季節が冬から春へと移り変わる頃、山野や道端のいたるところで目にするヨモギ。その独特の香りと共に感じる強い生命力は、古来より人々を魅了してきました。
3月頃の若芽を使って作られる草餅は、日本の春の風物詩として親しまれていますが、実はヨモギには数多くの薬効があることをご存知でしょうか?
東洋医学では「艾葉(がいよう)」という生薬名で知られ、古くから様々な症状の改善に活用されてきました。今回は、このありふれた植物が秘める驚くべき健康効果について、Q&A形式でわかりやすく解説していきます。
ヨモギってどんな生薬なの?基本情報を教えて
ヨモギは東洋医学において重要な生薬「艾葉(がいよう)」として位置づけられています。その基本的な特性は以下の通りです:
【性味/帰経】
- 性質:温性(体を温める)
- 味:辛、苦、小毒
- 関連する臓器:肝、脾、腎
ヨモギの独特の香りは気血の巡りを改善し、苦味は胃腸の働きを助けます。中国では魔除けの生薬としても重宝され、「病気をなくす策」として古くから用いられてきました。
ヨモギにはどんな効能があるの?
ヨモギには様々な健康効果があります。主な働きは以下の3つに分類できます:
- 温経止血(うんけいしけつ):体を温めて出血を止める
- 虚寒性出血(冷えによる出血)の改善
- 生理時の過多出血の軽減
- 血便や痔の症状緩和
- 散寒調経(さんかんちょうけい):冷えを追い払い、月経を調整する
- 生理不順の改善
- 生理痛の緩和
- 冷え性の改善
- 安胎(あんたい):妊娠を安定させる
- 妊娠中の胎動不安を鎮める
さらに詳しい効能としては:
- 体を温めて血液循環を促進
- ホルモン分泌を調整して内臓機能を高める
- 女性特有の不快な症状(冷え症、肩こり、腰痛、月経痛など)の改善
- 殺菌作用による気管支炎の改善や風邪の予防
- 脂質代謝の促進による肥満や脂質異常症の予防
- 糖化を防ぎ、すでに糖化したものを分解する効果
ヨモギはどのように体に働きかけるの?
① 体の芯部を温めて余分な水分を排除します
ヨモギには体の芯や経絡を温め、停滞している余分な水分を追い払う効果があります。これにより、冷えと水の停滞が原因で起こるさまざまな不調を解消できるのです。
例えば、冷えによって気血の巡りが阻害されると、その度合いによって異なる症状が現れます:(それぞれ場合によってはです)
- 強い阻害 → 痛み
- やや軽い阻害 → 痒み
- 血液の停滞 → 不正出血
皮膚の下に水分が停滞して痒みが出ている方には、ヨモギは非常に効果的です。しかし、熱や乾燥が原因の痒みには逆効果となる場合がありますので注意が必要です。
② 胃腸の機能を高め、糖化を防ぐ
ヨモギは胃液の分泌を促進し、食欲を増進させる効果があります。含有成分の葉緑素(クロロフィル)には以下の働きがあります:
- 胃腸の健康維持
- 殺菌作用
- コレステロール低下作用
また、体内で起こる糖化(糖とタンパク質・脂質が結合して変性する現象)を防ぎ、すでに糖化したものを分解する効果も報告されています。こうした効果は飲用だけでなく、抽出液を肌に吹きかけるだけでも得られると言われています。
ヨモギを使用する際の注意点は?
ヨモギは多くの健康効果がある一方で、正しく使用しないと副作用が生じる可能性があります:
- 適量を守る:生薬として使用する場合、1日の適量は3〜6g程度です。少量の使用でも水分の摂り過ぎに注意が必要です。
- 体質による注意:体が熱っぽく乾燥している方がヨモギを単独で継続使用すると、熱や乾燥が悪化する恐れがあります。
- 副作用に注意:摂り過ぎると吐き気や嘔吐を引き起こす場合があります。
- 禁忌:東洋医学的には、体を温めて乾かす作用があるため、熱があって乾燥し、出血がある方は症状が悪化する可能性があります。
まとめ:身近な薬草ヨモギの活用法
ヨモギは私たちの身近に自生する薬草でありながら、東洋医学の知恵に基づくと様々な健康効果が期待できます。特に冷え性や女性特有の不調に悩む方にとって、有効な自然療法の一つとなるでしょう。
その主な効果をまとめると:
- 体を温め、血行を促進する
- 冷えによる痛みや不快感を緩和する
- 女性ホルモンのバランスを整える
- 胃腸機能を高める
- 抗酸化作用で老化を防ぐ
ただし、体質や症状によっては逆効果となる場合もあるため、自己判断での多量摂取は避け、必要に応じて漢方の専門家に相談することをおすすめします。
身近な自然の恵みであるヨモギを、正しい知識と方法で取り入れて、健康的な毎日を過ごしましょう。
参考文献

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