古来より東洋医学で重宝されてきた「はと麦」。スーパーの健康食品コーナーや漢方薬局でよく見かけるこの食材が、実は私たちの体に嬉しい効果をもたらす素晴らしい薬膳素材だということをご存知でしょうか?
子供の頃、「数珠玉(じゅずだま)」と呼ばれる植物で作った手作りのアクセサリーで遊んだ経験がある方もいらっしゃるかもしれません。その数珠玉を食用に改良したものが、今日私たちが知る「はと麦」なのです。
東洋医学では「薏苡仁(ヨクイニン)」と呼ばれ、むくみの解消や美肌効果、さらには関節痛の緩和まで、多岐にわたる効能を持つ生薬として重宝されてきました。
今回は、この身近な薬膳素材「はと麦(薏苡仁)」の魅力を、東洋医学の視点からQ&A形式でわかりやすく解説していきます。日常生活に取り入れやすいアイデアもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください!
はと麦(薏苡仁)とは何ですか?
はと麦は、イネ科の一年生植物で、漢方では「薏苡仁(ヨクイニン)」と呼ばれる生薬です。皮をむいた実の部分を薬用として使います。日本では古くから親しまれており、食用としても漢方薬としても広く利用されてきました。
はと麦の基本情報
- 性味/帰経
- 性質:涼(微寒)
- 味:甘、淡
- 帰経:脾、胃、肺
- 常用量:5〜10g(治療目的では15〜30g、場合によっては60〜90gまで)
- 主な成分:脂肪油、coixol、アミノ酸、ビタミンB1など
はと麦は、餅や団子を作るなど小麦の代わりに使われることもある穀物です。東洋医学では「清利湿熱」「祛湿除痺」という独特の働きを持つとされ、体内の余分な水分や熱を排出する効果があると考えられています。
はと麦(薏苡仁)にはどのような薬効があるのですか?
はと麦の効能は多岐にわたりますが、東洋医学的な観点から主に5つの作用に分けることができます。それぞれの効能について詳しく見ていきましょう。
1. 利水消腫(りすいしょうしゅ)効果
体内の余分な水分を排出し、むくみを解消する働きがあります。
- むくみの解消
- 水分代謝の促進
- 尿量の増加
- 脚気(かっけ)による浮腫みの改善
- 慢性腎炎による軽度の浮腫みにも効果的
2. 健脾滲湿(けんぴしんしつ)効果
脾(消化器系)の機能を高め、余分な湿気を取り除く働きがあります。ただし、本格的に脾虚になっているようなお腹の弱い方の場合には、かえって負担になることもあります。
- 食欲増進
- 消化促進
- 下痢の改善
- 胃腸機能の調整
- 脾虚(消化機能の低下)による症状の緩和
3. 清熱排膿(せいねつはいのう)効果
体内の熱を冷まし、膿を排出する働きがあります。
- 皮膚の化膿症の改善
- 肺膿瘍(はいのうよう)の治療補助
- 腸膿瘍の治療補助
- 黄痰・臭痰の改善
4. 祛湿除痺(きょしつじょひ)効果
余分な湿を取り除き、痛みやこわばりを緩和する働きがあります。
- 関節痛の緩和
- 筋肉のこわばりの改善
- 風湿による痛みの緩和
- 四肢の痙攣の緩和
- 肩こりや腰痛の改善
5. 美肌・美容効果
はと麦は古くから美肌効果があるとされ、現代でも美容目的で利用されています。
- 肌荒れの改善
- シミ・ソバカスの改善
- イボの治療(詳しくは応用例をご参照ください)
- 潤いのある肌づくりのサポート
はと麦(薏苡仁)の実践的な応用例を教えてください
はと麦は日常的に活用できる優れた薬膳素材です。具体的な応用例をいくつかご紹介します。
イボの治療
- 薏苡仁60gを米と混ぜて粥を作り、毎日食べる
- 1ヶ月ほど続けることで効果が期待できる
- 特に扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)と呼ばれるタイプのイボに効果的
むくみの改善
- 薏苡仁15〜30gを煎じて飲む
- 脚のむくみや全身のむくみに効果的
- 腎炎による軽度の浮腫には、魚腥草などと組み合わせるとより効果的
関節痛・筋肉痛の緩和
- 薏苡仁に防已(ぼうい)、滑石(かっせき)、黄柏(おうばく)などを組み合わせる
- 湿熱による関節痛やこわばりに効果的
- 麻黄(まおう)や蒼朮(そうじゅつ)と組み合わせると、湿による痺れや痛みに効果的
美肌・美容目的
- 薏苡仁茶として毎日飲む
- はと麦を煎じた湯を使って洗顔する
- 薏苡仁を配合した化粧水や美容液も市販されている
胃腸の調子を整える
- 炒ったはと麦を使用すると健脾効果が高まる
- 参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)などの漢方処方にも配合されている
- 脾虚(消化機能低下)による下痢にも効果的
はと麦(薏苡仁)を使用する際の注意点はありますか?
はと麦は比較的安全な食材ですが、使用する際にはいくつかの注意点があります。
使用上の注意点
- 妊娠中は注意が必要
- 妊娠中の方は、医師や専門家に相談してから使用しましょう
- 大量摂取は避けるのが賢明です
- 寒による風湿痛には不向き
- 体が冷えて起こる痛みには効果が薄く、場合によっては症状を悪化させることも
- 冷えを感じる方は、生姜などの温性の食材と組み合わせるとよいでしょう
- 効果を実感するには大量・長期使用が必要
- 効力が緩やかなので、十分な量を継続して使用することが重要です
- 治療目的では15〜30g、場合によっては60〜90gまで使用されることもあります
- 使用方法による効果の違い
- 生のまま使用すると清利湿熱(余分な水分と熱を取り除く)効果が高まります
- 炒って使用すると健脾止瀉(消化促進・下痢止め)効果が高まります
- 脾虚(消化機能低下)が重度の場合は注意
- はと麦には陰液を供給する作用があるため、重度の脾虚の方には不向きな場合があります
- このような場合は、白朮(びゃくじゅつ)や茯苓(ぶくりょう)などの方が適している場合があります
参考文献

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