澄んだ青空と爽やかな風が心地よい秋。この季節になると店頭に並ぶようになる、あの鮮やかなオレンジ色の果実「柿」。
甘くてジューシーな柿はそのままでも美味しいですが、実は東洋医学では古くから優れた薬効を持つ食材として重宝されてきました。サラダや酢の物にアレンジしても美味しく、栄養価も高い柿は、現代人の健康維持にも役立つ優れた食材なのです。
今日は東洋医学の観点から見た柿の効能や上手な活用法について、Q&A形式でご紹介します。知れば知るほど奥深い柿の世界を、一緒に探検してみましょう。
柿の基本情報を教えてください
柿は東洋医学では「寒」「甘」「渋」という性質を持つ果物として分類されます。
【東洋医学的特性】
- 性味: 寒、甘、渋
- 帰経: 心、肺、大腸(特にこれらの臓器に作用する)
柿はそのまま食べるだけでなく、サラダに加えたり、酢の物にしたりと様々なアレンジが可能です。秋の食卓に彩りを添えるだけでなく、健康面でも多くの恵みをもたらしてくれますよ。
また、東洋医学では柿の様々な部位が活用されてきました。例えば、柿のヘタは「柿蒂(してい)」と呼ばれ、気を下げる作用があるため、しゃっくりを止める際に他の生薬と組み合わせて用いられます。
柿にはどのような薬効があるのでしょうか?
柿には主に3つの重要な薬効があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 清熱潤肺(せいねつじゅんはい)
柿には体内の余分な熱を冷まし、肺を潤す効果があります。具体的には以下のような症状に効果的です:
- 空咳(痰の出ない乾いた咳)の緩和
- 喉の渇きや乾燥感の改善
- 肺の熱による諸症状の緩和
柿には熱を冷ましながら体の表層部位や脳などの中枢に潤いを補充する働きがあります。これにより、喉の渇きを癒し、肺を潤すことで痰や咳の解消を助けてくれるのです。
2. 生津止渇(せいしんしかつ)
これは体内の津液(体液)を生成し、渇きを止める効果を指します。
- 口の渇きの緩和
- 口内炎の改善
- 胃の熱による諸症状の改善
歴史的にも、中国の1〜3世紀頃の古い書物には、柿が耳鼻の気の流れを改善し、下痢を止めることで疲労回復を助けると記されています。
3. 解酒熱毒(かいしゅねつどく)
柿は二日酔いの改善に特に効果的です。
- アルコールによる頭痛の緩和
- 胸やけの改善
- 吐き気の軽減
体内に入ったアルコールは肝臓で分解され、アセトアルデヒドという物質に変わります。このアセトアルデヒドが血液中に残ると、頭痛や胸やけなどの症状を引き起こします。
東洋医学的に見ると、これは体内に動きの悪くなった水分と熱がこもり、「湿熱(しつねつ)」という状態になっていると考えられます。
柿に含まれるタンニンはアルコールの吸収を妨げ、アセトアルデヒドを体外に排出する力があります。さらに、柿に含まれるカリウムには余分な水分を排出する作用も。
つまり柿は、熱を冷まし、適度に潤いを補充し、停滞している余分な水分を排出し、アルコールの吸収を抑えてアセトアルデヒドを排出することで、二日酔いを改善するのです。
柿を食べる際の注意点はありますか?
柿の良い効果ばかりに目を向けがちですが、いくつか注意点もあります。
【食べる際の注意点】
- 柿は体を強く冷やす性質があるため、寒い環境にいる方や冷え性の方は食べ過ぎに注意
- 冷えが原因で水分が滞って浮腫みがある方は控えめに
- 空腹時の食べ過ぎは、お腹の働きを低下させ、腹痛や下痢を引き起こすことも
- タンニンの摂り過ぎは便秘につながる可能性がある
特に冬場や冷房の効いた部屋で長時間過ごしている方は、柿の「寒」の性質が体をさらに冷やす可能性があるので、適量を心がけましょう。
一日に食べる量の目安は1〜2個程度。体調や体質に合わせて調整するとよいでしょう。
柿にはその他どんな健康効果がありますか?
柿には東洋医学的な効能以外にも、現代科学で解明されている健康効果があります。
- 熟した柿に含まれる酵素はアルコールを分解する作用があり、二日酔いに効果的
- 色素成分のベータクリプトキサンチンには発がん抑制作用がある
- ビタミンCが豊富に含まれ、免疫力を向上させる
- 柿のヘタや渋は漢方の生薬として利用される
また、東洋医学では柿を火であぶり乾燥させたものを「烏柿(うし)」と呼び、火傷や切り傷、犬に噛まれた時の外用薬として用いられてきました。
まとめ:柿の効能と上手な取り入れ方
秋の味覚「柿」は、単においしいだけでなく、東洋医学的に見ても価値の高い果物です。
柿の主な効能まとめ:
- 喉の渇きを癒し、空咳を緩和する
- 二日酔いの症状を改善する
- 体内の余分な熱を冷ます
- 利尿作用がある
ただし、体を冷やす性質が強いため、食べ過ぎには注意が必要です。特に冷え性の方や空腹時は控えめにしましょう。
柿を日々の食生活に取り入れる際は、その日の体調や気候に合わせて量を調整すると良いでしょう。朝食のフルーツとして、デザートとして、あるいはサラダのトッピングとして様々な形で楽しめます。
東洋医学の知恵を活かして、柿の恵みを上手に取り入れ、健やかな秋を過ごしてください。
参考文献

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