皆さんは「麦芽(ばくが)」という生薬をご存知でしょうか?
ビールやウイスキーの原料として知られる麦芽ですが、実は東洋医学では古くから重要な生薬として用いられてきました。大麦の種子を発芽させることで生まれる麦芽には、消化を助ける酵素やビタミンが豊富に含まれています。
今回は、この身近でありながら奥深い生薬「麦芽」について、その基本情報から効能、使用上の注意点まで詳しくご紹介します。
食べ過ぎによる胃もたれや消化不良でお悩みの方、授乳を終える際のトラブルに対処したい方など、麦芽の知恵を活用して健康生活に役立ててみませんか?
麦芽(ばくが)とは?基本情報を知ろう
麦芽は大麦の種子を発芽させたもので、漢方薬や中医学では「ばくが」と呼ばれる重要な生薬です。ビールやウイスキーの製造原料としても知られていますが、その薬効は古くから重宝されてきました。
Q: 麦芽の性質や主成分は何ですか?
麦芽の性質と帰経(作用する主な臓器)は以下の通りです。
- 性味: 甘、平(一部の文献では鹹、温とする場合もあります)
- 帰経: 脾経、胃経、肝経
麦芽に含まれるアミラーゼは、デンプンの消化を助ける酵素として知られています。ビタミンB群やCも含まれているため、栄養価も高い生薬と言えるでしょう。
麦芽の薬効とは?どんな症状に効果的?
Q: 麦芽にはどのような薬効がありますか?
麦芽には主に3つの重要な薬効があります。
- 消食健胃(しょうしょくけんい): 食べ物の消化を促進し、胃の働きを整える
- 疏肝理気(そかんりき): 肝の気の流れを改善する
- 断乳(だんにゅう): 授乳を終える際の乳汁の停滞を改善する
これらの作用により、次のような症状に効果を発揮します。
- 穀類の食べ過ぎによる消化不良
- げっぷや腹部膨満感
- 下痢
- 脇腹の張りや痛み
- 乳房の痛み
- 授乳を中止する際の乳汁うっ滞
Q: 消化不良にはどのように使用するのですか?
食べ過ぎによる消化不良には、次のような組み合わせで用いることが効果的です。
- 炒麦芽30g + 山楂子(さんざし)15g + 神曲(しんきく)15gを水から煎じて服用
特に米や麺類、芋類などのデンプン質の食べ過ぎによる消化不良に適しています。麦芽は消化を促進するだけでなく、食欲も増進させる効果があります。
断乳や肝の気の流れに対する麦芽の効果
Q: 授乳を中止する際に麦芽はどう役立ちますか?
麦芽には「回乳(かいにゅう)」と呼ばれる作用があり、授乳を中止する際に生じる乳汁のうっ滞を軽減し、乳房の腫れや痛みを和らげます。
効果的な使用法は次の通りです。
- 生麦芽120gを弱火で黄色になるまで炒めて煎じる
- もしくは炒って粉末にした麦芽60gを15gずつ湯で服用する
この場合、通常量よりも多めに使用することがポイントです。麦芽の「温通」の効能を利用することで、乳汁の流れを改善します。
Q: 肝の気の流れに対してはどのような効果がありますか?
麦芽には「疏肝(そかん)」という作用があり、肝の気の流れを改善します。肝気うっ滞による以下のような症状に効果があります。
- 胸や脇の張りや痛み
- げっぷ
- 胸脇部のむかつき
麦芽使用上の注意点と禁忌
Q: 麦芽を使用する際の注意点はありますか?
麦芽を使用する際には、以下の点に注意が必要です。
- 脾胃虚弱者は慎重に: 消化器系が弱い方は、使用量や期間に注意しましょう
- 妊娠中・授乳中は避ける: 特に授乳中は乳汁分泌を抑制する可能性があります
- 生麦芽と炒麦芽の使い分け:
- 生麦芽:食欲不振に適しており、特に小児に適しています
- 炒麦芽:性質が温和で、食物の吸収が悪く水様便や軟便の方に適しています。また断乳にも炒麦芽を用います
古くから妊婦への使用を避けるべきとされていましたが、実際には症状に合っていれば使用可能です。ただし、長期間の服用は避けるべきでしょう。
Q: 生麦芽と炒麦芽ではどちらが効果的ですか?
デンプンの消化力は生麦芽の方が炒麦芽より強いですが、軽く炒った程度(微炒)であれば大きな影響はありません。用途によって使い分けると良いでしょう。
- 舒肝(肝の気の改善)・回乳(断乳): 生麦芽を使用
- 消食(消化促進): 炒麦芽を使用
まとめ:麦芽の特徴と活用法
麦芽は甘くて平和な性質を持ち、主に以下の3つの効能を発揮します。
- 消化促進と胃を健やかに保つ作用
- 食べ過ぎによる消化不良、特に米・麺・芋などのデンプン質の食べ過ぎに効果的
- 健胃作用と消化酵素の働きで胃腸の調子を整える
- 肝の気の流れを改善する作用
- 胸脇部の張りや痛みを和らげる
- げっぷや胸のむかつきを改善する
- 断乳を助ける作用
- 授乳を中止する際の乳汁うっ滞による乳房の腫れや痛みを緩和する
- この場合は通常より多めの量(30〜120g)を使用すると効果的
麦芽は身近な生薬でありながら、幅広い効能を持っています。特に食べ過ぎによる消化不良や、授乳を終える際のトラブルに悩む方は、ぜひ漢方の専門家に相談して麦芽の力を活用してみてはいかがでしょうか。
ただし、使用に際しては体質や症状に合わせた適切な用量と使用期間を守ることが大切です。特に妊娠中や授乳中の方は注意が必要ですので、必ず専門家のアドバイスを受けましょう。
参考文献

ご自分の体質にあった
漢方薬を試してみたい方は
ピヨの漢方の漢方相談を
ご利用ください。
