効果がある
- 冷え症や痛み、だるさの改善に効果的
- 体質によっては使用に注意が必要
日常生活では、寒い季節のホットドリンクに少量加えたり、温かいお菓子の風味付けに使用したりすることで、美味しく健康効果も得られます。ただし、継続的に摂取することで体質が変化することもあるため、自分の体調と相談しながら適量を楽しむことが大切です。
桂皮の温かな香りと共に、東洋医学の知恵を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献

ご自分の体質にあった
漢方薬を試してみたい方は
ピヨの漢方の漢方相談を
ご利用ください。
